絶望、絶望、また絶望…「戦後日本×ゴジラ」を描く意図とは? 最新作『ゴジラ-0.0』で山崎貴監督が突きつけるもの
山崎貴監督の最新作『ゴジラ-0.0』が、まもなく劇場公開される。今作の舞台は、戦後間もない日本にゴジラが襲来した前作から2年後の世界――。そう、わずか2年である。まだまだ戦争の傷跡癒えぬ中で、再び日本に脅威が迫るというのだ。あまりにも慈悲がなさすぎるようにも思える。山崎監督は、なぜ「戦後日本」という舞台を選んだのだろうか。
そもそも「ゴジラ」とひと口に言っても、作品によってアプローチは大きく異なる。例えば庵野秀明監督が手がけた2016年公開の『シン・ゴジラ』は、現代日本に未知の巨大生物が上陸したらどうなるのか、という視点から社会の反応を描いた作品だった。政府や自衛隊の対応、縦割り行政や政治判断など、現代日本の組織が未曽有の危機にどう向き合うかが大きな見どころとなっている。
一方、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』などのハリウッド版『ゴジラ』は、圧倒的なスケールで描かれる大怪獣バトルが魅力的だった。日本のシリーズでも怪獣同士の戦いを前面に押し出した作品は多いが、ハリウッド版は大規模な映像表現を駆使し、怪獣たちの激突をよりダイナミックに描いている。
そうした作品群のなかで、山崎監督が舞台に選んだのは"戦後の日本"。戦争の傷が癒えないうちにゴジラが来襲し、人類はさらなる絶望へと突き落とされる。それでも未来を切り開こうとする人々の姿を描き、絶望的な状況から生まれる人間ドラマを作品の大きな軸に据えていた。
『ALWAYS 三丁目の夕日』や『永遠の0』など、これまでも昭和の日本や戦争に関わる時代をたびたび描いてきた山崎監督にとって、「戦後」は自身の持ち味を生かせる舞台でもあったのだろう。何もかもが失われた状態から、人々はいかにしてゴジラに立ち向かうのか。『シン・ゴジラ』ともハリウッド版『ゴジラ』とも異なるアプローチによって、監督ならではの人間ドラマを描き出したといえる。
では、まもなく公開される『ゴジラ-0.0』はどうだろうか。舞台は、前作から2年後の日本。あの惨劇からわずか2年で、ゴジラが再び姿を現す。しかも今回はゴジラだけにとどまらず、「宇宙最強」と名高いキングギドラまで登場する模様。戦争が終わり、ゴジラの脅威も乗り越え、ようやく復興に進んでいく日本に、二大怪獣のお出ましである。過酷にも程があるだろう。
それに、絶望的な状況に追い込まれながらも諦めず、未来を切り開こうとする人々のドラマは、すでに前作で描かれている。怪獣の脅威に再び人々が立ち向かうといった、『ゴジラ-1.0』と同じ展開を繰り返すだけとは思えない。続編で山崎監督が描きたいのは、果たして何なのだろうか。『ゴジラ-1.0』がアカデミー視覚効果賞を受賞した際、山崎監督は同じ年のアカデミー賞で注目を集めた映画『オッペンハイマー』について言及していた。本作は、「原爆の父」として知られる天才科学者J・ロバート・オッペンハイマーの半生を実話に基づいて描いた作品。クリストファー・ノーラン監督がメガホンを取り、第96回アカデミー賞では作品賞を含む7部門を受賞した。
一方、『ゴジラ-1.0』のゴジラもまた、ビキニ環礁での核実験による被爆を経て変貌した生命体。奇しくも同じ年のアカデミー賞で、核兵器に深く関わる2作品が評価されたのである。
こうした繋がりを踏まえ、山崎監督は「『オッペンハイマー』に対するアンサーの映画は、個人的な思いとしてはいつか、日本人として作らなくてはいけない」と語っていた。それから2年半の時を経て、まもなく公開される『ゴジラ-0.0』には、「人類の罪と罰。もう、無(ゼロ)には戻れない」というキャッチコピーが添えられている。
ゴジラは、人間の身勝手さが生み出した災厄の象徴でもある。そこに「人類の罪と罰」という言葉が重なれば、やはり"核兵器"を連想せずにはいられない。
実際、2026年4月に公開されたファーストティザーには、「もし奴らが失敗したら今度こそアレを使うかもしれない」「3発目の投下は中止」など意味深なセリフが登場するほか、ゴジラがニューヨークに上陸する可能性をほのめかすような描写も見られる。核兵器をめぐる歴史と無関係ではなさそうな要素が散りばめられているのだ。
もちろん、これだけで『ゴジラ-0.0』が『オッペンハイマー』へのアンサーだと断言することはできない。それでも、核兵器をめぐる歴史や、そこに対する山崎監督自身の問題意識が、作品に何らかの形で反映されている可能性は十分に考えられる。そうした視点に立つと、再び戦後間もない日本を舞台に選んだことにも、前作の物語を引き継ぐ以上の意味が見えてくるのではないだろうか。
山崎監督が戦後日本を舞台に選んだ理由、そして「人類の罪と罰」という言葉に込められた意味。『ゴジラ-0.0』がどのような答えを見せてくれるのか、劇場で確かめたい。
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