今田美桜主演『クロスロード』で光る55歳・赤間麻里子 8クール連続出演で覆した"テレビ界の常識"
今田美桜が主演するテレビ朝日系ドラマ『クロスロード ~救命救急の約束~』で、若い俳優たちに交じって強い存在感を放っている女優がいる。現在55歳の赤間麻里子だ。
赤間が演じる遠山美江は、横浜湾岸病院・救命救急センターの看護師長。経験豊富でパワフルな「肝っ玉母さん」的存在として、今田演じる若き救命医・春木遥らを精神面から支える役どころだ。前に出すぎず、それでいて画面に映れば場の空気を引き締める存在感がある。
近年の赤間は、女優として引っ張りだこだ。だが、その歩みは決して順調ではなかった。19歳で仲代達矢が主宰する「無名塾」に入塾し、舞台を中心に活動。その後、俳優の高川裕也と結婚し、3人の子どもを出産した。仕事がなかったという30代は、ほぼ育児に専念した生活を続けた。
転機が訪れたのは39歳のときだった。無名塾に入った初日に書いたノートを偶然見つけ、そこに記されていた「40歳になっても何者にもなっていなかったら(役者を)辞めること」という、若き日の自分の言葉を目にしたのだ。
さらに、元プロ野球選手・下柳剛の「辞める理由じゃなく、続ける理由を探していた」という言葉にも背中を押された。役者を辞める理由ばかりを探していた自分に気づき、女優を続ける覚悟を固めたという。
家族の支えを受けて役者として再出発したが、そのさなかにステージ3の乳がんが判明した。すぐに手術を勧められたものの、赤間は医師に3カ月の猶予を求め、代替療法を含むさまざまな情報を徹底的に調べた。そのうえで標準治療を選び、手術では部分摘出を選択した。
がん細胞を取り切れなかった可能性があったため、抗がん剤治療と放射線治療も受けた。抗がん剤の副作用で全身の痛みや吐き気、脱毛に苦しみながら、ウィッグを着け、撮影現場には嘔吐に備えてビニール袋を持参した。それでも仕事を休まなかったのは、「演じたい」という気持ちが強かったからだ。
つらい闘病生活を乗り越え、遅咲きのブレイクを果たしたのが2023年。映像制作ユニット「こねこフィルム」がSNSで公開したショートドラマ『年齢確認』シリーズに出演し、一躍脚光を浴びた。同作では、当時53歳だった赤間が、コンビニで酒を買う際に年齢確認を求められ、「馬鹿にしてんの? いくつに見えんだよ!」と店員に迫る女性を怪演。シリーズはSNSで累計2億回を超える再生数を記録した。その後は、NHK連続テレビ小説『虎に翼』、カンテレ・フジテレビ系『アンメット ある脳外科医の日記』など話題作への出演が続いた。さらに、TBS系『海に眠るダイヤモンド』に出演した2024年10月期以降、現在出演中の『クロスロード』まで、ゲスト出演を含めて8クール連続で連ドラ出演を果たしている。
なぜ、50代になって仕事が途切れなくなったのか。
最大の理由は、赤間が「年齢を感じさせない女優」ではなく、「年齢を感じさせるからこそ求められる女優」であることだろう。
無名塾や舞台で培った実力に加え、実年齢に合ったナチュラルな演技をするため、庶民的な母親、バリバリのキャリアウーマン、押しの強い女性、得体の知れない人物など、どんな役柄にも自然となじむ。さらに、売れない時期、子育て、闘病などの経験が人間的な深みとなり、演じる人物が歩んできた人生まで想像させる。制作側にとっては、登場した瞬間に人物像を成立させてくれる頼もしい存在だ。
ショートドラマで見せた強烈なコメディー演技もあれば、『クロスロード』のように若い主人公を支える役柄もある。社会派ドラマやホームドラマもこなし、作品ごとにまったく違う顔を見せることができる。だからこそ、一つの作品で消費されることなく、起用が続いているのだろう。
赤間のブレイクは、長らく「若さ偏重」だったテレビ界への痛快な反証でもある。
これまで女優は、実年齢より若く見えることが称賛されてきた。40代以降のベテラン女優に向けられる言葉は、「美魔女」「奇跡の〇〇歳」といった外見中心のものになりがちだ。
だが、赤間が評価されたきっかけは、若く見せたことではない。『年齢確認』シリーズでは、若く見られたい女性の願望を誇張して笑いに変えた。テレビドラマでは、年齢を重ねたゆえの顔立ちや声、たたずまい、感情表現を演技の説得力にしている。
赤間の快進撃は「諦めなければ夢はかなう」というだけの話ではない。「女優は若さがなければ価値がない」という一部の古い常識を、実力によってひっくり返したのだ。
遅れてきたブレイクではある。しかし、赤間だからこそ演じられる役が増えている現状を見ると、売れるのが遅かったのではない。テレビ業界が、彼女の価値に気づくのが遅かったのではないだろうか。
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