門脇麦×波岡一喜「火花」舞台裏の“幸せすぎる空間”―「大好きだった」「全てのセンサーを張り巡らせた」 モデルプレスインタビュー(C)モデルプレス

「火花」門脇麦×波岡一喜、舞台裏の“幸せすぎる空間”―「大好きだった」「全てのセンサーを張り巡らせた」 モデルプレスインタビュー

2016.06.05 07:00

お笑いコンビ・ピース 又吉直樹の第153回芥川賞受賞作を原作にする「Netflix」オリジナルドラマ『火花』が、6月3日より世界190カ国で同時配信がスタートした。売れない先輩後輩の芸人2人が、さまざまな人との関わり合いの中で「笑いとは何か、生きるとは何か」を模索する姿を描く本作は、映像化決定の発表時より大きな話題を呼んできた。今回モデルプレスでは、本作に出演する女優の門脇麦、俳優の波岡一喜にインタビューを実施。その舞台裏と本作に込めた思い、そして夢について語ってもらった。

林遣都演じる、売れないお笑いコンビ「スパークス」のボケで常に憂鬱な性格の主人公・徳永。彼が師と慕うお笑いコンビ「あほんだら」でボケを担当する天才肌芸人・神谷役を波岡が、そして神谷と同棲し、作品の中で“絶対的な美”として描かれている女性・真樹役を門脇が演じる。

「火花」波岡一喜、林遣都
「火花」波岡一喜、林遣都
インタビューは「島ぜんぶでおーきな祭 第8回沖縄国際映画祭」にて実施。同映画祭では、配信に先駆け第3話までを先行上映。上映直後の舞台挨拶で、2人は会場から湧き上がる大きな拍手を浴びた。

「火花」撮影現場の裏側は?

門脇麦、波岡一喜(C)モデルプレス
門脇麦、波岡一喜(C)モデルプレス
門脇麦、波岡一喜(C)モデルプレス
門脇麦、波岡一喜(C)モデルプレス
― 撮影は昨年11月から約4ヶ月続いたそうですが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

門脇:私は3話からの登場なので、みなさんが先に1ヶ月くらい撮影されている現場にポンと入った形だったんですが、絶対おもしろいものができるなって感じました。何でしょうね、みんなの熱量なのか、集中力なのかがすごくて。

波岡:良かったよね、現場の空気が!

門脇:最高でしたね。幸せすぎました。

波岡:「今日は気が重いぞ」って思う大変な現場ってたまにあるんですよね(笑)。でも今回はそんなの1日もなかった。むしろ撮影でみんなに会えるのが待ち遠しいくらいでした。

門脇:私もそうでした。

波岡:みんなすごく仲がいいんですけど、ただ仲が良いだけじゃないところがまたいいんですよ。適度な緊張感を持って、頭も使って、現場ではみんなが役本人でいようとしている感じでした。

― みなさんの士気が高まっていたのは、『火花』という注目作であるということも一つの理由だったのでしょうか?

波岡:もちろん『火花』をやるプレッシャーはありました。でも現場の空気や、作品の取り組み方というのは、みんなが注目している『火花』だったからどうというものではなかったと思います。この一つの作品を少しでも良くしようという、一人一人の熱量が高かった。それが偶然にも『火花』という作品に集まって来たということだと思います。もちろんそこに『火花』があったからなんですが。

門脇:そうですね。『火花』だからというわけではないですが、とにかくみんなの士気が高いのはすごく感じました。すごく幸せな空間でした。

天才漫才師、絶世の美女…役作りは?

村田秀亮(とろサーモン)、波岡一喜
村田秀亮(とろサーモン)、波岡一喜
― 波岡さんは師と煽られるお笑い芸人役ということで、漫才にも挑戦されました。どのように役作りをされましたか?

波岡:芸人さんになるために一番大事なことって漫才じゃないんですよ、多分。それは芸人さんの仕事の一部であって全てではないということを、今回僕はとても痛感しました。芸人さんになるっていうのは、芸人と一緒にいる時の会話の空気感、何かに飢えている感じ、自分の信念の強さが大事なんだろうと思います。もちろん漫才も練習しましたけど、そうじゃないところも大事にしたいと思ってやっていました。

波岡一喜、林遣都
波岡一喜、林遣都
波岡:初めて、役を「演じる」ということではなくて、役に「なる」ということ、神谷に「なる」ということを体験できた気がします。普段役で人を殺したり殴ったりすることが多いので(笑)、やっぱり「演じる」ことになるんですが、幸いにも今回は、日常から神谷でいても害はなかったので、そこも恵まれていました。日常の(林)遣都との会話も、神谷になるところから始めようと思っていました。

― 門脇さんは絶対的な美の象徴として描かれる役どころでしたが、どのように撮影に臨んでいましたか?

門脇:私がしなければならないことは、徳永と神谷の2人の物語なので、だんだん2人が落ちていった時に、幸せな記憶の象徴として「真樹」が存在するようにすることでした。3人でいた時が一番幸せだったということ、そして私は神谷さんの彼女という立場だけど、3人でいることが幸せだから、自然と3人でいるんだなと見えることが私の一番の役割だと思ったので、演じ方は現場に入ってから全部決めようと思っていました。どのくらい出るか、どのくらい引くか、どの位置に自分を置くか。なので初日に、自分が持っている全てのセンサーを張り巡らせて、自分がどの位置にいるべきか探っていました。

林遣都、波岡一喜、門脇麦
林遣都、波岡一喜、門脇麦
門脇:でも、いざ始まってみると、自分の位置を探さなくても自然と用意されていて、2人の距離感や空気感がすでにしっかりできていたので、私もそこに乗ることができました。なので、苦労したか、してないかで言うと、苦労はしなかったです。

波岡:完璧でしたよ。麦ちゃんの真樹は完璧でした!幸せの象徴で本当に完璧な真樹でした。麦ちゃんがいなくなる時の寂しさは半端じゃないですよ。大好きです。

門脇:(照れ笑い)

門脇麦、波岡一喜(C)モデルプレス
門脇麦、波岡一喜(C)モデルプレス
― 門脇さんは波岡さんとの共演はいかがでしたか?

門脇:物語では神谷さんの過去も今もしっかり受け止めなくてはいけないというのがあって、そこが一番不安なところでもありました。でも現場での波岡さんはとても繊細な方で、温かくて優しくて、無理なく演じられました。全てが自然でした。

波岡:僕は忘れもしないんですが、朝メイク室に入るときに「おはようございまーす」ってテンション低めに行ったら、麦ちゃんがぴょこんと僕のところに顔を出して「おはようございます!門脇麦です!」って言ってくれた時に、「麦ちゃん好き!」ってなりました(笑)。たまにさらっと挨拶される方もいるんですけど、繊細だからすぐ心閉じちゃうんですよね、僕。でもあの笑顔で「おはようございます」って言われたら好きになるでしょ。

門脇:あはは。そうでしたっけ(笑)。

波岡:映像にも好きって気持ちがすごく出ていると思います。

夢を叶える秘訣

門脇麦、波岡一喜(C)モデルプレス
門脇麦、波岡一喜(C)モデルプレス
― 本作では「夢」がひとつのテーマとして描かれていますが、お二人が思う「夢を叶える秘訣」を教えて下さい。

波岡:諦めないこと、これしかないと思います。僕もこの世界でご飯を食べられるようになったのはこの11年くらい。その間にもライバル達はどんどん違う職について辞めていきました。でも続けてさえいれば、「続けていく=その間努力をしている」ということになるので、とにかく諦めないこと。努力しても叶わないことも多いですが、それはしょうがないですよ。でも諦めないことだけは絶対に必要だと思います。

門脇:私は昔バレリーナになりたくて、ずっとバレエを続けていたんですが、ある程度の所までいったとき、自分の実力の限界を知って辞めました。それまでバレエのために生きてきたので、その瞬間に何のために生きているのかわからなくなってしまって、次のものを探そうと、歌やダンスに挑戦してみたりしました。その中に映画を観るというのがあって、映画って面白いなと思ったことを機になんだかんだで今ここに辿り着きました。それは全て何かで繋がっている気がしていて、バレエをやっていた時の感覚と、今ここにいる感覚ってあまり変わらないんです。バレエを辞めていなかったらここにはいないし、バレエを始めてなかったらここにはいない。全てのことが今につながっているんだと思います。

夢ってその都度変わってもいいと思うし、その時その時を一生懸命にやる。一生懸命にやっていたら、辿り着くところに辿り着くんだと思います。

― ありがとうございました。

“夢”について聞いた時、「難しいね」「ちょっと時間をください」としばらく考えた後、丁寧に言葉を紡いでくれた2人の姿が印象的だった。もがきながらも、がむしゃらに、泥臭く“夢”を追いかける徳永と神谷に向き合った2人だからこそ、簡単には語れない“夢”への思いがあったのだろう。夢とは?生きるとは?―誰もが立ち止まって考えたくなる、心打つ物語がいよいよ幕開けとなる。(modelpress編集部)

波岡一喜(なみおか・かずき)プロフィール

生年月日:1978年8月2日
出身地:大阪府
身長:178cm
特技:バスケットボール、殺陣、キックボクシング
趣味:旅、日本舞踊(藤間流)

2004年「プライド」(フジテレビ系)でドラマ初出演。2005年映画「パッチギ!」で準主演を務め注目を集める。その後も映画「HERO」、「クローズZERO」、「十三人の刺客」、ドラマ「仮面ライダー鎧武/ガイム」(テレビ朝日系)、「遺留捜査」(テレビ朝日系)、「ごちそうさん」(NHK)など多数の作品に出演する。現在NHK-BS時代劇「立花登青春手控え」に出演中。

門脇麦(かどわき・むぎ)プロフィール

生年月日:1992年8月10日
身長:160cm
特技:クラシックバレエ、英会話
趣味:料理、ギター、映画鑑賞

2011年、ドラマ「美咲ナンバーワン!!」(日本テレビ系)でデビュー。2013年、映画「スクールガール・コンプレックス~放送部篇~」で初主演を果たし、2014年の映画「愛の渦」では体当たりの演技に挑戦し話題に。ドラマ「ブラック・プレジデント」(2014年、フジテレビ系)、「まれ」(2015年、NHK)など多数の話題作に出演。現在はドラマ「お迎えデス。」(日本テレビ系)に出演中で、映画「二重生活」(6月25日公開)の公開も控える。

「火花」

6月3日より世界190カ国に同時ストリーミング配信。全10話。
原作:又吉直樹著「火花」(文藝春秋刊)
総監督:廣木隆一
監督:白石和彌/沖田修一/久万真路/毛利安孝
キャスト:林遣都、波岡一喜
門脇麦/好井まさお(井下好井)、村田秀亮(とろサーモン)、菜葉菜、山本彩(NMB48/AKB48)
徳永えり、渡辺大知(黒猫チェルシー)、高橋メアリージュン、渡辺哲
忍成修吾、徳井優、温水洋一、嶋田久作
大久保たもつ(ザ☆忍者)、橋本稜 俵山峻(スクールゾーン)、西村真二 きょん(ラフレクラン)
染谷将太、田口トモロヲ、小林薫

売れない芸人の徳永(林遣都)は、営業で行った熱海の花火大会で先輩芸人の神谷(波岡一喜)と電撃的に出会い、強く惹かれ、弟子入りを申し出る。神谷は天才肌であり、かつ人間味に富んだ人物。神谷は自分の伝記を書くことを条件に、徳永を受け入れるのだった。

以降、徳永と神谷は頻繁に会っては酒を酌み交わし、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。吉祥寺の街を彷徨いながら、さまざまな人々と触れ合い、なんでもない、でもキラキラと輝く時間を共有する二人。だが、それぞれの歩みは次第に、そして決定的に異なっていく。徳永は少しずつ売れていき、その一方で、神谷は少しずつ損われていくのだった。

ある日、神谷は借金を抱えたまま姿を消してしまう。そして一年後、二人は再会するのだが…。
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