柘植伊佐夫氏(提供写真)

「龍馬伝」「どうする家康」人物デザイナー・柘植伊佐夫氏、思い出深い作品とは 福山雅治との対談も振り返る【モデルプレスインタビュー】

2025.09.16 13:38

人物デザイナーの柘植伊佐夫氏(つげ・いさお/65)にモデルプレスがインタビュー。5月29日に発売した新刊『美人』(サンマーク出版)についてや、思い出深い作品などについて語ってもらった。

  

柘植伊佐夫氏新刊「美人」

『美人』は、NHK大河ドラマ『龍馬伝』『平清盛』『どうする家康』をはじめ、数々の映像・舞台作品で“人物そのもの”を創造し、日本で初めて「人物デザイナー」という肩書きを得て活躍してきた著者の柘植氏が、「美しい人の作り方」をまとめた1冊である。

柘植氏は大河ドラマ以外にも、『岸辺露伴は動かない』『精霊の守り人』といったシリーズや、米国アカデミー賞を受賞した『おくりびと』、日本アカデミー賞を受賞した『シン・ゴジラ』などの映像作品で、既成概念を超えた美しい扮装を生み出してきた。

第2章では、日本を代表をする俳優・クリエイター50人のインタビューが掲載。俳優篇では、杏、飯豊まりえ、江口のりこ、小栗旬、香川照之、北川景子、木村文乃、小泉今日子、白石加代子、高橋一生、竹中直人、土屋太鳳、寺島しのぶ、奈緒、二階堂ふみ、長谷川博己、古川琴音、古田新太、松嶋菜々子、松たか子、松本潤、松本若菜、松山ケンイチ、三上博史、森山未來。

クリエイター篇では、庵野秀明、石塚慶生、大友啓史、加藤拓、佐藤祐市、シディ・ラルビ・シェルカウイ、柴田岳志、城定秀夫、滝田洋二郎、武内英樹、塚本晋也、土橋圭介、手塚眞、長塚圭史、野田秀樹、樋口真嗣、菱川勢一、日比野克彦、三池崇史、水田伸生、宮本亞門、村橋直樹、山口類児、山崎貴、渡辺一貴が登場。さらに巻末では、NHK大河ドラマ『龍馬伝』の主演を演じた福山雅治との対談も掲載される。(modelpress編集部)

柘植伊佐夫氏、“人物デザイナー”とは?

― 新刊『美人』の1番の特徴はどのようなことでしょうか。

『美人』について、(容姿と内面を結びつけて定義)しています。「映像のプロがどのように美しい人を生み出しているのか」について、ここまで細かく語っている書籍も珍しいのではないでしょうか。

― 「人物デザイナー」というお仕事はどんなものでしょうか?

聞き慣れない仕事である「人物デザイナー」ですが、例えばシェフがレシピを作り、メニューを組み立てて、大勢のスタッフを差配して料理のコースを生み出し、継続的にお客様に提供するのに近いと思います。それを映画や舞台などの「登場人物の姿形を生み出す」という分野に当てはめているという雰囲気を思い描いていただければと思います。

登場人物の姿形を昔からの呼び方で「扮装」と言いますけれども、扮装は、衣装、ヘア、メイク、持ち道具などによって構成されています。カツラなどもそれに入りますが、それぞれに専門性の強い独立した分野で、職人性の高い職能の集りです。

「姿形を生み出す」という中に、これだけ多くの異なる分野の人々が関わりますから、「どういう姿にするのか」という考えが一つにまとまっていなければなりませんが、それぞれに環境や分野が異なる人たちですから情報や考えのすり合わせが難しいというようなことも起こります。

人物デザイナーは、<この作品の、この人は、どのような考えで、どのような姿を作るか>という「コンセプト」を生み出して、それを具体的な形にする上では、<適切なスタッフ>を選択してチームを作り、<デザインを明確>にして、作品という成果に寄与する役割です。

柘植伊佐夫氏、思い出深い作品は「龍馬伝」

― 人物デザインをする上で、特に大切にしていることはどんなことでしょうか?

「本人に寄り添う」こと、「環境を理解する」こと、「両者を擦り合わせる」ことに心がけています。これは一般の皆さんの生活でも同じではないかと思うのですけれども、まず「本人に寄り添う」というのは、その人が、どのような考えを持っているのか、何を望んでいるのか、そして何が不足していると悩んでいるのかなど、を会話や観察で感じ取ることです。もちろん容姿を見て、何が特徴であり、どこを伸ばせばより魅力が増すのだろうかということも洞察します。

映画や舞台などは特に「物語」を形にするものですから、そこにはその世界においての「環境」が設定されています。人物デザインは、その環境の中で不自然ではない、すうっと存在できる人物を作り上げる仕事ですから、自ずと「この人がいるのはどういう環境だろうか」ということに目を向けます。時代や場所や、人間関係のフィールドやその条件はさまざまあります。これも一般の方の暮らしと基本的には変わらないと思います。もちろん宇宙や過去や未来の時代にいることはないでしょうけれども、「環境に人は暮らしている」ことを意識しているという意味です。

「本人」と「環境」をよく理解した上で、「どうすればその二つを無理なく擦り合わせられるだろうか」ということを、姿形の面で考えていくというのが、人物デザイナーの具体的な作業といえます。

― 思い出深い作品や、「大変だった」または「最高だった」などと印象に残っている現場は?

思い出深い作品は、やはり2010年大河ドラマ『龍馬伝』が筆頭かもしれません。制作期間1年半という経験は私にとりましても初めてで、その上、大河ドラマといえば日本を代表するコンテンツです。またその中で「人物デザイン監修」という役職は、当時半世紀近い大河史の中で初めて作られた役職でしたから、<表現のための考え方や方法が全て今までにない>という挑戦で、非常に責任を覚えました。最初の半年間くらいは、それまでのやり方に慣れている現場と衝突することもありましたが、徐々にお互いの理解が深まって、結果的にはとても良いチームワークとなり、作品の評価をいただいたと思います。

このような「大変さ」は、それに押しつぶされてしまったら辛い思い出になるかもしれませんが、『龍馬伝』の場合にはその壁を乗り越えて、一丸となって目標に突き進んでいったという状況になりましたから、収録最終日は感無量な気持ちになったのを覚えています。やはり「最高だった」という記憶の条件には、乗り越えられないかもしれないハードルに挑戦し、それに試行錯誤しながら最後に達成するというような、一筋縄ではいかない、逆境というような「負荷」があるのではないかと思います。そのような力が、自分を過去とは違う姿に変容させて、充実した気持ちをもたらしてくれるのではないでしょうか。

柘植伊佐夫氏、印象的だったインタビュー明かす

― 『美人』というタイトルにはどんなメッセージが込められていますか?

ともすると「美人」といえば、「女性」であったり「容姿の美しさ」を思い起こしやすいのではないかと思います。しかし本書で申し上げているのは、「性別」「年齢」「国籍」「職業」「立場」などのあらゆるボーダーを取り払った、「人としての美しさ」を基準に置いています。真っ直ぐとらえるならば、「美人」とは内面を含んだ「美しい人」であるはずですから、著者として、そのような「一つの基準に限定されない、人の美しさ」を象徴する思いでタイトルをつけました。

― 50名の豪華なメンバーが寄稿(聞き書き)しているのは、どんな背景で、どんな意図でしょうか。

「美しさ」の判断は、(自分の思う美しさ)と(他者が思う美しさ)に、ズレが生じるものです。誰でも「美しくありたい」「人から好感を得たい」と望むものですが、そのための努力や基準が、本当に自分と他者の思いを満たすものなのか不確かさがあるものです。その基準を得るためには、経験や知性、倫理観や感受性の伴う人格が必要だと思います。本書では「美人」について、私の知見をもとに系統立ててまとめるとともに、美の最前線に立つ方々の言葉によって、美しさの輪郭を浮き彫りにしたいと考えました。

― 誰のどんなインタビュー内容が印象的でしたか?いくつか教えてください。

何しろ本当に素晴らしい方々であるのは、そのお名前をご覧になっていただければご理解願えると思います。ですからどなたかに絞るというのはなかなか難しく、それぞれに良さがあります。その中であえて何人かを挙げるとすれば、思いつくままに書きますと、二階堂ふみさんが、人の中庸さについて「グレー」という表現を使われているのは、自分も同じ思いを本文に書いていますのでとても共感しています。松嶋菜々子さんが、「筋が通っていること」を美しさの条件にあげているのもとても納得が行きます。さまざまな条件や利害が錯綜する社会にあって、そこに惑わされずに筋を通すことには強い信念や意志がいるからです。

長谷川博己さんの語られた、失われつつある「日本」の価値観や基準を重んじたい、という思いについてとても共感します。松たか子さんが、「美しさは誰にも備わっていて、それを出す覚悟があるかを問われる」とおっしゃっていますが、これもその通りだと感じます。古田新太さんとは多くの作品をご一緒しているのですけれども、実は共感が強すぎて、逆に照れ臭くてあまりじかに喋っていないという思いがあります。快くインタビューをお受けになっていただいて、個人的には大変面白く読ませていただきました。「人に迷惑をかけないのが美しい」とは本当にそうなんですけども、なかなか出てこない言葉だと思いました。

まだまだ書ききれないのですが、大友啓史監督や庵野秀明監督の言葉は、なるほど、そういう視点で見ているのだなあと感心しましたし、世界的な振付家であるシディ・ラルビ・シェルカウイさんがおっしゃられている「ユーモア」の大切さなどもその通りだと思います。切羽詰まった時ほど人格が試されますから、その局面をユーモアで緩和させられる寛容さは美しい、ということでしょうか。最後に対談をさせていただいた福山雅治さんとの内容も気に入っております。「人の美しさ」の一般論について、仕事中に話し合うということはほとんどありませんから、今回の機会は非常に稀だと感じていました。そしてこの対談内容は、決して長いやり取りではありませんが、心に染み入る、納得のいく内容だと、私自身は感謝しております。

― 一般読者(ユーザー)には、特にどんな点が役立つ内容でしょうか。

とても厚い本ですので、「どのような人が美しいのか」という考え方や方法について、多くの面を網羅しています。逆に言えば、(すべてが当てはまっていなくとも、何かは思い当たる)あるいは、(これは理解できなくても、ここはわかる)という読み方ができるでしょう。また、(パッと開いたところを読む)こともできます。どのようなやり方をしても、「必ず美しさについて書かれている」ので、ゆっくりと「美の考え」に触れることで、読者が自然と美しくなるだろうと思います。

柘植伊佐夫氏の夢を叶える秘訣

― モデルプレス読者の中には夢を追いかけている方もたくさんいます。そういった読者に向けて「夢を叶える秘訣」を教えてください。

「夢を叶える秘訣」は、「夢が叶うまでやり続ける」ことに尽きるのではないでしょうか。美しくなることを例にとれば、「美しさとは容姿の美醜を指しているのではない」ことを理解することが大切です。では、人の美しさとはどのようなことなのでしょう。それは、その人それぞれの、「自分だけの物語を生き抜く」という姿勢によって得られます。だからこそ、美人とは誰一人として同じあり方ではなく、皆それぞれの美しさを放つのです。「物語」とは見方を変えれば「夢への道」でもあります。その夢を叶えるためには、決してあきらめない。それを貫く人が美人です。
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