NEWS加藤シゲアキは「およそ8人いる」それほどマルチに活躍できる理由 嫌な言葉と向き合う彼なりの「愛」【「SUNA」インタビュー前編】
5月9日より2週間限定で公開される短編オムニバス映画「MIRRORLIAR FILMS Season7」の「SUNA」にて、2度目の映画監督を務めるNEWSの加藤シゲアキ(かとう・しげあき/37)にインタビュー。前編では、意外だったという「MIRRORLIAR FILMS」のオファーを引き受けるまでの本音や「砂のホラー」というテーマに決めた理由、そしてマルチに活躍する加藤の支えとなる考え方に迫った。【インタビュー前編】
加藤シゲアキ監督作 正門良規とW主演「SUNA」
加藤が監督を務め、Aぇ! groupの正門良規とW主演を果たす「SUNA」。人の身体が砂に埋め尽くされ窒息死するという奇妙な事件が多発する東海市を舞台に、砂にまつわる濃密なミステリーが描かれる。正門は「本当に人の仕業なのか」と怪しみ、謎に翻弄されていく後輩刑事・遠山を、加藤はそんな遠山を心配しながらも、自身も事件の謎に疑念を抱く先輩刑事・狭川を演じる。加藤シゲアキ「MIRRORLIAR FILMS」オファーに悩んだ理由
監督のオファーを受けたのは、彼が作家10周年を記念したショートフィルム「渋谷と1と0と」(2022)で初監督を務めてから2年ほど経った頃。「驚きましたね。僕は小説家としてクリエイティブな活動が多いんですが、10周年の時にショートフィルムを1本撮って、その時もすごく楽しさもありつつ難しさみたいなことも実感して『まあいつか機会があればまたこういったこともあるかな』ぐらいのことだったんです(笑)」と思いも寄らないオファーだったのだという。友人がたずさわっている同プロジェクトは「よく聞いていたので『面白い試みだな』と他人事のように聞いていた」と話す加藤。魅力を感じたのは自身が小説家になりたての時に経験したことと重なったからという理由もあった。「官民一体で地域と協力してやるという試みですが、映画はなかなかロケ地を借りるのが難しかったりするので、地元の方の協力があればあるほどスムーズな撮影に臨める、新しい画作りができるというのは傍から見ていて思っていましたし、『MIRRORLIAR FILMS』だと大体2人ぐらいタレントや別ジャンルから映画に参加されるので、そういった部分でもすごく面白いチャレンジだなと思っていました。僕自身がアイドルとして小説を書き始めた時、文芸界が僕に対してあまり偏見を持たず歓迎してくれたので、僕自身としてはそういった方たちやそういった試みはやっぱり支持しなくてはいけないと思って。なので、タレントのチャレンジや別ジャンルからの新しい風というものを求めている姿勢は素晴らしいなと思いました」
しかし、映画制作を経験しているだけに「監督という立場を務めるのは決して簡単なことではないので、少しアイデアが浮かぶかどうか、本当に自分がやるべきかどうかは少し考えさせてほしいということはお伝えしたんですけど、結果的にやっていました(笑)」と1度は悩んだことも告白。当時の心境について「自分がやる上ではそれなりの結果を残さなければいけない、生半可なものは作れないという思いもあって。自分が本当にこれをやって、期待に応えられるかどうかっていうのは、すごく自分自身に対して厳しい視点で向き合わなければいけないと感じていました」と責任感があったのだと打ち明けていた。
加藤シゲアキ、目指したのは「超エンタメの15分」
自身と向き合って向き合って、加藤が作り上げたのは“砂”をテーマとしたオカルトスリラーであり刑事バディもの。テーマだけを聞くと一見長編映画のように感じるが、彼は15分の短編映画でそれを作り上げた。制作時点で『Season6』の小栗旬や浅野忠信など当時すでに公開されていた作品を観て多くの刺激を受けたという加藤が、なぜそのジャンルを選び、短編映画で挑戦することを決めたのだろうか。「僕がバディものに興味があったというか。少し変な話なんですけど、15分で(映画を)やるという時に普通は『やっぱりその15分でしかできないことをやろう』となるところ、僕は2時間やる時のジャンルムービーをトレースした15分にしたかったんです。短編で15分を自由に作っていくと、本当にアートハウス(※)っぽくなってくるんです。それはそれですごく楽しいんですけど、そうではなく『超エンタメの15分』ができないのかなと考えていました。
15分って実は結構長い。エンタメにする方向に行きやすい短編小説を作ると考えたら、そこが僕の強みかなというのも思って、オカルトスリラーの刑事もので色んなパターンを考えたんです。あとバディものにすると、狂言回しではないですがお互いがセリフで上手く話を展開させやすくて。振り返ってみれば、僕よりも彼(正門)にセリフをすごくしゃべらせて、僕は現場で楽していたという部分もありました(笑)」
※アートハウス映画:芸術性が高く大衆市場よりもニッチ市場向けに作られた自主制作映画
加藤シゲアキ「砂かけ婆」「砂の女」から発想得る
さらに「砂」という物体に目をつけた理由は「砂かけ婆ってなんで砂かけるんだろう」「砂かけ婆って本当にいたら嫌だな」と意外にも無邪気な発想。「やっぱり自然物であってもあるべきではないところにあるとすごく気味が悪い。砂ってどこにでもあるはずなのに、家の中にあったらすごく嫌だし、口の中にあったら当然嫌だし、ベッドの中にあったら嫌だなということが面白いとは思っていました」と仕事の空き時間などに考えを膨らませた。「それは小説を書く時もそうなんですけど『なんでなんだろう』とちょっとふざけたマインドで当たり前を疑う。自分の中でも考えていたし、友達と『ゲゲゲの鬼太郎の本当の実写なんてめっちゃ怖くない?』と話していて(笑)。本当に怖い視点でやるのを『最初は誰かがやってくれないかな』というところから、妖怪について真面目に考えたりしていたんです。自然物と妖怪って民族学的な部分で割と結びつくものなんですが、特に『砂』はその最たるもので、そういう部分がすごい面白いなと思ったのが大きかったです」
また「砂」というテーマを象徴するように安部公房の小説「砂の女」の一節も映画冒頭に使用されている。「罰がなければ逃げるたのしみもない(狭川)」「なんすか?それ(遠山)」「小説の一節だよ(狭川)」「いやー…意味分かんないっす(遠山)」。暗闇の中で繰り広げられるセリフに、加藤は「ちょっとあそこに何か欲しいなというのはあって、現場で思いついて、その場で最終日の帰りがけにとりあえず録音させてもらったという感じでした。ちょっと『砂』にかけすぎなくらいなのですが、『砂の女』という作品も流動性への恐怖感といった部分ですごくホラー的ですから、色んな方法でオマージュを捧げるのも映画の文法かなというのでアプローチしました」と意図を説明している。
加藤シゲアキ、明確な下準備&強力な助っ人登場でスムーズな撮影に
今回舞台となった東海市に、シナリオ・ハンティング(シナハン)、ロケーション・ハンティング(ロケハン)、撮影と3回も訪れていた加藤。はじめから「砂のホラー」とイメージを持って訪れた東海市には、ビーチも砂浜、公園の砂場すらもなく「確実にできるかどうかというのはすごく悩ましいところでした」と振り返る。様々な場所を巡り、彼が理想とする作品の形と照らし合わせる作業が行われていった。「東海市は鉄の町なので『だったら地元を活かしてもう鉄に振り切って違うアプローチを考えた方がいいか』とも思ったのですが、そうやってアプローチしてプロモーションビデオにしたいわけでもないからどうしようかなと悩んだ状態で行きました。そこで、冒頭の部分で使った生コンクリート工場がすごく協力的だったので『これで砂がもしかしたらいけるか』と。ただそれ以外に繋がらなくてあそこだけから広げていこうと思ったんですが、一応面白く使えそうなところとして、プールや市役所を見させてもらいました。すると『この画はすごく面白いし、この先撮りたくても撮れないかもしれないから』とすごい引っかかって。なので、ある程度あったシナリオからロケ地によって広がっていったんです。もう一度ロケハンにも当然行ったのですが、(シナハンの時点で)半分ロケハンが終わったような状態というか、ロケ地に当て書きみたいにできたのでなんとなく勝算が見えて『これなら行けるかも』と思いました」
加藤は撮影を振り返り「スムーズにいった理由はシナハンとロケハンに行って明確に準備できたことだったんです。ロケハンでもうほぼほぼカット割りを始めていましたし、その後も3回くらいカット割りの打ち合わせをして。それが良かったです」と断言する。それでもなお、発想力の尽きない彼は「やっぱり現場でちょっと思いついちゃうっていう(笑)。助監督の方からも『加藤さん思いついちゃうから』って言われたんですが、思いついたアイデアは功を奏したので、これはもう作り手としてはしょうがないんです。思いついたらやらざるを得ないという部分があったので、その辺りはスタッフには結構迷惑を掛けてしまったとは思うんですが、明確に下準備をしていたからこそ少し足したり修正したりと柔軟にできたのかなと思います」と笑い、満足げな表情を浮かべていた。
さらに、もう1つ「元々僕は自分で編集しようと思っていたのですが、自分で編集すると結構時間がかかるということでスタッフが不安に思ったのか、プロデューサーから『加藤さんの指示通りに手早く動いてくれる人を用意しました』と細沼さん(細沼孝之氏)を紹介していただいた」と強力な助っ人の登場も撮影に欠かせなかった。
「細沼さんがチェック用の仮データをその場で録画して、僕が監督をしている間に仮で映像を繋いでくれていたんです。本来、僕は最初からやりたかったので、仮で繋がれてしまうと嫌だと思っていたのですが、彼のやり方がすごく僕と合っていたし、細沼さんもいい提案をたくさんしてくれました。僕が『そっちじゃないんです』というような要望も受け入れてくれたので『もう彼がいなかったらこのスムーズな撮影はない』というぐらい本当にありがたかったです。15分という数字を絶対に守らなければいけなかったので、1日目が終わって『今(撮れ高)何分ぐらいです』と合間の移動でも見ながら、最終日の時点で『あと何分残っているんだろう』というのを把握できて、たくさん撮ったり、逆に無理して減らそうとしたりしなくても行けそうというのがある程度分かりました。最終日は難しい撮影が多かったんですが、そこでやるべきことも明確にしてくれて。最終的に3日間の仮で繋いだ時点で『15分6秒』くらいだったのですごい良かったなと思いましたし、映画って役者もそうですし、スタッフと皆で作るものなんだなと。小説は本当に1人で書いているので、こんなにアプローチが違うんだというのは改めて発見したことです」
加藤シゲアキ、マルチに活躍できている理由
今回の作品だけでも監督・脚本・主演俳優と3足のわらじを履いた加藤だが、小説家・アイドルとしても活動する彼は、自身のX(旧Twitter)でも「およそ8人いるという加藤シゲアキ」「『職業なに?笑』といじられたりするたび、『ハイパーメディアクリエイターです』とドヤる日々」と自分をお茶目に表現する。マルチな活躍を見せる一方で、それぞれの仕事が思い通りに行かなくて落ち込んでしまったり、辛くなってしまったりする瞬間はあるかと問うと、穏やかな表情で彼がこれまで活動を続けてこられた理由を明かしてくれた。「上手くいかないこと、『これもっとああしとけばよかった』と思うことはやっぱりあります。ただそれで落ち込んだ時に解決できるものだったら僕は解決しに行きますが、終わったことや上手くできなかったことというのはもう忘れるしかない。そういう時に色んな仕事をさせてもらっていると、やることがたくさんあるので、終わったことを考えていられないというのが、僕は本当にありがたいです。この映画に関してはそういうことはなく本当にすごいスムーズに行ったので、何も引っかかるものはありませんでしたが、例えばライブで上手くいかなくてその日はすごい悔しいけれども『いやでも帰って原稿書くか』『役の準備するか』みたいに、次にやることがたくさんあるから、ありがたいことに引っ張られすぎず考える時間がないというのが、僕がこうやって活動できている理由なのかなと思います」
加藤シゲアキが考える「愛」支えになっている言葉とは
「落ち込む時って、自分のことでも落ち込みますが、悪意を向けられたりSNSでうっかり嫌な言葉を見てしまったり、誰かに何かを言われた時もあると思うんです」とも本音を打ち明けた加藤が支えにしているという言葉は「憎しみは憎しみによって消え去るものではなく、ただ愛によってのみ消え去るものである」。これは元々ブッダの言葉だが、1951年のサンフランシスコ講和会議で、当時セイロン(現・スリランカ民主社会主義共和国)の初代大統領だったジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ氏が日本を自由な独立国にすべきこと、アメリカが日本へ科していた賠償請求を放棄することを主張した言葉でもある。「誰かから憎しみを向けられても自分はそれに対して怒らない。誰かから嫌味やひどいことを言われて悲しいし辛いし、一瞬はムカつくこともありますが『そういう考え方もあるよね』という方にどうにか持っていくのが、僕はざっくり『愛』だと思ってマインドを持っていっています。結局、去年傷ついた言葉も今1個も覚えていないので、そういうスタイルで生きてこれていることが健康なのかなと思います」
インタビュー後編では、本作で自身とともにW主演を務める“相棒”として正門をキャスティングした理由や、加藤が考える現在の正門の魅力、そして撮影現場で感謝していることなどを語ってくれた。
「MIRRORLIAR FILMS」とは
2017年に山田孝之、阿部進之介、伊藤主税(and pictures)らが発足した、俳優に学びとチャンスを提供するサービス「MIRRORLIAR」(ミラーライアー)が立ち上げた「MIRRORLIAR FILMS」。クリエイターの発掘・育成を目的に、映画制作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクトとして2020年に始動した。過去には三吉彩花、ムロツヨシ、水川あさみ、小栗旬などが監督を務め、今回の「Season7」には加藤浩次や香月彩里などが参加している。(modelpress編集部)加藤シゲアキ(かとう・しげあき)プロフィール
1987年7月11日生まれ、大阪府出身。A型。1999年に事務所に入所し、2003年にNEWSとしてCDデビューを果たした。デビュー前から「3年B組金八先生」第6シリーズ・第7シリーズに出演し、その後もドラマ「パパとムスメの7日間」(TBS/2007)、「失恋ショコラティエ」(フジテレビ/2014)、「ゼロ 一獲千金ゲーム」(日本テレビ/2018)など数々の話題作で俳優としても活躍している。2010年、青山学院大学を卒業し、2012年には「ピンクとグレー」で小説家としてもデビュー。過去には「オルタネート」(2021)、「なれのはて」(2023)の2作が直木賞の候補作にノミネートされている。また、作家生活10周年となる2022年にショートフィルム「渋谷と1と0と」を制作。今回「MIRRORLIAR FILMS Season7」内の短編映画「SUNA」で2度目の映画監督を務める。
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