渡邊渚(C)モデルプレス

【渡邊渚インタビュー】誹謗中傷への本音「見えない人の暴力的な言葉に自分を左右されたくない」PTSDを乗り越えられた一言とは<Vol.2>

2025.02.06 06:00

元フジテレビアナウンサーで現在フリーになって活動する渡邊渚(わたなべ・なぎさ/27)が、1月29日に初のフォトエッセイ「透明を満たす」(講談社)を発売した。Vol.1では、2023年に患ったPTSD(心的外傷後ストレス障害)を克服するため、「持続エクスポージャー療法」を始めた時のことについて語ってもらったが、彼女がなぜ辛いと分かっている療法を始める勇気を持つことができたのか。そこには、彼女にとってとても大きな存在があった。【インタビューVol.2】

  

渡邊渚、辛い治療も乗り越えられた理由

渡邊渚(C)モデルプレス
― トラウマと向き合わなければいけない「持続エクスポージャー療法」を始めることができたのは、何か前向きになれたきっかけがあったのでしょうか?

渡邊:「いつまでもこれに囚われていたくない」と思えるようになったからですね。(感情のアップダウンの)波のある生活をしている中で、辛い時そんなことは思えないのですが、少し元気になった時に「私またこの後マイナスに行くのか」と思うとしんどくて。このままだと結局「死にたい」といったような気持ちがずっと頭の中に残ってしまって、気分が落ちた時に事を起こしてしまったら、私以外の家族や友人にも深い心の傷を負わせてしまうことになるかもしれない。そう思ったら「それは嫌だ。PTSDみたいな辛い目にあうのは私だけでいい」と思ったんです。それで「生きなきゃ」と思えたことが、やっぱりPTSDに対して1番有効だと言われている持続エクスポージャー療法をやるべきだと思えたきっかけです。

渡邊渚(C)モデルプレス
― 周りの方々の存在がとても大きかったんですね。

渡邊:大きいですね。この経験をしてすごく思ったのが、人間1人じゃ何もできないんだということ。私1人でなんとかしようと思っても無理だったから入院もしたし、治療も受けたし。最初は本当に自分が井戸に落ちたみたいな気分だったんです。真っ暗闇の井戸で冷たくて、もがいてもがいて這い上がろうとしても、這い上がる突っかかりすら見えなくて「もう何もできない、どうしよう」みたいになっていたけれど、その井戸に医療従事者の方たちがロープをくれて、それにしがみついていたら、友人や家族が「こっちだよ」って上から光を照らしてくれて、私は引き上げてもらえたと思っているので、本当に周りにいてくれた人たちのおかげでここまで来られて、その真っ暗な井戸から抜け出せたのではないかと思っています。

渡邊渚が勇気をもらった一言

渡邊渚(C)モデルプレス
― 本作でも「光をくれた言葉たち」という章で周囲の方々から掛けてもらった言葉についてつづっています。その中でも特に勇気をもらえた一言はありますか?

渡邊:1個に絞るのは難しいですが「何があっても変わらない」と言われたのが1番大きかったかもしれないです。病気になってから、自分がどんどん変わっていくさまを私自身でもすごく分かっていたので、どんどん世界が敵に見えてしまったり、誰も信用できないみたいな気持ちになってしまったりして、どんどん嫌いな自分になっていく感覚でした。顔や症状でも元の自分ではなくなっていく、変わっていってしまうという苦しさがある中で「何があっても変わらないから」って1番嬉しい言葉でした。「変わらない」というのは、普段その文字面だけで見ると「成長しない」みたいな感じにも見えてしまいますが、そうではなくて何があっても変わらない関係性があるってすごくそれだけで救われるんだなと思いました。自分が変わったとしてもそれを受け止めてくれる人がいるんだという安心感が大きかったです。

渡邊渚「見えない人の暴力的な言葉に自分を左右されたくない」

渡邊渚(C)モデルプレス
― 休養中も積極的にSNSを更新されていましたが、病気と戦いながら情報を発信し続けた渡邊さんに勇気をもらう方も多いと思います。心ないコメントなどもあったかと思いますが、渡邊さんは発信される中で、どのようにそういった声と向き合ってきたのでしょうか?

渡邊:もちろん誹謗中傷やそういったコメントに全く傷つかないかと言われればそうではないし、今は追いついていないですが、病気の時は追える範囲で全部目を通していて「そういう意見もあるよな」と全てを受け入れていました。「そうだよね」「確かに」とも思いつつ、ある程度冷静になった時に「これは受け止めるべき事案なのか、そうではないのか」は明確にある、人を傷つけようとして書いているものと意見として書いているものは違うと感じて。だから、結果的にネットで悪いことを言われたとしても、自分の周りにいてくれる人、現実世界でいてくれる人に共感を得られていたり、好きだって言ってもらえたりするのであればそれでいいと思えるようになりました。見えない人の暴力的な言葉に自分を左右されたくないです。今もこうやって「どんなことがあったって別に何も変わらないよ」「あなた悪くないよ」と言ってくれる人がいるから仕事を続けられているし、その仕事も家族や身近な友人が「頑張っているね」「もっともっとこんなふうになってよ」と励みをくれるので、そのおかげでまだまだ元気で活動することができています。

Vol.3では、仕事復帰から数ヶ月というスピードでフォトエッセイを発売した理由、執筆中に抱えた苦しみを打ち明けてくれた。(modelpress編集部)

【Vol.3】苦しみに直面してまで世に届けたかったこと フォトエッセイ執筆の真意

渡邊渚フォトエッセイ「透明を満たす」

渡邊渚(C)撮影:三宮幹史/渡邊渚フォトエッセイ 透明を満たす(講談社)より
本作はフリーランスとして新たなスタートを切ったばかりの渡邊による、50,000字を超える書き下ろしの長編エッセイに加え、新境地を感じさせる充実のフォトパートで構成される。エッセイでは、アナウンサー時代の苦悩からPTSDを患った後の壮絶な入院生活、治療を経て前向きに歩めるようになるまでが詳細につづられている。

渡邊渚(わたなべ・なぎさ)プロフィール

渡邊は1997年4月13日生まれ、慶應義塾大学を卒業後、2020年にフジテレビ入社。2023年7月より体調不良で入院するため休養することを発表、2024年8月31日に同局を退社した。同年10月1日にPTSDを患っていたことを公表している。

現在、Webサイトでのエッセイ執筆やモデル業、これまでの経験や知識を生かしたバレーボール関連のMC業など、アナウンサーという肩書きを離れて多様な働き方を実践している。
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