【「光る君へ」柄本佑インタビュー】「源氏物語」誕生…道長の意図とまひろへの想いとは 衝撃展開には「覚悟を感じずにいられなかった」
2024.08.18 20:45
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大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合テレビ、毎週日曜午後8時~/BS・BSP4K、毎週日曜午後6時~/BSP4K、毎週日曜午後0時15分~)に出演する柄本佑(えもと・たすく/37)が合同取材会に出席。8月18日に第31回「月の下で」の放送を終え、まひろ/紫式部(吉高由里子)がついに「源氏物語」の執筆をスタートさせ、折り返し地点を迎える。紫式部が生涯心を寄せ、陰に陽に影響しあいながら人生をたどる生涯のソウルメイトとなる藤原道長役を演じている心境や今後の見どころをたっぷりと語った。
吉高由里子主演大河ドラマ「光る君へ」
大石静が脚本を手掛ける今作は、平安時代を舞台に、壮大で精緻な恋愛長編「源氏物語」を書き上げた紫式部が主人公。道長は、まひろとは幼いころに三郎の名前で出会い、特別な絆が生まれる。道長はまひろに妾になることを断られ、「より良き政(まつりごと)をする」という約束を結ぶ。約束を果たすために違う道を歩み始めた2人だが、宿縁により、まひろは道長との子を出産。左大臣となり最高権力者となった道長は、嫡妻・倫子(黒木華)との娘・彰子(見上愛)を一条天皇(塩野瑛久)に入内させ、道長はまひろに一条天皇に献上するための物語の執筆を依頼する。作家となるまひろ本人からみる「源氏物語」、そしてそれを政治に利用しようとする道長の視点…「源氏物語」を軸にこれから物語は大きく回転していく。
柄本佑「光る君へ」の藤原道長像の変化
― 放送も中盤を迎えています。撮影が進んでいく中で当初感じていた道長像の心境の変化や、心がけていることを教えて下さい。柄本:当初は、ヒール要素のある世間に抱かれているイメージの道長像というよりは、三男坊で政治に積極的に関わっていく兄2人とは違ってそんなに前のめりではないのんびり屋さんの三郎くんの部分を大事に、人間味溢れる人物像としてスタートしました。そんな道長が何の因果か色々なところに運ばれていって政治のトップに立つというところなのですが、今まで色々と手配してくれていた姉(詮子/吉田羊)も亡くなって1人になって色々な悩み方をしていて、今撮影が最終章に入る手前を演じていて思うこととしては、より最初に感じていた三郎としての人間性が大事だなと思っています。というのも、政治のトップとして意見しなければいけなかったり、謀(はかりごと)をしたり、彰子も入内させたり、まひろとの約束を果たすためにも上り詰めていくんですけど、同時に今までの道長の行動との乖離した部分が現れてきたのを演じながら僕自身も肌で感じていて、それが道長の悩みとリンクするんだと思います。今はこの地位にいるけど元々の三郎としての人間性は変わらないというのを、改めてここ最近になってより意識するようになりました。
― 今作について様々な論評がある中で「道長が実態より良い人に描かれすぎでは」「政治的な思惑があってもっと露骨に行動していたのではないか」などという指摘もありますが、ご自身ではどう感じられますか?
柄本:最初の打ち合わせのときに大石静さんや制作統括の内田ゆきさんから「いわゆるオーソドックスな道長像ではなく新たな道長像を描きたい」と言われて、やはり大石さんが書いて来られる台本の強度というか「この作品の中での道長像はこうである」ということの説得力がしっかりあるので、僕らは大石さんが書かれる台本を最初から信頼して描かれている道長像をやると思って出発しています。だからそこに関しては何も疑いもないし、色々な意見があることは、僕は良いことなんじゃないかなと思っています。
あとは「もっと露骨に行動していたのではないか」ということに関しては、この作品において道長は非常にまっすぐな人だと思っていて、地に足のついたところから出発しているんです。例えば娘の彰子の入内の際和歌を集めた屏風絵を用意したのも、当時の行動としてはだいぶえげつないことをやっているらしいんですよね。だけど、元々は自分の家族は政治には関わらせたくないと思っていたのに、晴明(安倍晴明/ユースケ・サンタマリア)に進言され、姉からも「あなたも血を流すべき」と言われて入内させたからには、とにかく娘に幸せになって欲しい、だから本人はとにかく必死に家族の幸せを願っていてとった行動が外から見たらえぐいことをやっているように見えてしまったのかなと。今撮影している最終章に入る手前でも道長はまだまだ悩んでいるので、とにかく家族の幸せとまひろとの約束を果たすために邁進しております。
柄本佑、藤原道長と一条天皇に感じる強い信頼関係
― 一条天皇の最愛の妻・定子(高畑充希)は亡くなり彰子が中宮になりました。想いは違うにしてもやっていることとしては父親の兼家(段田安則)とあまり変わらないという見方もできると思いますが、兼家を意識している部分はありますか?柄本:「父と同じことをしたくないんだ」と言う場面がいくつか出てくるんですけど、結果として同じようなことをしてしまっていることとの整合性をどう持つかは、正直なところ全部台本を読んで終わってみないと分からないです。ただ非常に根は深くて、同じことをしていても気持ちや出発点が違うという想いで、兼家は家のためにやっていたけど道長は民のために良き政(まつり)をしたいという想いでやっていて僕はそこのところで整合性を保ってやっていますが、道長の旅路もまだ全然途上で問題が山積みなので落ち着いてきたときに僕自身も見えてくるものがあるのではないかと、とっても楽しみにしています。
― 父親の帝との対し方と比べると、道長は辞表を何回も出したり、「枕草子」に「源氏物語」をぶつけたり、割と回りくどい手を使っている印象を持つのですが、一条天皇の操縦術についてどう考えて演じられていますか?
柄本:最初に監督やプロデューサーさんを混じえて、「道長は人によって顔や声すらも変わる人物でいきたい」というお話はしたのでそれが作用していると思います。だから一条さんに対しても、回りくどいかもしれないけどそれが道長の付き合い方なんじゃないかなと思います。武力に対する想いもあるし、先のことをちゃんと考えて今より先を見ている人だと思います。
― 塩野さんも「道長のことをなんだかんだ信用しています」と話されていたのですが、お互い信頼関係があると思いますか?
柄本:思います。一条天皇に「これはダメですよ」とか色々言うけど、最終的には道長もやっぱり信頼しているんですよね。根っこに強い信頼関係を感じます。
賢子の出生の秘密…衝撃展開には「覚悟を感じずにいられなかった」
― まひろが道長の子(=賢子)を身ごもって出産する展開にはかなり驚いたんですが、柄本さんご自身はこの展開を知ったときに驚かれましたか?それとも「やはりそうなのか」と納得した感想でしたか?柄本:「やはりそうなのか」とは思いませんでした(笑)。だけど、「そうなりそう」みたいな段階で大石さんや制作統括の内田ゆきさんからか風の便りで聞いていたので、非常に重要なポイントであると思うし、「この組はその決断をするんだ」と、ある種覚悟みたいなものを感じずにはいられなかったです。その内容自体というよりはそれを決断したこのチームに勇気をもらったし、より好きになりました。
― これまでもまひろと道長が月を見上げてそれぞれ想いを馳せるシーンがありましたが、第31回でそれについて言及するシーンがあります。道長がどんな想いで月を見つめているか、まひろのことを想ってだったのか、どのように解釈されていたのかお伺いしたいです。
柄本:それはそうなんだと思います。やっぱりまひろと道長は離れている時間の方が長いし、道長は非常にストレートな人だと思っているので、隣にいるまひろに言っているからそうじゃない気もするけど、明らかにまひろのことを言っているんじゃないかなと思います。第31回のシーンは今までの関係を決算するというか新しく先に進むポイントなので推進力というかエネルギーを使ったし、吉高さんと協力し合いながら切磋琢磨して、とても印象に残っています。
柄本佑、大石静脚本のト書きは「挑戦状だと思って」
― 大石さんの台本では「…」やト書き(セリフ以外の文章)が多いそうですが、そういった部分の演じ方はどう心がけていますか?柄本:単純に「…」が多いだけというよりは「〇〇という気持ち」など大石さんが方向を示してくれているという感じで、注釈として心情を書いて下さっているので、投げっぱなしスープレックスというよりはちゃんとガシッと掴まれてスープレックスされている感覚です(笑)。「好きに表現して」というよりは「ここはこっちですよ」とちゃんと1個1個丁寧に導いていただいているので、僕らも「このト書きどうすればいいんだ?」と思うこともあるんですけど、それはもう大石さんからの挑戦状だと思って受け取ってやっている最中です。例えば「万感の想い」とか、最初の頃は「目が合って心で会話している」とかそういうト書きがありました。僕らもセリフを喋っていないところでどういう風に演じるかが非常にやりがいのあるところなので頑張らせてもらっています。
柄本佑、吉高由里子の姿に驚き「超紫式部です!」
― 改めてここまで共演されてきて吉高さんの凄みをどのように感じられていますか?柄本:やっぱり懐の深さといいますか、まひろと道長の長くて強度のあるシーンが場面で出てくるんですけど、先程話したような大石さんが描かれる「…」のところに対して「こんな表情をされるんだ」という発見があって、「だったら道長はこういう表情になっているかな」となるんですよね。もちろん大石さんが導いて下さっているところもあるんですけど、そこがさらに具体的になったときに新たな発見に連れて行って下さるので、本当に引っ張ってもらっているというか、吉高さんにも(お芝居を)引き出していただいているなと思うところが非常に大きいです。
あとは、撮影が始まって1年ちょっと経過して、まひろが内裏に上がって源氏物語を書かれるわけなんですけど、めっちゃ紫式部ですよ!まじで超紫式部(一同笑い)!最初に見たときは立ち姿でスンとしていて衣装の着こなしも非常に美しいなと思ったんですけど、それ以上に扮装姿で筆の練習をしている姿を見て、「え、紫式部じゃん」と思って、シルエットから以前、目にした紫式部の石像まんまで本当に驚きました。これからまひろも本気で「源氏物語」に取り掛かっていくので、ちょっと気を抜いたら道長くんがタジタジになっちゃうぐらいの強い表情と目線で演じられていて、とってもすごいことになっているような気がしますのでぜひ楽しみにしていて下さい。
― 今のお話を聞いてより楽しみになったんですが、まさに紫式部のような吉高さんを見られてご自身もより道長に入り込めていますか?
柄本:それももちろんあると思います。2人の関係値が変わってきているし、今までは「離れている時間が2人の想い強めるのさ」みたいな関係でしたけど、これからは距離がちょっと近くなって、違ったソウルメイトの形になるんです。それでも明らかにソウルメイトだからこその信頼関係が落ち着いた形でより強固になっているなという印象があります。
― 道長はまひろの文学的才能にも心惹かれながら、「源氏物語」を政治的に使いたいという2つの相反する感情を持っていると思うんですが、その辺りの塩梅はどんな風に演じましたか?
柄本:結局は政治に向いているんだけど、元々は自分の家族の幸せとか私利私欲ではないベクトルでまひろにお願いしに行ったなと感じています。他の人に見せられない顔や情けない部分を唯一見せられる相手がまひろで、すがるような想いで「なんとかしてくれないか」と頼めるのもまひろしかいないんだと思います。だから今考えてみると非常に(彰子に対して)“パパ”をしていて、行動は結果的に政治につながっているけど振り切ってパパをしてやろうと思って演じていました。
柄本佑が考えるまひろ&道長のソウルメイトの関係性とは
― 第28回で道長が倒れたときに頭上で倫子(黒木華)と明子(瀧内公美)がやりとりをしているという震え上がる妻同士の展開がありました。今後、まひろも入って道長を巡る3人のバトルがある気がするんですが、当の道長さんはどう捉えていますか?柄本:道長くんは鈍感です、やらかしていますから(笑)。そういった部分にはプライドを持つこともないのが、道長の悪いところでもあるかもしれないけど、まさに三郎的部分だと思って大事にしています。皆さんも観ていただいて「何やってんの」というシーンがあると思いますが、自分なりには楽しみながらやっている部分でもあります。
― これからまひろは妻でもなく妾でもなく「源氏物語」を書いていく仕事のパートナーのような関係に変わっていく中で、柄本さん自身は2人のソウルメイトという関係性をどう思いますか?
柄本:それは最初の頃から変わっていないと言えば変わっていないんですけど、本気を出せる人。愛し合うにしても憎み合うにしても弱みを見せてしまう人。良くも悪くもものすごくいがみ合ったり怒り合ったり、極端な話、本気で決別できたり、中途半端な狭間がない印象です。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
「光る君へ」第32回(8月25日放送)あらすじ
道長(柄本佑)の思惑通り、一条天皇(塩野瑛久)はまひろ(吉高由里子)が書いた物語に興味を示す。そこで道長は、まひろに道長の娘・彰子(見上愛)が暮らす壺へあがり、女房として働きながら執筆することを提案。狙いは、一条天皇が物語の続きを読むため、藤壺へ来ることを増やし、彰子との仲を深めるきっかけにすることだ。まひろは道長の提案に戸惑うが、父・為時(岸谷五朗)に背中を押され…
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