伊藤万理華(C)モデルプレス

伊藤万理華「これが最後の作品でもいいや」衝撃の2日間 乃木坂46デビューから10年…気がついた“表現×コミュニケーション”の関係

2022.12.01 20:00

伊藤万理華(いとう・まりか/26)による展覧会三部作の最終章『MARIKA ITO LIKE A EXHIBITION LIKEA』が、12月2~19日まで渋谷PARCO B1F「GALLERY X BY PARCO」にて開催される。

乃木坂46の1期生としてCDデビューしてから10年、グループを卒業して5年。俳優としてもクリエイターとしても才能を発揮する伊藤。今回モデルプレスのインタビューでは制作過程を振り返るとともに、自身の表現とコミュニケーションの関係について語ってくれた。

  

伊藤万理華『MARIKA ITO LIKE A EXHIBITION LIKEA』。

『MARIKA ITO LIKE A EXHIBITION LIKEA』(C)2022 Marika Ito
伊藤万理華/「LIKEA」(12月20日発売、PARCO出版)書影(C)2022 Marika Ito
同展覧会では、伊藤と今をときめく10組のクリエイターたちが創作した書籍『LIKEA』(12月20日発売/12月2日より会場先行販売)を軸とし、そこから着想を得てさらに発展させた展示を展開。

CEKAIの福田哲丸が空間設計を担当し、劇作家の根本宗子が書籍『LIKEA』に寄稿した脚本をもとにしたラジオドラマのインスタレーション、アーティストNAZEと生花アーティストのアレキサンダージュリアン、A.N.D.西山藍と伊藤万理華本人とのコラボレーションによる美術演出など、書籍の世界観を立体的に表現する。

伊藤万理華の衝撃「これが最後の作品でもいいやって思うぐらい」

伊藤万理華(C)モデルプレス
― まず、今回の展覧会が開催されるまでの経緯を教えて下さい。

伊藤:2年前の展示会が終わったあたりから「次、何をやる?」っていう話を進めていて漠然と「本を作りたい」と言っていました。その時点では具体的な内容は決まっていなかったんですけど、1年前ぐらいからやっと自分がやりたいこと、次に何をしたいかが浮かんできたので、改めて企画を練って作り始めました。

その本を作る過程の中で「これは個展にした方がいいな」という話になって展示会も動き出しました。

― 「自分がやりたいこと」「次に何をしたいか」はどうやって見えてきたのでしょうか?

伊藤:本を作りたいと思ってから1年で色々なことを経験して、具体的に「あっ、これかも」っていうのが何となくパッと浮かんで、相談しに行って。

本を作るにあたって、そういうことの解像度を深くしていく中で「誰とやるのが自分に合ってるのかな?」と考えた時に、その1年で出会った人たちがすごく自分にハマったように感じて、その人たちにオファーしに行きました。

― 2017年「伊藤万理華の脳内博覧会」、2020年「伊藤万理華 EXHIBITION “HOMESICK”」に続いて3度目の展覧会。“三部作の最終章 ”を銘打っていますが、過去2回との違いを上げるとしたら?

伊藤:最初の個展は、自分がアイドルを卒業したタイミングで「自分の好きなものはこれです」って披露した場。2回目は、もっと内面というか自分が悩んでいたところ、コンプレックスを克服したくてそれを利用した展示。

今回はすごく言葉にするのが難しいんですけど、2回目の展示会で、もっと密にモノ創りにゼロから関わることが自分の中で大事だなと感じたんです。今までは目上の人や憧れの人も多かったけど、ここ数年で出会った人は同世代が多く、憧れとかそういう境界線なくゼロから一緒に生み出すことを衝動的にできたらいいなと思っていました。

伊藤万理華/「LIKEA」(12月20日発売、PARCO出版)より(C)2022 Marika Ito
伊藤万理華/「LIKEA」(12月20日発売、PARCO出版)より(C)2022 Marika Ito
― その気持ちを抱いてまずは書籍からですね。

伊藤:最初、春頃に本の表紙にもなっている写真の撮影をして、自分にとってその撮影の2日間がめちゃくちゃ大きくて、想像していなかった以上のものになってしまって…プラスの意味で。こんな経験2度とできないし、私にとってこれが最後の作品でもいいやって思うぐらいのものに、それぐらい気持ちが入っちゃいました。

最初はこの本を作るにあたって「ここ最近」と言っていたんですけど、私にとっては「ここ10年」の話になってくるかもしれないって思っていたら、ちょうど自分がデビューから10年の振り返りをする機会も多かったし、それこそライブ(=乃木坂46の10周年記念ライブ「乃木坂4610th YEAR BIRTHDAY LIVE」)にも出させていただけて、さらに過去の作品で関わった人と出会ったり、必然的な流れがあったので今までの経験を全部踏まえた上で1番残るものにしたいって思いました。

― ルーツは“今”だけではなく、“これまで”にもあるんですね。

伊藤:参加してくださった10組のクリエイターさんそれぞれジャンルがバラバラで個性が出ているんですけど、軸にあるのは最後のインタビューアンケートのページ部分にある「古い記憶の中で1番好きだったものはなんですか?」っていうところに落ち着きました。

10年を振り返る中で「今まで曲げなかったこと」「好きだったもの」を掘り起こす機会がありました。過去を振り返ることってダサいって言う人もいるけど、全然そんなことはない。過去を振り返って、当時の自分が好きだったものとかが今ここに落ち着いて繋がっているって見えたので、この本を手に取った人が過去を振り返るきっかけになるといいなって思っています。

忙しいとそうやって考えることも無いと思いますけど、自分を内観するというか内省する時間は大事だと思うので。この本をめくることで自分と向き合う時間になれれば嬉しいです。

伊藤万理華/「LIKEA」(12月20日発売、PARCO出版)より(C)2022 Marika Ito

伊藤万理華、実兄との対談は「すごく重要」

伊藤万理華(C)モデルプレス
― 『LIKEA』の表紙のお話もありましたが、中面でも色々なスタイリング、さらにはヘアスタイルも披露していますね。

伊藤:髪もすごく変わっています。2日間で撮ったんですけど、1日目は黒髪で、撮影が終わって夜に美容院に行ってブリーチして朝を迎え、その状態から色を入れて行きました。この本のために毛根がやられましたけど(笑)、すごく自分がやってみたかったことだったんです。

― 写真からも現場の熱が伝わってきます。

伊藤:カラーも美容室ではなくて、(撮影していた)会議室の横にある小さいキッチンみたいなところでやっていたんです。そういう過程を含めて面白がってもらうこと、私は物創りの過程が好きだから、私以外の人やスタッフさんが写っていることが大事だと思うんです。

伊藤万理華(C)モデルプレス
― 本の中ではお兄さんとの対談もありますよね?

伊藤:「出てほしい」ってオファーしました。

― オファーを受けてお兄さんは何と?

伊藤:「いいよ」「マジやるの?」って。

― すんなり受けてくれたんですね。お兄さんの自宅での対談はいかがでしたか?

伊藤:どうなんですかね…家族利用しすぎてるなって(笑)。でも、この対談は本の中ですごく重要なんです。

私の好きなものを掘り下げた時、昔から身近にあるカルチャーが音楽で、実家で聞いていた音楽や聞き馴染みのある音楽を今になって勧められるんです。「昔から知っていた曲だな」「すごく馴染みのある曲だな」っていう気づきがあって、だとしたらお兄ちゃんと当時どんな曲を聞いて育ったっけ?っていう振り返りがすごく楽しくなるかなと思ってお願いしました。

あと、お兄ちゃんが音楽関係の仕事をしていて、雑誌の企画ではできない、この本だから出来るものにしたかったので入れてもらいました。

伊藤万理華(C)モデルプレス

伊藤万理華の表現×コミュニケーション 10年経って気づいたこと

伊藤万理華(C)モデルプレス
― ここまで書籍・展示会のお話を聞いてきましたが、伊藤さんは他のクリエイティブや演技のお仕事もしていて、アウトプットの連続かと思います。そんな伊藤さんのインプット、作品創りの準備はどうなっているのでしょうか?

伊藤:今回だと同世代の人がやっているポップアップにたまたま行った時に「私はこういう仕事をしていて…」「俺はこういうことやってるんだ…」って会話が生まれて、今まで趣味で色んなギャラリーに行ってはいましたが、そういうコミュニケーションをとったことも、友だちになったのも初めてでした。

あと、偶然ギャラリーに来ていて出会った人たちが語らっているところにすごく感動して、その時の自分を俯瞰して見て「私はもしかしたらこういう風に生まれる空間とか、コミュニケーションが好きなのかもしれない」って思いもあり本にそういうページを作りました。

― そういった人と関わり方、コミュニケーションの取り方は昔からすんなり出来る方でしたか?

伊藤:全然上手くなくて…。普通の会話だとコミュニケーションの取り方が難しくて、どちらかというと言語化することが難しいというか、語彙力がないというか(笑)。語彙力が無い分、小さい頃は身振り手振りやダンスとかでやっていて、伝えたいことはあるけど上手く伝えられないのがもどかしかったです。

でも、アイドルをやって、演じるという職業をやる上で、色んなストーリーで自分を重ねることができて、そこで自分を消化できました。それでコミュニケーションが上手く取れるようになったか分かりませんが、何かに乗せてコミュニケーションを取る、あとはモノ創りを通してやっていくことは自分の性に合っているんだろうなと10年やって気づきました。

― 表現がコミュニケーションに繋がり、コミュニケーションもまた表現に繋がっているんですね。

伊藤:楽しいことも辛いことも全部無駄じゃなかったって思いたいんです。だから、そう思うために何かモノ創りで消化しないと、ただ会話するだけ、ただ1人で引きこもっているだけ、ではしんどいし。自分がしんどくならないために自分でやっているのかなって思いました。

伊藤万理華(C)2022 Marika Ito
伊藤万理華/「LIKEA」(12月20日発売、PARCO出版)より(C)2022 Marika Ito

伊藤万理華が悲しみを乗り越えたエピソード

伊藤万理華(C)モデルプレス
― モデルプレスの読者の中には今、さまざまな不安を抱えている読者がいて、そういった方々に向けて皆さんの人生の中で「悲しみを乗り越えたエピソード」をお伺いしています。今の伊藤さんのお話も通ずるものがあるかと思いますが、伊藤さんの「悲しみを乗り越えたエピソード」をお聞きしたいです。

伊藤:何かに熱中することです。我を忘れて、何かに1つのものに熱中することが1番時間が早く過ぎるし、1番その時間が濃密だし、得られることも大きい。時間が経ってるうちに悲しかったことを忘れていると思います。

あと、熱中してる期間に悲しみが怒りに変わって、自分がその怒りをぶつけられる対象物を作ることがすごく大事かもしれないです。人に当たるのは絶対良くないけど、自分のこの空間だけは自由にできるんだっていう場所さえ作れば、それは表現に繋がるから。私はそうやって乗り越えてきました。

伊藤万理華(C)モデルプレス
伊藤万理華(C)モデルプレス

伊藤万理華の夢を叶える秘訣

伊藤万理華(C)モデルプレス
― モデルプレス読者の中には今、夢を追いかけている読者もたくさんいます。そういった読者に向けて伊藤さんの「夢を叶える秘訣」を教えてください。

伊藤:前回取材していただいた時に話した「自分から行動して、さらに良い意味で人を巻き込んでいくことも大事だと思います」は変わっていないですが、良い意味で人を巻き込むのはなかなか大変で、自分自身もっと上手にならなきゃなって思いました。今回の制作段階でも全然上手く出来ていた気がしなくて。たくさん、迷惑をおかけしました…。

出会った人、モノとめちゃくちゃ共鳴した瞬間って誰しもあると思うんです。その瞬間を大事にすると、それが次の夢になる。例えば「なんかこんなに話が合う人は初めてかもしれない」「こういうことやりたい」って繋がって、じゃあそれを一緒に叶えるためにはどうしたらいいんだろうと考えることが出来るから。私は1人で考えるより、人との出会いでモノ創りが生まれると思っているので、そこを疎かにしないことが大切だと思います。

― 例え一瞬でも、出会いの共鳴はしっかり留めたほうがいいと。

伊藤:その一瞬を信じた方がいいです。その一瞬は替えがきかないので「え、これ嘘かな…」みたいに疑っちゃう人もいると思うんですけど、絶対そんなことなくて「今、高揚感があったな」「今までにない気持ちになった」って思った気持ちを大切にすることが1番次に繋がると思います。

― ありがとうございました。

(modelpress編集部)

『MARIKA ITO LIKE A EXHIBITION LIKEA 』概要

伊藤万理華/「LIKEA」(12月20日発売、PARCO出版)より(C)2022 Marika Ito
伊藤万理華/「LIKEA」(12月20日発売、PARCO出版)より(C)2022 Marika Ito
会期:2022年12月2日~19日

会場:渋谷PARCO B1F 「GALLERY X BY PARCO」(東京都渋谷区宇田川町15−1)

営業時間:11時~21時 ※入場は閉場時間の30分前まで

参加クリエイター:TEPPEI(スタイリスト)/田中雅也(フォトグラファー)森岡祐介(ヘアスタイリスト)/田口麻美(メイクアップアーティスト)/根本宗子(劇作家・演出家)/井口弘史(グラフィックデザイナー)/畑ユリエ(グラフィックデザイナー)/ほか

※ほかチケット等の詳細は公式サイトに掲載

【伊藤万理華からメッセージ】

伊藤万理華(C)モデルプレス
伊藤万理華(C)モデルプレス
書籍があるところから始まって展示もやることになったのですが、ただ本の展示ではなくて、この本から構想を練ったうえで、過去の振り返りを深掘りしたりしているところもあります。

本に根本(宗子)さんのページがあるんですけど、そこで書き下ろして頂いたものが展示会ではラジオドラマとして音で楽しめたり、見ること聞くことで体験ができる空間になっています。実際に触れることで本をより重厚に感じられると思うので、体験して空間を感じ取ってほしいです。

伊藤万理華プロフィール

伊藤万理華(C)モデルプレス
2011年から乃木坂46一期生メンバーとして活動し、17年に同グループを卒業。現在は俳優として映画・ドラマ・舞台で活躍する一方、PARCO展「伊藤万理華の脳内博覧会」(2017)、「HOMESICK」(2020)を開催するなど、クリエイターとしての才能を発揮。

2021年は地上波連続ドラマ初主演「お耳に合いましたら。」(TX)に出演。初主演映画『サマーフィルムにのって』(松本壮史監督)ではTAMA 映画賞にて最優秀新進女優賞を、日本映画批評家大賞にて新人女優賞を受賞。待機作に今冬公開予定の映画『そばかす』(玉田真也監督)がある。

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