広瀬すず、松坂桃李を思い続けた1年間「桃李さんの存在が自分の中にあり続けるように」2人の“共通言語”だけを頼りに<「流浪の月」インタビュー>
モデルプレスのオリジナル企画「今月のカバーモデル」で2022年5月のカバーモデルをつとめたのは、13日公開の映画「流浪の月(るろうのつき)」に出演する広瀬すず(ひろせ・すず/23)。2016年の「怒り」以来となる李相日監督との再タッグ、オファーを受けた時期にはたまたまW主演の松坂桃李と別作品で共演していたという巡り合わせ――そんないくつもの縁が重なった同作に、彼女は悩みながらもただひたむきに向き合い続けた。
広瀬すず&松坂桃李W主演「流浪の月」
広瀬と松坂が紡ぐ「流浪の月」は、2020年本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1位(日販単行本フィクション部門、トーハン単行本文芸書部門)に輝いた凪良ゆうによる傑作小説が原作。10歳の時に誘拐事件の“被害女児”とされ、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗(かないさらさ)を広瀬が、その事件の“加害者”とされた当時19歳の青年・佐伯文(さえきふみ)を松坂が演じる。また、事件から15年経った現在の更紗の恋人・亮を横浜流星が、癒えない心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみを多部未華子が演じている。
広瀬すず、松坂桃李との“共通言語”だけを頼りに
撮影開始早々、広瀬は壁にぶつかった。10歳の更紗を演じたのは白鳥玉季で、広瀬自身が更紗と文がともに生活していた期間を経験したわけではないため、その“過去”の部分も演じていた松坂との間に温度差を感じてしまったという。「初日に玉季ちゃんのいる現場の見学をさせてもらったのですが、直接話を聞いたり映像を見ることはできなくて。なので15年前の2人が一緒にいた時間を体感している桃李さんと、それを台本から想像することしかできない私の間に、どうしても温度差を感じてしまいました。
それはやっぱり監督にも伝わっていて、その悩みを話した時に『その温度差を感じるのは何なんだろうと思っていたんだよね』と言われてしまって。『じゃあ桃李くんに聞いてみれば?』と提案されて、一緒にいた期間はどんな感じだったのか、どういう時間を過ごして、文は更紗といるとどんな気持ちになるのか…桃李さんに撮影の合間に聞いて、そこからまた想像を膨らませました。
桃李さんから教えてもらったのは、15年前の文と更紗に共通するものは『すごく自由だった、幸せだった』ということ。なので、そこに15年ぶりの再会で感じた安心感など自分が思う感情をプラスして演じました。やり切れたかどうかわからないですが、共通言語の『自由』『幸せ』、それだけを頼りにしてやっていました」
広瀬すずが語る松坂桃李の凄さ
広瀬にとっては、同作への出演が決まった時期も役作りに大きな影響を及ぼした。「ちょうどこの映画の出演が決まった時に『いのちの停車場』(2021年)という映画で桃李さんと現場が一緒だったので、そこから2人の間柄を意識することができました。『流浪の月』の撮影まで1年間あったので、まずは1年間桃李さんの存在が自分の中にあり続けるようにしようと思ってみたり。時間をかけて人を思うというのはなかなか役作りでもできないことなので、その時間があったことは自分の中ですごく大きかったです」
松坂は文としての身体をつくるため大幅に減量し、その姿は世間で騒がれるほどだった。そんな彼の姿を間近で見ていた広瀬は「更紗としては、ただ『文だった』。痩せている感じも、更紗はその文の姿しか知らないから『文に会えた』という感覚が大きかったです」と振り返る。
「でも、桃李さんの人間じゃないみたいなところまでいけるモチベーション、役への向き合い方は『何者…?』という感じです(笑)。なんというか…不思議なんですよね、桃李さんって。あそこまで役に情熱を注げる人はいないだろうなと思うくらい凄かったです」
原作にもある、文の“空洞のような瞳”を松坂は見事に表現。まるで全てを見透かされるようなあの目を体感した広瀬は、更紗としてどう受け取ったのか。
「更紗は文に嘘をつく必要がないんです。『言わなくてもわかってくれる人間なんて存在しない』と思いながら生き続けてきたけど、文はわかってくれるんですよね。それは文の目を見ればわかるし、それがある意味安心に繋がっている。同じものを求めているような目をしているのはかなり印象的でした」
広瀬すず、原作を毎日現場に持参
広瀬は撮影中、毎日かかさず原作本を現場に持参した。これまで数々の実写化作品を演じてきた中で、それは初めてのことだったという。「更紗の感情、音にしない言葉が書かれていて、それがヒントになるのかなと思って。原作のままやる必要もないし、ある意味肌感覚として感じたものに頼った方が生っぽくできるかもしれない。李さんの作品だし、言葉通りにやらない方がいいかもしれない。でもどうしてもわからない時は、原作を読んでヒントをもらいました」
シリアスなテーマを扱った同作だが、広瀬は「私が読んだ本の中で過去一読みやすかった」と話す。
「進んでいく時間の流れに合わせて、文と更紗の感情に納得できたというか、疑問を抱くことのないまま読み終わったんですよね。映画を観てくださる方や読者の方によって作品の答えは違うと思いますが、自分は更紗側の立場で読んだからというのもあるかもしれないです。2人の関係に違和感がなく読めたし、『自分だったらこうだな』という感情もなく、更紗と文の気持ちを全部受け止めることしかなかった。映画でもそういうふうになれたらいいなと思いましたし、この言い方しかできないですが、“そういう2人”なんだなと思いました」
広瀬すずが思う“更紗”
広瀬が感じた更紗の第一印象は「粘り強く頑固な子」。しかし、「マグマみたいな真っ赤な塊が埋まっているんだろうなと思ったのですが、私は最初その部分をフィーチャーしすぎてしまって、色々な人に『そういう更紗じゃない気がする』と言われていました」と更紗はそれだけでは表せない部分もあったという。「更紗は、周りの人から見ると普通の人なんです。事件と関わりがあった子だったというだけで、普通に生きようとしている。自ら流れに身を任せに行くところもあったり、流れた方がラクな瞬間もあったり。多分、我を強く出して生きれば生きるほどつらいんですよね。我を出すことで自分のことも嫌になるし、周りの人のこともさらに嫌になってしまうんだと思います。
だからお芝居の中で意識していたのは、ある意味よく笑っているというか、当たり前のように愛想笑いをする人。嫌味なく笑って、それでマインドコントロールをしているような人なんだろうなと途中で気付きました。監督と話し合いながらたどり着いたのがそんな更紗で、だから真っ赤な塊はあるけれども普通の人、それがきっと更紗なんだろうなと思います」
「私、かわいそうな子じゃないよ」の意味
劇中で印象的なのが、更紗が亮に向かって放つ「私、かわいそうな子じゃないよ」というセリフ。一度だけでないその言葉について、広瀬は「そのままの意味で捉えました」と語る。「亮くんに関して更紗は『自分のことを好きになってくれる人と一緒なら自分も幸せになれる』みたいな、『なるようになる』と思い続けながら生きてきた感覚から来る期待みたいなのも多少なりともあると思います。
だから亮くんといる選択肢を消さずに『かわいそうな人じゃなくて普通の人なんだよ』と伝えているだけなんです。更紗の行動力が凄いと思ったのが、この言葉である意味亮くんの意見を否定しているところ。そのセリフから2人の関係を正そうとしているというのを感じました。でもこれを言うことはすごく勇気のいることなので、そういう行為をしながら言うとか、どこかで分散させているからこそ言えるのかなと、演じながら思いました。
普通に幸せになりたいわけではないけれども、どさくさに紛れた方が生きやすいというか、そこに確固たる意志みたいなものを感じました。なのでやっぱり、この言葉は『亮くんならもうちょっと理解してくれるんじゃないかな』という期待でもあると思っていました。理解してもらえるかもという可能性があった方が我慢できるというか、その方がまだ一緒にいられる、という感じに近いのかな。自分自身を立て直す言葉だと思いました」
広瀬すず、李相日監督との絆
「怒り」撮影時には、李監督から「この映画壊す気?」という厳しい言葉をかけられたこともあった広瀬。しかし「流浪の月」では「今回はそんなストレートに言われることはなく、現場でみんなで『監督、絶対マイルドになったよね』と話していました(笑)」と6年前からの変化があったそう。「でも、現場の雰囲気が『怒り』の時とは全然違いましたし、私自身も大人になったりして、色々なことが重なってそういう環境になったんだと思います。今回私はずっとお芝居がふわふわしているのが抜けなくて、自分でもどうしたらいいかわからなくて苦しかったのですが、監督もそんな私を見てどうしたらいいのかわからなかったみたいです。それは後から知ったのですが、もしかしたらそこでストレートに言われすぎていたら私の心はパリンと割れてしまったかもしれないので、それを踏まえてマイルドだったのかなとも思いました」
最後に彼女は、李監督との深い絆を感じさせるエピソードも語ってくれた。
「1度コロナで撮影が止まったことがあったのですが、その時に監督の家に行って色々な話をたくさんしました。『残りの撮影はどうするの?大丈夫か?』みたいな(笑)。撮影中にも1回『ご飯行くぞ』と言われて、その時は『楽しい?』と聞かれました。ある意味心配されている感じ。撮影が終わってからも色々声をかけてくれました」
4月13日に行われた完成披露試写会で“宿命の相手”を聞かれた際には、互いの存在が思い浮かんだと話していた2人。李監督と本音でぶつかり合える関係だからこそ、そして松坂らキャスト陣との信頼関係があったからこそ、広瀬は更紗を生き切ることができたのだろう。スクリーンの中には、確かに“更紗がいた”。そう感じさせる彼女の表情、声色、仕草…一瞬一瞬を見逃さないでほしい。
(modelpress編集部)
広瀬すず(ひろせ・すず)プロフィール
1998年6月19日生まれ。静岡県出身。2012年モデルとしてデビュー後、CM、ドラマ出演と活動の幅を広げる。主な出演作に、映画「海街diary」(2015年/第39回日本アカデミー賞 新人俳優賞)、「ちはやふる」シリーズ(2016・2018年)、「怒り」(2016年)、「三度目の殺人」(2017年/第41回日本アカデミー賞 最優秀助演女優賞)、「いのちの停車場」(2021年)、連続テレビ小説「なつぞら」(NHK/2019年)、ドラマ「anone」(日本テレビ系/2018年)、「ネメシス」(日本テレビ系/2021年)など。LOUIS VUITTONのアンバサダーをつとめるなど、ファッションモデルとしても活躍している。撮影クレジット
ヘアメイク:奥平正芳スタイリスト:丸山晃
衣装:全てスタイリスト私物
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