恒松祐里(C)モデルプレス

「全裸監督」新ヒロインの葛藤と決断 恒松祐里「本当に後悔はない」と語るまでの道筋<モデルプレスインタビュー>

2021.06.24 17:00

Netflixオリジナルシリーズ「全裸監督 シーズン2」(6月24日より全世界独占配信)で乃木真梨子を演じる恒松祐里(つねまつ・ゆり/22)。衝撃作のシーズン2のヒロイン役、ラブシーンへの挑戦…大きなプレッシャーをどう乗り越えたのか?数々の葛藤を経て「本当に後悔はない」と言い切るまでの道筋をたどるインタビュー。

  

恒松祐里が感じた乃木真梨子を演じる理由

山田孝之演じる村西とおるの鮮烈な情熱、森田望智演じる黒木香の艶やかなヒロイン感…キャスト陣の渾身の熱演と痛快なストーリーが一大旋風を巻き起こした「全裸監督」。シーズン2では、村西にとって新たな運命の女性となる乃木真梨子が登場する。

子役から活動を始め、映画『凪待ち』(19)、『アイネクライネナハトムジーク』(19)、『スパイの妻』(20)、そして2021年度前期の連続テレビ小説『おかえりモネ』など数々の作品に出演してきた恒松でも、今回のオファーには驚きが強かったという。

「『え?なんで私なんだろう』というのが最初の素直な気持ちでした。でも、仮の台本を読んでいくにつれてなんとなく理由が分かったというか、理解出来てきて『この役をやってみたいな』と思いました」。

その理由は、乃木真梨子という人物像にあった。

「シーズン1の黒木香とはまた違った女性像で、乃木真梨子という女性は人の側に居ること、人を支えることが得意な役なのかなと感じたんです。『乃木真梨子はどういう役か?』と聞かれたら、包容力があって、女性らしいしたたかさがあって、人を愛する心をとても持っている方。台本を見た時、自分にもそういう要素があるのかなと思って納得しました」。

「全裸監督」出演の決断の裏に家族と今の世界

無論、初めてとなるラブシーン挑戦もすぐに飲み込めた訳ではなく悩む時間があった。

「ラブシーンがあるということで悩んだ時に家族に相談しました。芸術が好きな家族なので『良いんじゃない?』と言ってくれてすごく背中を押してくれたんですけど、それでも色々考えていくにつれて私の中には葛藤が生まれました。今の家族には承諾を得ているけど、いつか自分に新しい家族が出来て、旦那さんが出来て子どもが生まれても、今彼らにはまだ意見を聞くことができない。もし子どもが大きくなった時、私の経験のせいで嫌な目に遭わないかなと考えてしまって心苦しくなってしまいました」。

「最終的に決断出来たのは、コロナ禍で、明日自分が好きな仕事が出来るか分からない世界になって今、とても素敵なお話を頂いてやってみたいなって思う役がある中で、これを手放したら絶対後悔するなと感じたからです。いつお芝居が出来なくなるか分からない状況でやっぱり後悔したくないなという気持ちが勝ってオファーを受けました」。

将来の家族を考えて悩む“人を愛する心”、新しい世界に飛び込む心…彼女が感じた“演じる理由”の通り、カメラが回る前から既に乃木真梨子と重なりだしていたのかもしれない。

恒松祐里、ラブシーン挑戦で見えた難しさ

現場に入ってからは次の悩みがやってきた。個性あふれるキャラクターたちとの対峙だ。何色にも染まっていない乃木がヒロインとして色濃い登場人物の中でどう輝きを放つか、たどりついた答えは“ありのまま”だった。

「乃木真梨子のイメージカラーが白なんです。『何もまとわないありのままの姿が綺麗だ』って村西さんに言ってもらえるぐらい、何もしない状態が1番良い状態という設定だったんです。だから私自身もキャラを作りすぎず、掴みどころが無いけど乃木らしさをあまり味付けをしていない役作りをしていきました」。

初めて体をあわせるシーンに恐怖心がなかったというものの、どうすればいいのか分からない『?』を抱えてたままスタートを切った結果、また新しい世界が広がっていたという。

「実際にラブシーンをやってみると本当に難しくて、振りが決まっていてその中でお芝居をしていくものなのでアクションシーンみたいでした。でも3ヶ月ぐらい練習する期間があるアクションシーンとは違って、こういうセンシティブなシーンはその日にリハーサルして『はい、本番!』って感じだったので、まだ振り付けが入っていない状況というか。撮影が終わった後に感じたことは、ジャグリングのボールを30個くらい頑張って落とさないように回し続けているみたいな(笑)。カットがかかるまで落ちてしまっても気にせず続けるみたいなイメージでした。私の中ではそんなにまだやり慣れていないものですし、余裕がなくて顔の表情だったりとか体の動かし方だったりとか、すごく難しいなっていうのが1番の感想です」。

恒松祐里「全く覚えてなくて…(笑)」

ここまで悩み、もがいていると誰かに、ことさら“「全裸監督」の先輩”である森田望智に相談してみたくなると思ったが恒松は違った。恒松が向ける森田への意識は、乃木が黒木に向けるものからはみ出さない。

「乃木は黒木を意識しているので、私も撮影現場で森田さんを意識していたんです。ある意味ライバル視じゃないですけど、劇中でも乃木にとって1番の大きな壁は黒木なので、その壁を越えられるか越えられないか、それともまた別の違う壁を立てるべきなのかとすごく葛藤していました。現場でも黒木の壁を感じながら撮影していたので、そのプライドもあって相談はしなかったかもしれないです」。

「最近思い出したんですけど、ラブシーンがある日に私が黒木っぽい黒のワンピースを私服で着てきて、皆に『黒木さんっぽいね』って言われて『今日は黒木さんを意識してきたんです』って言っていたみたいです。あと、私が森田さんの肩を揉んで、森田さんが『あ、びっくりした!』みたいなことを言ったら、私が『普段からイラつかせようと思って』って言っていたようで、最近山田さんがそのことを話して『すごいな』って仰っていたようです。私自身は全く覚えてなくて…(笑)。でも、その時は乃木になりきっていいたのかもしれないなって思いましたね(笑)」。

「本当に後悔はない」自信に繋がった「全裸監督」

そして、1人の女優として、ヒロインとしての葛藤を繰り返し、乗り越えて作り上げた作品に「とても良い作品になっていると思います」と胸を張った。「本当に後悔はないですし、この作品をきっかけにまた色んな方に知っていただく良い機会だなとも思うので配信が楽しみです」。

最後に「未知の世界に飛び込んだことで得た変化と成長」を聞いてみると、「台本も全部完成している状態で役に取り組めたこと、すごく長い期間をかけて撮ってもらったことはなかなか無い贅沢な時間だったので、それを出来たっていうのは役作りをやっていく上でまた新たな発見にもなりました。最近他の現場で、前よりも自分に1つ自信がついたというか、現場での居方がまた1つなにか落ち着きが出たとように思います。本当に挑戦して良かった作品ですし、自分にまた自信が持てるようになった作品でもあります」。

(modelpress編集部)

スタイリスト・武久真理江
ヘアメイク・安海督曜

恒松祐里プロフィール

1998年10月9日生まれ、東京都出身。身長158.5cm、趣味は羊毛フェルト。2005年に日本テレビ「瑠璃の島」で子役としてデビュー。映画「くちびるに歌を」、「散歩する侵略者」、「虹色デイズ」から、「スパイの妻」、「タイトル、拒絶」など、数多くのドラマや映画に出演。去年は、映画「凪待ち」で、おおさかシネマフェスティバル2020新人女優賞を獲得。また、現在放送中のNHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」に主人公・百音の同級生役、野村明日美として出演中。
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