向井理「着飾る恋」葉山のテーマは「あざとくない」川口春奈とのネクタイシーン秘話も<インタビュー>
2021.06.08 06:00
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長年の片想いの相手が突然姿を消した―――。TBS系火曜ドラマ「着飾る恋には理由があって」(毎週火曜よる10時~)で俳優の向井理(むかい・おさむ/39)が演じる葉山祥吾が話題だ。第1話から大きな衝撃を与え、回想シーンでの出演が続いたにもかかわらず、彼の虜になる視聴者が続出している理由とは。
「着飾る恋」葉山社長に夢中になる視聴者たち
本作は、着飾るという鎧を脱ぎ捨て自分らしく生きる姿を描き、ルームシェアから始まる“うちキュン”ラブストーリー。「アンナチュラル」(2018年)や「MIU404」(2020年)などを手掛けたプロデューサー・新井順子氏と監督・塚原あゆ子氏が描くラブコメには、放送前から大きな注目が寄せられていた。インテリアメーカー「el Arco Iris」の広報課社員・真柴くるみを川口春奈、自由気ままな料理人・藤野駿を横浜流星が演じているが、向井演じる葉山は「el Arco Iris」の社長で真柴が長年好意を寄せる存在。しかし、第1話で突然社長を退任し姿を消してしまう。
第5話のラストでついに真柴と再会するものの、葉山の出演はほとんどが回想シーン。ところが、真柴が駿と距離を縮めていくほどに「社長早く帰ってきて!!」「葉山さんはどこにいるの…」「社長が忘れられない」とSNS上では“葉山ロス”の声も続々。まさに、視聴者の心を掴んで離さないキャラクターだ。
キスやハグなど、真柴にストレートな愛情表現をする駿に対して、「ずるい!」と思わせるようなさりげない言動・行動で真柴の心を惑わせる葉山。不思議な魅力を放つキャラクターを、向井はどのように作り出したのか―――。今回は、役作り&撮影秘話をたっぷりと語ってもらった。
向井理も掴めない葉山の人物像
― 第6話までは回想シーンが多く、SNS上では「早く葉山さんに登場してほしい」という声も上がっていましたが、反響は届いていますか?向井:新井プロデューサーからそのような声があることは聞いていました。でも僕は台本通りやっているだけなので…(笑)。
― ご自身では、葉山をどのような人物だと捉えて演じていらっしゃいますか?
向井:僕も、未だによく分かってないところが多いです(笑)。ですが、仕事ではインテリアやSDGsの話題も出てきたように、そういうやらなきゃいけないものに対してはすごく熱心に取り組む人です。それによって周りを巻き込んだり、周りが見えなくなってしまうこともありますが…。
特にかっこいいセリフや仕草があるわけでもないので「ここがあるから素敵」というものもない。ただなんとなく自然と人が付いてくるタイプなんですよね。新井プロデューサーからは「自然体で」とか「ちょっと抜けてる感じでやってほしい」と言われています。すごく抽象的なオーダーなので難しさもありますが、日々試行錯誤しながらやっている感じです。
― そんな葉山に、ご自身が共感する点はありますか?
向井:ないです(笑)。勝手に会社辞めたらダメだし、役職ある人なのに辞表も書いてないですからね。情熱を持って何かに取り組む姿勢はすごく素敵だなと思いますが、立場を考えると自分だったら違う行動をするかなと思ったり…。むしろ、共感というより興味がありますね。「どういう人なんだろうな」と思いながら演じていますし、興味を持っているからこそ色々なアイデアが浮かんでくるというのもあります。
― 出演しているシーンが短くても、どこかずっと視聴者の心に残っているというのが葉山の特徴だと思うのですが、そのようなキャラクターにするために意識したことはありますか?
向井:出演シーンが少なめなので、「大丈夫かな」という不安もありつつ、「忘れられないと良いな」とは思っていましたが、回想シーンばかりということもあり、僕が個人的に工夫することはほとんどなかったです。本当にたまたま、このように愛されるキャラクターになったんだと思います。
葉山のテーマは「あざとくない」ネクタイシーン秘話も
― 無意識の葉山さんの行動や言動によって真柴がキュンとしてしまう場面もありますが、そのような胸キュンシーンを演じるにあたって気をつけていることはありますか?向井:あまり意識しないことです。決めに行ったり置きに行ったりするとあざとくなってしまうので…。今回、僕としては「あざとくない」というのを葉山の1つのテーマにしているんです。なので、あざとくならないようにナチュラルにやることを心がけています。
― 真柴と葉山は長い付き合いで、互いに信頼感もありますが、そのような関係性を作るために川口さんと何か話し合いはされたのでしょうか?
向井:特に「こうしよう」という話し合いがあったわけではないです。川口さんとはほとんど初めましてだったので、徐々に会話をしていく感じでした。最近は何気ない話や日常会話もするようになって、共演シーンを通してすごく打ち解けることが出来ました。
― 真柴が葉山のネクタイを結ぶシーンが印象的ですが、あのシーンの裏話やこだわりはありますか?
向井:僕は結ばれるだけなので、なるべく無防備な状態でいた方が面白いのかなと。クランクインした日にそのシーンを撮影しましたが、なんとなく手を上げたら監督が「じゃあそれで!」と言ってくださって。ですが、川口さんはご自身の愛犬で結び方を練習したと言っていました(笑)。影で努力をなさっていたみたいです。
川口春奈&横浜流星らとの撮影エピソード
― 第6話では葉山がシェアハウスに仲間入りしましたが、共演者の方の印象を教えて下さい。向井:川口さんはお若いのにすごく芯がある方です。ですが、肩肘張っているわけではなく自然体で、素敵な女優さんだなと思っています。趣味や好きなものが似ているので、そういう話で盛り上がっています。
― 趣味のお話というのは?
向井:食べ物の話が多いです。「あそこ美味しいよ」とか「どこか良いお店知りませんか?」とか、昨日も夜中まで撮影だったんですが、そのような話をしていました。今後も食事するシーンがありますが、料理も本当に美味しいので、自然と「あのお店行った?」とかいう話になりますね。
― 他の共演者の方の印象はいかがですか?
向井:今回は初めて共演する方が多いんです。横浜くんも初めてだったのですが、すごく熱意のある青年で、一緒に演技をしていて気持ちが良いです。今回はこのような役柄なのであまり仲良くしすぎるのも良くないのかなと思いますが、色々なことを相談に来てくれたり、「これはこういう風に気をつけてみては」とアドバイスしたり、違う作品の話もしたりとか…。向上心もすごくあって、信頼できる共演者だなと感じています。
丸山(隆平)くんは、一緒にお芝居をするのは初めてでしたが、前から知っていたので1番最初に打ち解けられました。周りをよく見ている方で、裏でしっかり支えてくれています。慣れてきたら冗談を言って現場を和ませたり、本当にテレビのキャラクターの延長線上にいる感じで、すごくやりやすいです。
中村(アン)さんは作品でご一緒したことはあるんですが、共演シーンは今回が初めてでした。普段はサバサバしていて、そういう意味では川口さんと似ているかな。2人はすごく仲が良いんです。中村さんは話しかけてくれることも多くて、皆で一緒に笑っています。
夏川さんはお会いしたのも初めてです。ですが、1番場を盛り上げてくださっていて、先輩がそのように自然体でいてくださると、後輩たちはすごくやりやすいです。
先輩・後輩関係なく和やかな現場で、その中心にはこうじ(犬)がいて…すごく良いバランスなんです。気を遣わずにいられるので、皆それぞれ話したい時に話して、考え事をしたい時は考えて、それぞれが邪魔するわけでも拒絶するわけでもなく、本当にドラマの通り居心地が良いです。
葉山の醍醐味「失敗も含めて1人の人間として演じられる」
― 「きみが心に棲みついた」(2018年)、「わたし、定時で帰ります。」(2019年)以来の火曜22時ドラマですが、この枠ならではの特徴はありますか?向井:たまたまかもしれないですが、女性が多いですね(笑)。監督や出演者の方によって雰囲気は違うと思いますが、やはりドラマのターゲット的にも、様々な女性の意見があってしかるべきだと思っています。塚原監督はグイグイ引っ張ってくださる方なので、今回は本当にそれに身を任せて、演出していただいているという感じです。
また、塚原監督は良い意味で予定調和を嫌われる方なので、逆に自然体でいられます。言い方が難しいのですが、色々考えた時に、僕は「すごくラクな役だな」と思っていて。それは簡単という意味ではなく、例えば、セリフを綺麗に言うことにこだわらないとか、突発的に起きたことがオンエアで使われたりとか。色々ノッキングしながら試すことが出来て、すごくリアリティを持ってドラマに昇華していただいています。失敗を恐れず、失敗も含めて1人の人間として演じられるというのは醍醐味だなと感じますね。
― 突発的に起きたことで印象的だったことはありますか?
向井:こうじの動きでしょうか。本番でしかやらない動きもたまにあったりして、それが見事にシーンにハマっていることもあるんです。皆さんはオンエアの1回しかご覧になれないと思いますが、僕らはテストやドライで何度も見ているので、OKテイクでの奇跡的な動きを見ると、こうじはオスの役ですが実際は女の子なので「女優だね~!」と皆で話しています(笑)。
― 白いパーカー姿も話題になっていましたが、ファッションに関してこだわりはありますか?
向井:新井プロデューサーとは、直近だと「わたし、定時で帰ります。」でご一緒したのですが、その時、1回目の衣装合わせで決めたものが全部なしになったんです。結局パーカーなどラフな服を取り入れたのですが、それが視聴者からの反響も大きかったそうで、今回もそうなったのかもしれません(笑)。
衣装部の担当もずっと前から知っている方なので、「葉山はこんな感じじゃないか」と一緒に決めていますね。袖をまくったりとか、細かな工夫は僕自身でやることもあります。今回のパーカーに関しては、衣装部が力を入れて“力を入れていないような服”にするよう頑張ってくれています(笑)。
― 葉山を演じる上で、ちょっとした仕草やフックになるような演出はありますか?
向井:ちょこちょこ取り入れています。例えば、こうじと散歩に行く時に道を間違えたりとか。あまりやりすぎてしまうとあざとくなるので監督と相談しながらですが、思わず出てしまったものが「それ採用!」となることもありました。本当は狙わない方が良いので、そこのバランスを見ながらやっています。
― あざとくならないようにどのような工夫をされているのでしょうか?
向井:アドリブに見えるようにやる感じです。僕は普段あまりアドリブはしませんが、今回は「上手く出来なくてもいいや」という気持ちでやっています。何かが起こった瞬間に、それをちゃんと捉えてリアクションするのは日常では当たり前ですが、ドラマではどうしても「段取り良く、テンポ良く」という思考になりがちなんです。ですが、今回はその場で起きたことを大切にするのを優先していますし、塚原監督もそのような演出をされています。
台本はもちろん覚えますが、あまり台本に頼りすぎないようにしています。現場で何が起こるかは分からないので、柔軟に対応しています。
― ありがとうございました。今後の展開も楽しみにしています。
誰もが憧れる大人の男性でありながら、誰もが親近感を持つ無邪気さも兼ね備えた葉山。愛されるキャラクターになったのは「本当にたまたま」だと向井は語ったが、彼が演じたからこそここまで魅力的な人物になったように思う。真柴&駿との三角関係はさらに加速する予感。葉山が迎える結末にも注目だ。(modelpress編集部)
向井理(むかい・おさむ)プロフィール
1982年2月7日生まれ、神奈川県出身。2006年に俳優デビュー。主な出演作に映画「いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~」(2017年)、「ザ・ファブル」(2019年)、NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」(2010年)、ドラマ「S ―最後の警官―」(TBS系/2014年)、「信長協奏曲」(フジテレビ系/2014年)、「きみが心に棲みついた」(TBS系/2018年)、「わたし、定時で帰ります。」(TBS系/2019年)、「10の秘密」(カンテレ・フジテレビ系/2020年)など。
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