大島優子「忘れられる覚悟もあった」 舞台にかける思い<モデルプレスインタビュー>
2019.01.01 07:00
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女優の大島優子(おおしま・ゆうこ/30)が、モデルプレスのインタビューに応じた。2014年にAKB48を卒業して以降、女優として出演作を重ねてきた彼女が、約1年間の海外渡航を経て、俳優の三浦春馬が主演を務める舞台『罪と罰』(東京公演:2019年1月9日~2月1日 Bunkamuraシアターコクーン/大阪公演:2019年2月9日~17日 森ノ宮ピロティホール)に出演する。1年間を経ての心境の変化や、3年ぶり3作目となる舞台への思いを聞いた。
気鋭の英国人演出家、フィリップ・ブリーンが、ロシアの文豪・ドストエフスキーの名作を舞台化。戯曲は自身が2016年にLAMDA(ロンドン・アカデミー・オブ・ミュージックアンドドラマティック・アート)に書き下ろしたものをベースに、日本公演のために再構築した。
「正義のためなら人を殺す権利がある」と考え、殺人を犯す青年ラスコリニコフを三浦が演じ、大島は、家族のために娼婦となり、ラスコリニコフと心を通わすソーニャを演じる。
大島:まず舞台に立ちたかったというのがあります。海外に行って1年後に改めてファンの方に観てもらうのであれば、テレビ越しではなく生の芝居を観てもらいたいなと思いました。
― 舞台と映像だと、やはり感覚は違いますか?
大島:違いますね。舞台の方がつま先から頭の先まで全てを観ていただけますし、より表現しているものを伝えることが出来るのではないかと思ったからです。
― それはAKB48時代にステージに立っていたときと共通するものがありますか?
大島:それはあるかもしれないです。
― 以前から板の上自体が好きだったんでしょうか?
大島:いや、そんなこともないです。まだ舞台は3回目なんですけど、未だに舞台の上で芝居をやるということに対してはまだまだ勉強中です。カットやリテイクがきかないので、楽しみながら遊ぶには、もっと経験を重ねたいなと思っています。
大島:前からです。いつからだったかな、漠然とではありますが舞台が良いなと決めていました。
― なにか大きいきっかけがあったんでしょうか?
大島:まず、1年間海外で生活するというのは、自分の中ではすごく大きなことでした。どういう風になるのか全く想像つきませんでした。もしかしたら日本での居場所がなくなり、忘れられるかもしれないとも思っていました。その覚悟もあったので、舞台から始めたいと心に決めていたのかもしれません。
― 終着点じゃないけど1つ先を見据えていると、実の入り方も違うというか。
大島:実際はそこまでに深く考えていなかったのかも(笑)。でもやっぱり待って下さる方々がいるとしたら、舞台に立って目の前で観てもらいたいと思いました。それが答えです、誰か1人でもいたらいいなと。
― いやいや、そんな誰かというか、沢山いると思いますよ。
大島:いやいや、まあ人は忘れるものだし、ときは流れるものだから、不安もありました。
― 舞台は確かに待って下さったファンの方の反応を実感しやすいですよね。
大島:そうですね。やっぱり映画とかテレビに対する声も、今はネットの世界だから一応分かりやすいですけど、本当に肌で感じるものが一番多いのが舞台だと思いました。
大島:そうですね。一番は、心が豊かになりました。本当に昔は、寝ているようで寝ていないような感覚でいたし、どこに自分がいるかも分からないまま仕事をしていることもありました。
今は一つ一つ噛み締めながら仕事をさせてもらっています。海外でも色々な経験をし、吸収したので、これからどういう形で活かしていけるのかが自分でも楽しみです。
大島:恥ずかしながら、原作を今まで読んだことがありませんでした。最初はこの作品のお話をいただいた時はプレッシャーを感じたのですが、本を読むにつれて登場人物の一人一人が懸命にその時代を生きていて、背負うのもがあると色々と考えさせられました。この作品はラスコリニコフの視点だけど、他の視点に置き換えると色々なストーリーが組み込まれていて、より面白さを感じました。
― そもそも海外の作品というだけで難しくないですか?
大島:難しいです。やはり歴史の背景を理解しているのとしていないのとでは、表現が変わってくると思いますし、そういう部分から紐解いていく作業が必要だなと思いました。
― 最初に脚本をもらって、ソーニャを演じるにあたってどんな役作りをしようと思われましたか?
大島:一人では役作りはできなかったです。とにかく内容を理解するところから始めました。一般の方の論文のような物も読んでみたり、自分以外の人がこの作品をどう捉えているのかにも興味がありました。
― それは演技するときにどのように活かされていますか?
大島:私たちが『罪と罰』の世界観を表現しようとして、私が「ソーニャってこういう役だろう」と考えて表現したとしても、多分受け取り側の見方で全然違うものになると思うので、あえて何かを押し出そうという考えはありません。一番は「人生とは?正義とは?罪と罰とは?」ということを唱えていることで、そこにソーニャという存在がどういう風にいるかということだと思ったので、全体的な空気感を捉えようと努めました。
大島:そうそうたる俳優の方々がいらっしゃって、私は隅っこの方で小さくなりながら見ていました。ワークショップ自体も初めてだったので、やっぱり芝居って練習なんだなと改めて思いました。色んな人生経験とか仕事の経験、あとは感性やセンスも大事かもしれないけど、でも本当に技術や練習がどれほど大事かということも目の当たりにしました。
というのも大先輩の大竹しのぶさんといった舞台で大活躍されている皆さんが目の前で演出家に稽古をつけられて練習して、みるみるうちにフィリップが言ったことによって芝居が変わっていくんです。そのプロセスを観ているのが本当に面白かったですし、自分を鍛えるということが大切なんだなと思いました。
大島:隙がないです。1人1人のキャラクターの心情を汲んでくれるんですよね。もちろん先に考えていらっしゃると思うし、私たち自身が演じて納得できるようにしっかり汲み取った上で伝えてくれて、そこに新たにフィリップ自身の「多分彼はこう思っているんだよね」「彼女はこう思っているんだよね」という考えを私たちが持っていない感性から言ってくれるんです。それは文化の違いなのか、彼自身の独特な演出の仕方なのかは分からないんですけど、毎回「このセリフだけどそんな風に思っていたとは知らなかった」と新しい発見があってとっても面白いです。付属するものやバックグラウンドなど、キャラクターが思っていることを瞬時にアイデアが思い浮かぶみたいで。
― 元々考えていたのではなく、その場で思いつくのでしょうか?
大島:元々考えていたのかは分からないんですけど、いつも「あ、良いこと思い出した!」と言うんです。「僕アイデアがある。ちょっと分かんないけどやってみよう」みたいにやっていくのでこっちもワクワクして、フィリップの冒険に一緒に付き合っているみたいな感覚ですね(笑)。
― そのやり方は今までの方とは違いますか?
大島:違いますね。その日その日が0からのスタートなんです。今まで出演した舞台では、演出の方がなんとなくざっくりしたビジョンを持ってきて下さって、こっちも提出してお互いなんとなくベースを考えた上で、「じゃあどうやっていこうか」と作っていくというやり方だったんですけど、フィリップの場合は「とりあえずやってみよう」「うーん、ここからどうしていこうか」と一緒に考えていく感じ。違うアイデアが浮かべば「これやってみよう」と言って、それが違うと「全部忘れて」とか言われたりもするので(笑)、本当に1つずつステップバイステップで進んでいく感じですね。
大島:通訳さんがいらっしゃいます。軽いやり取りくらいはしますけど、基本的には通訳さんを介して。個人的にソーニャがどう思っているかという解釈の話をするときも、やっぱり周りの人も受け取らないといけないというか、1人1人の思考だとか思いを汲み取らなきゃいけないので、そう思うと日本語の方がいいのかなと思います。
― 確かに、細かいニュアンスは難しいですよね。
大島:そう。やっぱり皆で理解を全一致させなければいけないので。でも聞いている分には通訳さんとフィリップが言っていることが日本語に訳すとちょっと私の解釈と違ったりするので、ダイレクトに理解できるようになったというのはあります。だから二重においしいですよね。「こう言っているな」と思うけど、「日本語にするとこういう言い方もあるから、じゃあこういう感情も加えてみていいのかな」みたいな。
― では、結構英語と日本語が飛び交う現場?
大島:はい、とっても面白いです。
大島:観ていて楽しいのでお客さんになって傍観しちゃいます!皆さんのお芝居を観ていると自分が出ることをすっかり忘れてしまうくらい見入ってしまいますね。
― 具体的にはどんな部分が?
大島:皆さんセリフの覚えも早いし、動きも早い。フィリップの指示はパッと言って「OK, ready start!」と間がないので、言われて自分たちで受け入れて、それで動くという、頭で理解してから体の動きに繋げるルートをすごく早くしないといけないんですけど、皆様それが本当に瞬時にできるので、尊敬の眼差しでずっと観ています。
― 大島さんは苦労しますか?
大島:自分がやっているときは客観的に見られないので分からないんですけど、なるべく努めるようにはしています。頑張ってやってみるけど、「もう1回やってみようか」と言われたときに、「あ、できてないんだな」と分かるときはありますね。
― 共演者の方とは空き時間どんなお話をされていますか?
大島:稽古をずっとしていて、3時間休憩無しでやることもあるんです。気づいたら3時間経っていたみたいなこともあって、すごく疲れてくると、皆自分が飼っているペットの話をしだします。癒やされようと心が逃げるんでしょうね(笑)。
― 思い出すだけでもいいからと(笑)。
大島:そう。「写真見せてください」とか言ってお互い見せ合います。お父さんのマルメラードフ役の冨岡弘さんが2匹犬を飼っていらっしゃるんですけど、出会いの馴れ初めから全部話してくれて(笑)。そういう話をしながら休憩時間に癒やされています。
― 大島さんは?
大島:私はうさぎを飼っていたんですけど、今は実家にいます。実家に懐いちゃって戻せないんですよね(笑)。実家だと祖母がずっといるので前よりも非常に人懐っこくなって、良かったです。
― でも会いたくないですか?
大島:たまに帰っているので大丈夫です。あとは父が写真やムービーを送ってくれるので。
大島:充実した1年を過ごさせてもらったと思っています。だからそれを踏まえて、この舞台から良い1年を作りたいと思っています。
― 今後はこんな風にしていきたい、というのはありますか?
大島:具体的にはありませんが、最近は頑張りすぎないことも覚えたので、力の入れ具合のバランスを良い形で保ちたいなと思っています。
― 最後に夢を追っているモデルプレス読者に向けて、夢を叶える秘訣を教えて下さい。
大島:夢があったとしたらゴールを作って逆算した方が良いとは思います。プロセスはすごく大事だと思いますね。急に夢が一気に手に入ることは然う然う無いと思うので、やっぱり着実に進めていくことが大事なのかなと思います。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
頭脳明晰な貧乏青年ラスコリニコフ(三浦春馬)は自分が「特別な人間」として、 「人類が救われ、その行為が必要ならば、法を犯す権利がある」という独自の理論を持っていた。
そして強欲で狡猾な質屋の老婆を殺害し、奪った金で世の中のために善行をしようと企てている。 そんな中、酒場で出会った酔っぱらいの退職官吏、その後妻カテリーナ(麻実れい)ら貧乏な家族を見ると質入れで得たお金をすべて渡してしまうのであった。 ついに殺害を決行するが偶然居合わせた老婆の妹まで手にかけてしまい、罪の意識、幻覚、自白の衝動に苦しむことになる。 そうして意識を失い数日間も寝込んだ彼を親友ラズミーヒン(松田慎也)が見守り、 結婚のため上京してきた妹ドゥーニャ(南沢奈央)と母プリヘーリヤ(立石涼子)も心配をする。 一方、老婆殺人事件を追う国家捜査官ポルフィーリ(勝村政信)はラスコリニコフを疑い心理的に追い詰めていき、 さらに謎の男スヴィドリガイロフ(山路和弘)の登場に翻弄されていく。
そして退職官吏の娘・娼婦ソーニャ(大島優子)の家族のためへの自己犠牲の生き方に心をうたれた彼は...数々の普遍的なテーマに触れながら、 人間回復への強烈な願望を訴えたヒューマニズム大作。
AKB48の中心メンバーとして活動し、2014年6月に同グループを卒業。映画『紙の月』(2014)では第38回日本アカデミー賞優秀助演女優賞をはじめ、第39回報知映画賞、第36回ヨコハマ映画祭、第24回東京スポーツ映画大賞で助演女優賞を受賞した。『ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~』(2015/TBS系)で連続ドラマ初主演。主な出演作にドラマ『銭の戦争』(2015/関西テレビ)、連続テレビ小説『あさが来た』(2016/NHK)、『東京タラレバ娘』(2017/日本テレビ)、『コートダジュールN゜10(ナンバーテン)』(2017/WOWOW)、映画『ロマンス』(2015※主演)。『真田十勇士』、『疾風ロンド』(2016)など。舞台は『No.9-不滅の旋律-』(2015)、『美幸』(2016)以来3作目。12月7日にデジタルフォトブック『WORK』と『LIFE』を2冊同時発売した。
「正義のためなら人を殺す権利がある」と考え、殺人を犯す青年ラスコリニコフを三浦が演じ、大島は、家族のために娼婦となり、ラスコリニコフと心を通わすソーニャを演じる。
大島優子、帰国後第1作に舞台を選んだ理由
― 1年の海外渡航を経て、この作品を選んだ理由は何ですか?大島:まず舞台に立ちたかったというのがあります。海外に行って1年後に改めてファンの方に観てもらうのであれば、テレビ越しではなく生の芝居を観てもらいたいなと思いました。
― 舞台と映像だと、やはり感覚は違いますか?
大島:違いますね。舞台の方がつま先から頭の先まで全てを観ていただけますし、より表現しているものを伝えることが出来るのではないかと思ったからです。
― それはAKB48時代にステージに立っていたときと共通するものがありますか?
大島:それはあるかもしれないです。
― 以前から板の上自体が好きだったんでしょうか?
大島:いや、そんなこともないです。まだ舞台は3回目なんですけど、未だに舞台の上で芝居をやるということに対してはまだまだ勉強中です。カットやリテイクがきかないので、楽しみながら遊ぶには、もっと経験を重ねたいなと思っています。
大島優子「忘れられる覚悟もあった」
― 戻ってきて最初に舞台をやりたいと考えていたのは、海外渡航の前から?大島:前からです。いつからだったかな、漠然とではありますが舞台が良いなと決めていました。
― なにか大きいきっかけがあったんでしょうか?
大島:まず、1年間海外で生活するというのは、自分の中ではすごく大きなことでした。どういう風になるのか全く想像つきませんでした。もしかしたら日本での居場所がなくなり、忘れられるかもしれないとも思っていました。その覚悟もあったので、舞台から始めたいと心に決めていたのかもしれません。
― 終着点じゃないけど1つ先を見据えていると、実の入り方も違うというか。
大島:実際はそこまでに深く考えていなかったのかも(笑)。でもやっぱり待って下さる方々がいるとしたら、舞台に立って目の前で観てもらいたいと思いました。それが答えです、誰か1人でもいたらいいなと。
― いやいや、そんな誰かというか、沢山いると思いますよ。
大島:いやいや、まあ人は忘れるものだし、ときは流れるものだから、不安もありました。
― 舞台は確かに待って下さったファンの方の反応を実感しやすいですよね。
大島:そうですね。やっぱり映画とかテレビに対する声も、今はネットの世界だから一応分かりやすいですけど、本当に肌で感じるものが一番多いのが舞台だと思いました。
大島優子、この一年で実感したこと
― この一年で、考え方が変わったということはありますか?大島:そうですね。一番は、心が豊かになりました。本当に昔は、寝ているようで寝ていないような感覚でいたし、どこに自分がいるかも分からないまま仕事をしていることもありました。
今は一つ一つ噛み締めながら仕事をさせてもらっています。海外でも色々な経験をし、吸収したので、これからどういう形で活かしていけるのかが自分でも楽しみです。
大島優子、『罪と罰』役作りは「何から手を付けたらいいか分からなかった」
― そんななか、最初にこの舞台のオファーを受けたときは作品にどんな印象を抱きましたか?大島:恥ずかしながら、原作を今まで読んだことがありませんでした。最初はこの作品のお話をいただいた時はプレッシャーを感じたのですが、本を読むにつれて登場人物の一人一人が懸命にその時代を生きていて、背負うのもがあると色々と考えさせられました。この作品はラスコリニコフの視点だけど、他の視点に置き換えると色々なストーリーが組み込まれていて、より面白さを感じました。
― そもそも海外の作品というだけで難しくないですか?
大島:難しいです。やはり歴史の背景を理解しているのとしていないのとでは、表現が変わってくると思いますし、そういう部分から紐解いていく作業が必要だなと思いました。
― 最初に脚本をもらって、ソーニャを演じるにあたってどんな役作りをしようと思われましたか?
大島:一人では役作りはできなかったです。とにかく内容を理解するところから始めました。一般の方の論文のような物も読んでみたり、自分以外の人がこの作品をどう捉えているのかにも興味がありました。
― それは演技するときにどのように活かされていますか?
大島:私たちが『罪と罰』の世界観を表現しようとして、私が「ソーニャってこういう役だろう」と考えて表現したとしても、多分受け取り側の見方で全然違うものになると思うので、あえて何かを押し出そうという考えはありません。一番は「人生とは?正義とは?罪と罰とは?」ということを唱えていることで、そこにソーニャという存在がどういう風にいるかということだと思ったので、全体的な空気感を捉えようと努めました。
大島優子「目の当たりにした」刺激を受けたワークショップ
― 稽古前に日本でフィリップさんのワークショップを受けられたと聞きました。大島:そうそうたる俳優の方々がいらっしゃって、私は隅っこの方で小さくなりながら見ていました。ワークショップ自体も初めてだったので、やっぱり芝居って練習なんだなと改めて思いました。色んな人生経験とか仕事の経験、あとは感性やセンスも大事かもしれないけど、でも本当に技術や練習がどれほど大事かということも目の当たりにしました。
というのも大先輩の大竹しのぶさんといった舞台で大活躍されている皆さんが目の前で演出家に稽古をつけられて練習して、みるみるうちにフィリップが言ったことによって芝居が変わっていくんです。そのプロセスを観ているのが本当に面白かったですし、自分を鍛えるということが大切なんだなと思いました。
大島優子、気鋭演出家の指導は「隙がない」
― 現在稽古の真っ最中ということで、フィリップさんの演出を、実際に受けてみていかがですか?大島:隙がないです。1人1人のキャラクターの心情を汲んでくれるんですよね。もちろん先に考えていらっしゃると思うし、私たち自身が演じて納得できるようにしっかり汲み取った上で伝えてくれて、そこに新たにフィリップ自身の「多分彼はこう思っているんだよね」「彼女はこう思っているんだよね」という考えを私たちが持っていない感性から言ってくれるんです。それは文化の違いなのか、彼自身の独特な演出の仕方なのかは分からないんですけど、毎回「このセリフだけどそんな風に思っていたとは知らなかった」と新しい発見があってとっても面白いです。付属するものやバックグラウンドなど、キャラクターが思っていることを瞬時にアイデアが思い浮かぶみたいで。
― 元々考えていたのではなく、その場で思いつくのでしょうか?
大島:元々考えていたのかは分からないんですけど、いつも「あ、良いこと思い出した!」と言うんです。「僕アイデアがある。ちょっと分かんないけどやってみよう」みたいにやっていくのでこっちもワクワクして、フィリップの冒険に一緒に付き合っているみたいな感覚ですね(笑)。
― そのやり方は今までの方とは違いますか?
大島:違いますね。その日その日が0からのスタートなんです。今まで出演した舞台では、演出の方がなんとなくざっくりしたビジョンを持ってきて下さって、こっちも提出してお互いなんとなくベースを考えた上で、「じゃあどうやっていこうか」と作っていくというやり方だったんですけど、フィリップの場合は「とりあえずやってみよう」「うーん、ここからどうしていこうか」と一緒に考えていく感じ。違うアイデアが浮かべば「これやってみよう」と言って、それが違うと「全部忘れて」とか言われたりもするので(笑)、本当に1つずつステップバイステップで進んでいく感じですね。
大島優子、舞台現場では英語でコミュニケーションも
― フィリップさんとは普段英語で会話されているんですか?大島:通訳さんがいらっしゃいます。軽いやり取りくらいはしますけど、基本的には通訳さんを介して。個人的にソーニャがどう思っているかという解釈の話をするときも、やっぱり周りの人も受け取らないといけないというか、1人1人の思考だとか思いを汲み取らなきゃいけないので、そう思うと日本語の方がいいのかなと思います。
― 確かに、細かいニュアンスは難しいですよね。
大島:そう。やっぱり皆で理解を全一致させなければいけないので。でも聞いている分には通訳さんとフィリップが言っていることが日本語に訳すとちょっと私の解釈と違ったりするので、ダイレクトに理解できるようになったというのはあります。だから二重においしいですよね。「こう言っているな」と思うけど、「日本語にするとこういう言い方もあるから、じゃあこういう感情も加えてみていいのかな」みたいな。
― では、結構英語と日本語が飛び交う現場?
大島:はい、とっても面白いです。
大島優子、三浦春馬ら豪華俳優陣との共演に刺激
― 今回初共演の方が多いと思うんですが、刺激を受けることが多いですか?大島:観ていて楽しいのでお客さんになって傍観しちゃいます!皆さんのお芝居を観ていると自分が出ることをすっかり忘れてしまうくらい見入ってしまいますね。
― 具体的にはどんな部分が?
大島:皆さんセリフの覚えも早いし、動きも早い。フィリップの指示はパッと言って「OK, ready start!」と間がないので、言われて自分たちで受け入れて、それで動くという、頭で理解してから体の動きに繋げるルートをすごく早くしないといけないんですけど、皆様それが本当に瞬時にできるので、尊敬の眼差しでずっと観ています。
― 大島さんは苦労しますか?
大島:自分がやっているときは客観的に見られないので分からないんですけど、なるべく努めるようにはしています。頑張ってやってみるけど、「もう1回やってみようか」と言われたときに、「あ、できてないんだな」と分かるときはありますね。
― 共演者の方とは空き時間どんなお話をされていますか?
大島:稽古をずっとしていて、3時間休憩無しでやることもあるんです。気づいたら3時間経っていたみたいなこともあって、すごく疲れてくると、皆自分が飼っているペットの話をしだします。癒やされようと心が逃げるんでしょうね(笑)。
― 思い出すだけでもいいからと(笑)。
大島:そう。「写真見せてください」とか言ってお互い見せ合います。お父さんのマルメラードフ役の冨岡弘さんが2匹犬を飼っていらっしゃるんですけど、出会いの馴れ初めから全部話してくれて(笑)。そういう話をしながら休憩時間に癒やされています。
― 大島さんは?
大島:私はうさぎを飼っていたんですけど、今は実家にいます。実家に懐いちゃって戻せないんですよね(笑)。実家だと祖母がずっといるので前よりも非常に人懐っこくなって、良かったです。
― でも会いたくないですか?
大島:たまに帰っているので大丈夫です。あとは父が写真やムービーを送ってくれるので。
大島優子「頑張りすぎないことも覚えた」
― 改めて、この1年は大島さんのキャリアにとって重要な1年になりましたか?大島:充実した1年を過ごさせてもらったと思っています。だからそれを踏まえて、この舞台から良い1年を作りたいと思っています。
― 今後はこんな風にしていきたい、というのはありますか?
大島:具体的にはありませんが、最近は頑張りすぎないことも覚えたので、力の入れ具合のバランスを良い形で保ちたいなと思っています。
― 最後に夢を追っているモデルプレス読者に向けて、夢を叶える秘訣を教えて下さい。
大島:夢があったとしたらゴールを作って逆算した方が良いとは思います。プロセスはすごく大事だと思いますね。急に夢が一気に手に入ることは然う然う無いと思うので、やっぱり着実に進めていくことが大事なのかなと思います。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
「罪と罰」ストーリー
舞台は、帝政ロシアの首都、夏のサンクトペテルブルク。頭脳明晰な貧乏青年ラスコリニコフ(三浦春馬)は自分が「特別な人間」として、 「人類が救われ、その行為が必要ならば、法を犯す権利がある」という独自の理論を持っていた。
そして強欲で狡猾な質屋の老婆を殺害し、奪った金で世の中のために善行をしようと企てている。 そんな中、酒場で出会った酔っぱらいの退職官吏、その後妻カテリーナ(麻実れい)ら貧乏な家族を見ると質入れで得たお金をすべて渡してしまうのであった。 ついに殺害を決行するが偶然居合わせた老婆の妹まで手にかけてしまい、罪の意識、幻覚、自白の衝動に苦しむことになる。 そうして意識を失い数日間も寝込んだ彼を親友ラズミーヒン(松田慎也)が見守り、 結婚のため上京してきた妹ドゥーニャ(南沢奈央)と母プリヘーリヤ(立石涼子)も心配をする。 一方、老婆殺人事件を追う国家捜査官ポルフィーリ(勝村政信)はラスコリニコフを疑い心理的に追い詰めていき、 さらに謎の男スヴィドリガイロフ(山路和弘)の登場に翻弄されていく。
そして退職官吏の娘・娼婦ソーニャ(大島優子)の家族のためへの自己犠牲の生き方に心をうたれた彼は...数々の普遍的なテーマに触れながら、 人間回復への強烈な願望を訴えたヒューマニズム大作。
大島優子(おおしま・ゆうこ)プロフィール
1988年10月17日生まれ/栃木県出身AKB48の中心メンバーとして活動し、2014年6月に同グループを卒業。映画『紙の月』(2014)では第38回日本アカデミー賞優秀助演女優賞をはじめ、第39回報知映画賞、第36回ヨコハマ映画祭、第24回東京スポーツ映画大賞で助演女優賞を受賞した。『ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~』(2015/TBS系)で連続ドラマ初主演。主な出演作にドラマ『銭の戦争』(2015/関西テレビ)、連続テレビ小説『あさが来た』(2016/NHK)、『東京タラレバ娘』(2017/日本テレビ)、『コートダジュールN゜10(ナンバーテン)』(2017/WOWOW)、映画『ロマンス』(2015※主演)。『真田十勇士』、『疾風ロンド』(2016)など。舞台は『No.9-不滅の旋律-』(2015)、『美幸』(2016)以来3作目。12月7日にデジタルフォトブック『WORK』と『LIFE』を2冊同時発売した。
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