菅野結以「人生で初めて」の体験に感動 性格も変えた“転機”とは<インタビュー>
2018.04.27 20:30
モデルとして活躍する菅野結以は14歳でデビューを果たし、端正なルックスでたちまちブレイク。同世代から憧れの存在として圧倒的な人気を博した。現在もモデル業を行いながら、自身のブランド「Crayme,(クレイミー)」のプロディーサーを務めている。また音楽に対する造詣も深く、24歳の時にはラジオの音楽番組のパーソナリティーに抜擢。そんな菅野は2度音楽で大きな人生の転機を迎えたという。
菅野結以の人生を狂わせた音楽とは
― 音楽のお仕事も多い菅野さんですが、昔から音楽は身近な存在でしたか?菅野:そうですね。私は音楽で人生が変わった瞬間が明確にあって。小学校6年生の時に「My Bloody Valentine(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン:以下マイブラ)」(※1)の『Only Shallow』という曲を聴いた時に雷が落ちたような衝撃を受けたんです。それからシューゲイザー(※2)というジャンルが好きになって、人生が狂いました(笑)。周りと話が合わなくなって、友達のいない人生を歩むきっかけが、まさにそれでした。
(※1)アイルランド出身のロック・バンド。『Only Shallow』も収録されたアルバム『Loveless』は、シューゲイザーの代名詞的な傑作として人気を集めた。
(※2)エフェクターで歪ませたギターやフィードバック・ノイズをポップで甘いメロディーに重ねた浮遊感のあるサウンド。
― ライブはお姉さんと?
菅野:そうです。お姉ちゃんには、ちょこちょこライブに連れて行ってもらっていて。よく知らないバンドのライブにも行っていたんですけど、そのライブのSE(入場する際にかかる曲)で『Only Shallow』がかかったんです。
― しかもSEだったんですね。
菅野:そうなんですよ、だから「あの曲はなんだったんだろう」って、本編は全然頭に入ってこなくて(笑)。当時は聴いた音楽を調べるのも大変で、色んな音楽誌を見たりCDショップの試聴機で探し続けて、やっとマイブラのアルバム『Loveless』に辿り着いたんです。
― すごい情熱ですね!もともと音楽はよく聴いていたんですか?
菅野:小学2年生くらいから暇さえあれば地元のレンタルショップに行って、新譜チェックしていました。「あ、新しいの入った!」ってなったらレンタルして、どうしても欲しいのは買っていましたね。子供の頃からカセットテープやMDに音楽を入れて自分のベストを作っていました。
― その頃から音楽を持ち歩いて?
菅野:持ち歩いて聴いてました!聴いていない時間がもったいないと思っていたんです。起きてる時間は出来る限り音楽を聴いていたかったから、お風呂入ってる時もちょっとドア開けて、スピーカーを近くに置いて聴いてました。だから学校から帰ったらすぐに音楽をかけていましたね。それは今でもあまり変わってなくて、朝起きたらまず音楽配信アプリの「Spotify」で新譜を流してチェックしています。
― 初めてCDを買ったのも小学生の頃でしたか?
菅野:初めて買ったCDは「the brilliant green」の『There will be love there -愛のある場所-』(※3)でした。今思うとブリグリもシューゲイザーなんですよね。改めて昔からああいう音が好きなんだなって感じました。
(※3)1998年5月に発売された「the brilliant green」の3枚目シングル。当時、菅野は10歳。
― すごく音楽に詳しい菅野さんですが、ご家族の皆さんも同じように?
菅野:家族みんなJ-POPは聴いていましたが、洋楽を聴く音楽一家みたいな感じは全く無くて。私は昔から文学やアートに興味があって、絵画を習っていたりもして。でも抽象画しか描けなくて、写実絵画を描くのがストレスでしょうがなかったんです。「ここにあるこれ描く意味ってなに?」みたいな(笑)。無いものを作りたいと思ってて、まさにマイブラの音楽は抽象画そのものに感じて、音楽とアートが私の中で繋がったんです。
― ご家族の趣味とは全く違ったんですね。
菅野:子供の頃はUKロックがすごい好きで、その後シューゲイズが好きになった突然変異です(笑)。
菅野結以「人生が変わった2回目の転機」
― SNSを拝見するとフェスもよく行かれていますね。菅野:そうですね、でもフェスデビューはすっごく遅くて。あんなに人がたくさんいるところは怖くて、一番苦手な場所だと思ってたんですよ。でも24歳の時に音楽のお仕事を始めて、その頃に初めて音楽を共有する喜びに気付きました。ラジオ番組のディレクターさんとお話をした時に「どんな音楽が好きなの?」って聞かれて、「これが好きです」って言ったら、「あ、じゃあこういうのも好きかもね」って教えてもらって、すごく感動したんです。言ったことが全部伝わったのが人生で初めてで。やっと自分の好きなものを共有できる場所に行き着いたのが24歳。それが音楽で人生が変わった2回目の転機でした。その頃に初めてフェスも恐る恐る行きました。
― 行ってみてどうでしたか?
菅野:音楽を共有することがこんなに素晴らしいんだと衝撃を受けました。それまでは一人で楽しめればいいと、半ば諦めていたんです。学園祭もやったことが無くて、誰かと一緒になにかを楽しむ経験が本当に少なかったんですよ。かなりぼっち体質で群れずに生きてきたんですけど、そこから大きく変わって、人と関わるのが好きになっていきました。
― 好きな音楽のジャンルが変わることはありましたか?
菅野:好きな音楽は変わらないんですけど、聴く音楽の幅はかなり広くなっていきました。新しい音楽に触れていく中で「こういうのもいいな」って。
― 歌詞から好きになることも?
菅野:あります。椎名林檎さんが出てきた時は「言葉にならない想いを全部言葉にしてる!」って感動して。歌詞を見なくても全部歌えるっていうくらい『無罪モラトリアム』(※5)は聴きましたね。邦楽は歌詞カードを読んでから曲聴いて好きになることもありました。「Spotify」は曲に合わせて歌詞が表示される機能もあるので、ありがたいですね。
(※5)1999年2月に発売された椎名林檎の1stアルバム。当時、菅野は11歳。
― そんな音楽を一日でも聴かない日があるとしたらどうですか?
菅野:う~ん…。「音楽が無くなったら困る?」と聞かれることもあるんですけど、物心ついた頃から息を吸うように音楽を聴いているので、分からないんですよね。ただ、やっぱり音楽って気分を変えてくれたり、見える景色変えてくれたりしてくれるのが魅力だと思っていて。例えば「今日寒くて外出るのすごい嫌だな」って日も、「Sigur Rós(シガー・ロス)」(※6)を聴くと「なんて世界は美しいんだ」って気持ちになって「冬最高!」って思えるんです。
(※6)アイスランドのポストロックバンド。2018年は日本での単独公演も決まっている。
― 音楽を聴いて夏も外に出たくなったり?
菅野:夏が一番苦手で、なるべく外に出ないよう生きてたんです。ずっと引きこもったスーパーインドアだったのに、音楽フェスのためなら頑張れるんです。モデルの子からは「紫外線やばくない?」って聞かれるんですけど、「うん。でもそんなこと言ってる場合じゃないの!」って(笑)。楽しむことも美容にいいはずだからいいんです。
ファッションと音楽の関係性
― 先程、アートと音楽が近いとお話していましたが、ファッションが変わったことで聴く音楽に影響はありませんでしたか?菅野:そこは一切ないですよね。私の場合、好きなファッションと好きな音楽が結びつかなかったんです。ギャルだけど聴いてる音楽は暗かったりして、見た目で勘違いされて苦労したことはありました。私は「それでもいいじゃん」って思ってましたが、理解してもらえないこともありましたね。
― カルチャーとしてファッションと音楽は近いように感じますか?
菅野:そうですね。自分のブランド「Crayme,」のコレクションを作る時はかなり音楽に影響を受けたし、裏テーマで主題歌をいつも考えるんです。それを聴きながらデザインを描いたりもします。だから私の場合はすごく密接で。
― 確かにファッションカルチャーから発信する音楽もあるし、音楽カルチャーから発信するファッションもあるように感じます。
菅野:デヴィッド・ボウイ(※7)はそれの究極体だと私は思っていて。音楽もファッションもアートも何もかも、多角的に捉えて表現しているように感じるんです。あれこそが私は音楽でありファッションでもあると思っていて、「あっちは気にしない」「こっちは気にしない」だとインスピレーションの幅が狭くなるように感じるんです。
(※7)イングランド出身のアーティスト。独創的な彼のスタイルは、ファッション業界にも大きな影響を与えた。
― リンクしている感覚は昔から変わらず?
菅野:そうですね、子供の頃からどこか違う場所が自分の頭の中にあって、それをバチっと描く世界を見つけると、すごく嬉しくなるんです。それは音楽だったり映画だったりもします。ただ、音楽は時間を取らないってところがいいですね。だから自分の中でも一番日常に根付いてるんだと思います。朝準備しながら聴けるとか、眠りながら聴けるとか。何気なく音楽を聴いている時に、ふと手が止まってしまう瞬間も大事にしたいなと思えるんです。
― シーンによって聴く音楽を変える事はありますか?
菅野:しますね。撮影ならエレクトロが多いかも。みんなが聴いて気分が上がるものが多いです。メイクをしている時は他の人がいるので、暗い気持ちにならないような曲にしていますが(笑)。その時々で結構違うかもしれないです。
― 先程使っていると仰っていた音楽配信アプリの「Spotify」はシーンごとのプレイリストも用意されていますね。プレイリストを流していて新しい出会いに繋がることも?
菅野:それはすごくあります。「Spotify」で自分の好きな音楽を聴き続けると、趣向が近い曲をプレイリストの形でレコメンドしてくれるんです。そこから新しい出会いがあった時は本当に嬉しい。宝探し的な楽しさもあると思います。
― 関連アーティストの表示もありますが、そこから出会うことも?
菅野:知らないアーティスト名があったら聴いてみることにはしています。誰彼構わずおすすめするんじゃなくて、すごいピンポイントでおすすめしてくれるから、好きな曲が多いような気がしますね。
― 「Spotify」の他に新しい音楽に出会うきっかけってありますか?
菅野:ラジオを聴いたり、あとはレーベルで調べることもありますね。特にイギリスのインディー・レコードレーベル「4AD」が好きなんですけど、新人が出たら絶対聴きます。
― 「Spotify」はレーベル検索もできますね。(※8)
菅野:え!レーベル検索も出来るんですか?知らなかった、やってみます!リリースされた年代で検索できたりもするので、知らない曲にたくさん出会えるのはやっぱり「Spotify」の魅力ですよね。
(※8)キーワードの前に「label:」と入力して検索。他にも「genre:」と入力すればジャンル毎に検索することも出来る。
― そもそも「Spotify」を使うきっかけはありましたか?
菅野:毎週音楽番組の収録があったので、そこで話題騒然だったんです。「新しいサブスク(※9)の『Spotify』はやばいらしい」って(笑)。リリースされてすぐダウンロードして、それからずっと使っています。
(※9)サブスクリプションの略。音楽を買い取るのではなく、利用した期間に応じて料金を支払う方式。
今の時期に聞きたいおすすめソングとは
― 今回、菅野さんにはプレイリストを実際に作っていただきましたが、意外と作るのは初めてだったんですね。菅野:はい。でも、すごく簡単ですぐに出来ました。こんな簡単なのに、なんで作ってなかったんだろう。今日から作ります(笑)。
― 「Spotify」であれば、作ったプレイリストを共有したりプレゼントすることも出来ますしね。
菅野:そっか、そんなこともできるんですね。音楽は私にとってコミュニケーションツールの一つになっているんです。音楽の仕事を始めてから、すごく友達が増えたりもして。それまで音楽はいつも一人で聴いてきてたんですが、今は会ったらまず「最近なに聴いてる?」って話になる。同じ音楽が好きだとだいたい気が合ったり、趣味も近いことが多くて。そんな音楽をシェアしたり、プレイリストをフォローできるのはすごくありがたい。
― 一つのプレイリストを友達と共有して、コラボすることもできるので、音楽の趣味が似ている方と作ると面白いかもしれないですね。
菅野:すごい面白いですね!それやりたい!音楽って距離を縮めてくれるというか、「このアーティストが好きな人に悪い人はいない」って思ったり(笑)。同じ世界が見えてる人みたいな感覚になれるんですよね。そういう発見もありそう。
― 他にも世界各国の再生回数ランキングやSpotifyからソーシャルにシェアされたランキングもあって、菅野さんのような音楽にすごく詳しい方はもちろん、ライトな音楽ファンの方も好きな音楽が簡単に見つかりそうですね。
菅野:そうですね。新曲はチェックするようにしているのでありがたいです。気になったCDを全部買うこともできないから、好きな曲を見つける入り口として「Spotify」はすごくいいですよね。
― 今回作成したプレイリスト「今の時期に聞きたいおすすめソング」は菅野さんにも選曲を手伝っていただきました。(記事最後で全曲紹介)
菅野:はい。上京シーズンに良いかなと思い福山雅治さんの『東京にもあったんだ』を選びました。一番最後にちょっとニヒルさを含んでサラッと終わるライブやアルバムがすごい好きなんですよ。今回もサラッと去っていく“粋さ”のあるプレイリストにしたくて。故郷を思いながら、でも東京もそんなに悪いところじゃないよっていうエールも込めて『東京にもあったんだ』を選ばせていただきました。
― 歌詞に共感する部分もあったり?
菅野:私の場合は千葉なので近いと思われるかもしれないんですけど、自分からしたら東京に出てくるのはすごく大きくて。この歌詞が軽やかなサウンドに乗っているのもポイントだと思います。あえて切なくせずに、軽やかにサラッと歌ってる感じが粋だなと思いました。
― 確かに今の季節にぴったりかもしれないです。
菅野:そうですね。春のぽかぽかした東京の街をお散歩しながら聴いてほしいです。すぐには「東京にもあったんだ」って思えないかもしれないですが、何年後かにこう思えたらいいなって感じながら聴いてもらえたらと思います。
― もう1曲、劇場版「名探偵コナン ゼロの執行人」の主題歌にもなっている新曲『零 -ZERO-』も入れていただきました。
菅野:この曲はすごく日本情緒があって男気あふれる福山さんのサムライスピリットを感じたので一番最初にしました。
目標を叶えるために大切なこと
― それでは最後に、菅野さんが夢を叶えるために大切にしていることを教えて下さい。菅野:私は「好き」は何をも凌駕すると思っているんです。どんなに才能を持った人よりもそれを一番愛した人が一番強いって。だから、好きな気持ちは誰にも負けないようにしているつもりです。ラジオの仕事も毎週初めて会うゲストが来てトークをするので、それまでの自分ではありえない世界だったんです。喋るのも苦手だし、人となるべく関わらないように生きてきたから。でも、音楽の仕事がどうしてもやりたいって気持ちが私を変えたんです。
― 性格を変えたと考えると確かにすごいですね。
菅野:オーディションを受けるのも、ラジオ番組が初めてだったんです。それまではオーディションで落ちたら絶対立ち直れないから避けてきたんです。でも、音楽の仕事をどうしてもやりたくて「私がやるべきだ!」と思ったから毎日努力を努力と思わずやってこれた。本当にそれがきっかけで変わっていったので「好き」は何をも凌駕すると思います。それを自分の人生で体現していきたいし、証明していきたいっていう思いもすごくあって。周りと違うから好きなことが言えない人もいると思うんです。私も昔はそうでしたし。だからこそ胸を張って好きなことを言ってほしい。自分が変われば周りの環境も変わっていくので。
― オーディションを受けようと思ったきっかけはあったんですか?
菅野:ラジオだと思います。「Spotify」と同じで、新しい音楽に出会えるからラジオも結構聴いてたんです。忙しすぎて心をなくしていた時に家に帰ったらラジオから「フラワーカンパニーズ」の『深夜高速』が流れてきて。その瞬間にずっと泣けなかったのがぶわっと涙が出てきたんです。自分で選ぶんじゃなくて偶然出会う音楽の爆発力、破壊力って本当にすごいと思います。偶然のタイミングで流れてきた曲が転機になったことって何度もあって、助けてもらった恩返しをしたくてラジオの内側に入りたいと強く思いました。音楽を届ける側になってから、良いアーティストはたくさんいるのに知られていないのが本当にもったいないと感じるようになったんです。だからアーティストとリスナーの橋渡しが出来るようになれればと、地道に、誠実に、愛を持って好きなことに向き合っています。
― ありがとうございました。
14歳でモデルとして活動を始め、同世代から圧倒的な支持を集めた菅野。その裏では自分が好きな音楽が理解されない苦悩を抱えていたが、その苦悩から解放したのも、また音楽だった。菅野が体現した“「好き」は何をも凌駕する”というのは、音楽に限らず全ての夢へ近づくヒントなのかもしれない。(modelpress編集部)[PR]提供元:スポティファイジャパン株式会社
今の時期に聞きたいプレイリスト
菅野にも協力をしてもらい、今の時期に聞きたいオリジナルのプレイリストをモデルプレスが作成。新生活を始めた人にこそ聞いてほしいおすすめソングを選曲した。<今の時期に聞きたいおすすめソング>
1.零 -ZERO-(福山雅治)
2.美しく燃える森(東京スカパラダイスオーケストラ)
3.透明人間(東京事変)
4.高架線(ELLEGARDEN)
5.テレキャスター・ストライプ(ポルカドットスティングレイ)
6.BABY BABY(銀杏BOYZ)
7.若者のすべて(フジファブリック)
8.今宵の月のように(エレファントカシマシ)
9.新宝島(サカナクション)
10.東京にもあったんだ(福山雅治)