モデルプレスのインタビューに応じた神木隆之介、高橋一生 (C)モデルプレス

神木隆之介×高橋一生「葛藤と孤独」プロとしてどう向きあうか<インタビュー>

2017.04.22 06:00

俳優の神木隆之介高橋一生がモデルプレスのインタビューに応じた。羽海野チカ氏の人気コミックを2部作で実写映画化した『3月のライオン』で生徒と教師に扮した2人。“闘いの前編”(公開中)に続く“愛の後編”(4月22日公開)では、2人の心のやりとりが物語に深みと鮮やかさを添える。今作に込めた思い、互いの印象などを語ってもらった。

  

桐山&林田のあたたかい空気感はどう生まれた?

― 中学生という異例の若さで将棋のプロとしてデビューした17歳の棋士・桐山零を演じた神木さん。前編では迫真の対局シーンが印象的でしたが、後編では人とのつながりを通して成長する零の心がより丁寧に描かれていますね。

神木:前編と後編でこんなにも色が違う作品になるのかと驚きました。撮影中は、「闘いの前編」「愛の後編」と大きくテーマが分かれていたとは撮影中、気づかなかったのですが、後編を観て、全てがつながり、さすが大友(啓史)監督だと思いました。

― “愛の後編”のなかでも神木さん演じる零と、高橋さん演じる零が通う高校の担任教師・林田高志のシーンは独特の穏やかな雰囲気がありました。

高橋:将棋を通してある1人の人間の成長とそれをサポートしていく人間っていうドラマティックな部分が丁寧に描かれていると前編・後編通して感じました。2人のシーンは、土壌を用意してくださったスタッフさん、相手役として、主役としてしっかりといてくださった神木さんがいたので、桐山と林田としての会話がきっとできているだろうっていう安心感が常にありました。

高橋一生、神木隆之介(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会
その中で意識したのは、自分がいかに作り込まずにいられるか。教師でありながら将棋に対しては圧倒的に桐山の方が上ですが、教師として教えなきゃいけないこともある。このバランスは神木さんと一緒にお芝居をできたから自然に出せた雰囲気だったと思います。

原作にどう向き合うか

― お二人のシーンは生徒と先生、だけど友達のようにあたたかい、原作にあるような絶妙な空気感が伝わってきました。原作をどのように捉えて役作りや準備をされたのでしょう?

神木:原作への誠意と、どれだけ役を愛せるかというのは、僕もアニメや漫画が好きだからこそ常に考えます。やはり実写化と聞くと「どうなんだろう?」と思うでしょうし、プレッシャーもあります。しかし演じるからには、桐山が人間として生きていたらこう生きているんだろうなというのを追求したいと思いました。今回は2つ意識していたことがあり、1つは前編の最初の目と後編のラストの目の鮮やかさが変わってたらいいなということ。それが最終目標でした。もう1つは、前編と後編での時間の経過です。

神木隆之介(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会
― 零の成長を表現するということでしょうか?

神木:そうですね。対局姿を少し大人っぽくしたり、歩く速度を少し遅くしてみたり。前編では未熟な零が、少しずつ成長して後編では心の中に少しだけ余裕や受け入れられる器ができるのかなと思ったんです。なので歩くスピードも少しゆっくりになる。なかなかわかりづらいかもしれないですが。

高橋:神木さんは漫画の世界から飛び出してきたみたいでした。僕自身は原作があってファンの方もたくさんいる作品って、それを俳優が潤飾してはいけないような気がするんです。まずどれだけビジュアルで説得力を持たせられるか、感情的な部分はそこからついてくるものだと思っていて。神木さんはまずビジュアル面での説得力が素晴らしく、より成長していく過程が生々しくリアルに見られるんです。林田として桐山の側にいることによって、肌で神木さんのパワーをとても感じていました。本当に勉強になりました。

神木:ありがとうございます(照れ笑い)。高橋さんとのシーンはすごく楽しかったです。

高橋:よかった(笑)。

神木:林田先生のすぐに他人の領域に入れる感じというか(笑)。簡単なことだけど先生が言ったことは核心をついていてすごく胸に来る。2人の距離感は他の棋士達や幸田家の人達と比べてもかなり特殊だと思いますし、零にとっても無意識的な居場所であったと思います。あんなに零から人に質問することってほかにないでしょうし。本当に親身になってくれる先生だと思いながら演じていたので楽しかったです。

高橋一生(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

神木隆之介&高橋一生、互いの印象は?

― お二人の共演は2度目ですね。今回ご一緒してみてお互いにどんな思いを持ちましたか?

神木:前回はここまで一緒のシーンがなかったので嬉しかったです。

高橋:やっとガッツリご一緒できましたね。

神木:高橋さんはもう声が素敵で。何でこんな柔らかい素敵な声なんだといつも思っていました。現場でずっと心地よく聞かせていただいていました。

高橋:あはは(笑)。ありがとうございます。

神木隆之介、高橋一生 (C)モデルプレス
神木:それから高橋さんは硬派なイメージを持っていたのですが、林田先生の軽やかさのようなものが、すごく僕の中でギャップでもあって。そんな高橋さんを観られたのも嬉しかったです。

高橋:よかったです。神木さんは本当に不思議な方。非常にテクニカルな部分と感覚的な部分を両方持ち合わせていらっしゃるなと。見せなきゃいけないところと敢えて見せなくてもいいところを感覚的に使い分けていらっしゃる。どれだけ神木さんが納得するために役に対して向き合っているのかが、一緒にお芝居させていただいてわかりました。主役としての静かなエネルギー、覚悟みたいなものは、僕自身林田でありながら、カットがかかるたび、素晴らしいなと思っていました。

“プロの世界で生きる”とは―2人の俳優論

神木隆之介、高橋一生 (C)モデルプレス
― 幼い頃からプロの世界で生きてきた零の境遇は、お二人にも共通する部分があるのではないかと思います。零と思いを共有できた部分はありましたか?

神木:僕も幼い頃、ずっと自分より年上の方に囲まれていましたが、20歳くらいに共演した、弟役の子を本当の弟だと思って接していて、その中では妥協や容赦なしに演技をしました。自分が幼かった頃も周りの方々は歳関係なく、演技で接してくださいましたし、桐山にとっても相手の対局者は歳関係なく桐山をプロだと思って倒しに来る。そのような自分の見られ方という部分は桐山と似ているのかなと思いました。

監督とも撮影前に似ているねと話していて気づいたことでもあります。その中で桐山は、相手にふきとばされないように生きていて、自分もふきとばされてはいけない、しっかりしなければという想いはあるので共感もできました。

高橋:桐山のような葛藤とか孤独って、大なり小なりみんなあるはず。プロであることって、ある頑張りみたいなものを手放した時だと思うんです。そこに相手が存在することをしっかり認識した時というか。

お芝居も孤独な作業ではあるんですけれど、相手の共演者の方にいかに開いた状態で向き合えるか。「頑張る」「努力」とは違う、「外に向かっている何か」というものを意識して初めてプロになっていくんだと思います。桐山が自分の世界から外に向かっていけるようになった対局シーンは「あ、やっぱり人間ってそういうことだ」と納得した、印象的なシーンでした。

伊藤英明、神木隆之介(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会
神木:その物語後半の鍵になる対局シーンは、特に一番長い長回しでした。今まで色々なものを抱えて何か欠けていたような桐山が、やっと人間になれたんだという感じがして。そこから特に目の鮮やかさを意識していったんです。そのシーンは何回も撮り、テンションも高くなっていましたし、すごく体力も消耗して…。カットがかかってからは、対局後の零と同じように疲れ果てていました(笑)。そして零と同じように「大事なことに気付かせてくれてありがとう」という気持ちにもなりました。本当にいいシーンになったと思っています。

神木隆之介、高橋一生 (C)モデルプレス
(modelpress編集部)

映画『3月のライオン』

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会
公開日:前編 2017年3月18日(土)、後編 4月22日(土)
監督:大友啓史
出演:神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、佐々木蔵之介、加瀬亮、伊勢谷友介、前田吟、高橋一生、岩松了、斉木しげる、中村倫也、尾上寛之、奥野瑛太、甲本雅裕、新津ちせ、板谷由夏、伊藤英明、豊川悦司
原作:羽海野チカ「3月のライオン」

<ストーリー>
中学生という異例の若さで将棋のプロ棋士としてデビューし、東京の下町にひとりで暮らす17歳の棋士、桐山零(きりやまれい)。彼は、幼い頃に両親と妹を交通事故で亡くし、孤独を抱え、来る日も来る日も、すがりつくように将棋を指し続けた。そんなある日、零は同じ下町に住む3姉妹・川本あかり、ひなた、モモと出会う。それは、将棋盤以外の“自分の居場所”との出会いでもあった…。激しい才能と激情がうごめく棋士たちの生きる将棋の世界と、陽だまりのような川本家の食卓。数々の対局とあたたかな人々との交流を通じ、零は棋士として、人として、ある覚悟を決めていく――。

神木隆之介(かみき・りゅうのすけ)プロフィール

1993年5月19日生まれ。1999年、ドラマ『グッドニュース』(TBS系)でドラマデビュー。以後、ドラマ・映画・CMなど多方面で活躍し、俳優として高い評価を受けている。2016年は、一大ブームを巻き起こしたアニメ映画『君の名は。』に主演し大きな話題に。2017年は、主演映画『3月のライオン』(前編:3月18日、後編:4月22日公開)のほか、話題作『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(8月4日公開)の公開が控える。

高橋一生(たかはし・いっせい)プロフィール

1980年12月9日生まれ。東京都出身。ドラマ・映画・舞台で幅広い役柄を演じ実力派俳優として確かな地位を築く。2016年はドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)、『僕のヤバイ妻』(関西テレビ・フジテレビ系)、『グ・ラ・メ!~総理の料理番~』(テレビ朝日系)、『プリンセスメゾン』(BSプレミアム)、映画『シン・ゴジラ』などに出演。2017年は大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)、ドラマ『カルテット』(TBS系)、映画『3月のライオン』など、公開待機作に、映画『blank13』『嘘を愛する女』がある。
【Not Sponsored 記事】

あわせて読みたい

  1. 神木隆之介が“愛”を知り、もがきながら闘い続ける…「3月のライオン」前編を5分で凝縮

    モデルプレス

  2. 今秋朝ドラ「わろてんか」松坂桃李・高橋一生・千葉雄大らが意気込み語る<コメント到着>

    モデルプレス

  3. 今秋朝ドラ「わろてんか」ヒロインの夫役に松坂桃李 高橋一生・千葉雄大ら追加キャスト9名発表

    モデルプレス

  4. オファー途切れぬ山崎賢人は“新しい形の座長” 実写「ジョジョ」プロデューサーが語る

    モデルプレス

  5. 山崎賢人は自分を殴り、神木隆之介は目で魅せる―「ジョジョ」実写化で“見えない敵”と戦う男たち<撮影現場レポ&会見>

    モデルプレス

  6. 三ツ矢サイダー新CMが取りやめに 視聴者から「危険」と指摘相次ぐ

    モデルプレス

おすすめ特集

  1. 4月のカバーモデルは「片思い世界」広瀬すず・杉咲花・清原果耶

    特集

  2. 「2025年ヒット予測」発表 エンタメ・ライフスタイルなどトレンド完全予測

    特集

  3. モデルプレス読者モデル 新メンバー加入!

    特集

  4. 国民的推しランキング!各種エンタメにまつわる読者ランキング、読者アンケート実施中

    特集

  5. モデルプレス独自取材!著名人が語る「夢を叶える秘訣」

    特集

  6. インフルエンサー影響力トレンドランキングを発表!「モデルプレスカウントダウン」

    特集

おすすめ記事

SPECIAL NEWS

記事ランキング

RANKING

  1. 01

    あやか(中野綾香)、ペア成立・本命相手との不意打ちキス裏話 恋リアの極意とは「女性部屋の会話は9割嘘だと思って」【「ラブキン」インタビュー】

    モデルプレス

  2. 02

    中道理央也&西山真央夫妻に直撃「バチェラー」シリーズ参加者同士で結婚 馴れ初め・プロポーズ話まで赤裸々告白【モデルプレスインタビュー】

    モデルプレス

  3. 03

    AAA與真司郎、2人の元恋人について初告白 マッチングアプリでの出会い・交際中のロマンチックなエピソード「初めて愛を教えてくれた」【Vol.2】

    モデルプレス

  4. 04

    AAA與真司郎、ゲイ公表前後の本音語る「全員僕を嫌いになったんじゃないか」「鬱のような状態に陥った」当時の苦しみ乗り越えられた理由【Vol.1】

    モデルプレス

  5. 05

    間宮祥太朗「週刊少年ジャンプ」の主人公参考に役作り 初共演・三山凌輝の印象も「すぐに距離が縮まりそう」【「イグナイト -法の無法者-」インタビュー】

    モデルプレス