X JAPAN・YOSHIKIインタビュー(提供写真)

<X JAPAN・YOSHIKIインタビュー>「涙で見えなくなっちゃって…」辛い過去と向き合えた理由、Twitterがもたらした価値

2017.03.13 20:12

ロックバンド・X JAPANを描いた、ハリウッド制作のドキュメンタリー映画「WE ARE X」の公開を記念して、モデルプレスはリーダーのYOSHIKIにインタビューを行った。

  
同作は、日本が誇る世界のロックバンド・X JAPANの結成から現在に至るまでの歴史を綴ったドキュメンタリー作品。世界への挑戦、脱退、解散、HIDEとTAIJIの死、Toshlの洗脳などバンドを襲った数々の悲劇を、当時の映像やYOSHIKI、メンバーのインタビューを織り交ぜて辿っていく。

なぜ今、X JAPANの音楽と物語は世界を熱狂させるのか。HIDEとTAIJIの夢。逆境に立ち向かい乗り越えてゆく使命感と覚悟。ファンのみならず今を生きるすべての人の心を打つ物語が映し出される。

今回のインタビューでは映画化へ至った理由からSNSとの付き合い方まで、YOSHIKIの人知れない思いに迫った。

映画化は「無理だと言っていた」

映画「WE ARE X」(C)2016 PASSION PICTURES,LTD
― まず、映画化に至った理由をお聞かせください。

20年以上前からドキュメンタリーを作るべきだという話はあって、確かに興味はあったんですが、あまりにも悲しい、苦しい過去がいっぱいあったので、それは無理だと言っていました。

たとえば、X JAPANの解散のコンサートを、30を超える数のカメラで撮ってたんですけど、最初の5分だけで涙が出てきて、中々リリースできなかったんです。その一部だけでも、過去を振り返られないのに、X JAPAN全体のストーリーを振り返るのは無理に決まっていると。

何年もできないという話はしてきたんですけど、そういった中で、僕たちがまだ進行形であるということも含めて、X JAPANのストーリーは「人の命を助けることもできるんじゃないか」「心の傷ついた人たちに希望を与えることができるんじゃないか」という意見を聞いて、それであれば作ろうかという方向に変わっていきました。

「傷っていうのは一生消えない、だけど…」

映画「WE ARE X」(C)2016 PASSION PICTURES,LTD
― 制作の過程で、悲しい過去を振り返る必要もあったと思います。どのようにして向き合うことができたのでしょう。

インタビューにしても、最初は僕もぎこちないというか、うまく過去のことを喋れない、それを聞かれてしまうと黙ってしまう、ちょっと中断しようかみたいなことを繰り返していました。

HIDEが亡くなった時に、「みんな頑張ってくれ」とファンを励ます役割として日本で記者会見を開いたんですけど、ロスに帰ったら壊れてしまって。当時は「生きていたくない」という気持ちになり、精神科へ通っていました。

今回インタビューをしていくうちに、当時お医者さんと話す中で、語りたくないことを直視することで乗り越えていた、ということを思い出すことができたんです。

だから製作の過程自体は、自分にとってのセラピックというか、とても浄化されるような感覚で、最終的には過去につながるドアを全部開けてしまいました。

でも自分の傷自体を乗り越えたわけではないと思うんです。傷っていうのは一生消えない、だけど傷と共存していける何かを、この映画によって見つけられたと思っています。

制作者の条件は「X JAPANを知らない人」

映画「WE ARE X」(C)2016 PASSION PICTURES,LTD
― プロデューサーや監督はどのようにして決まったのでしょうか?

この映画の企画は、自分が関わったらダメになる、語ることができなくなるだろうということを考えていたので、プロデューサーと監督選びだけさせていただいたんです。僕からの一つの条件は、X JAPANを知らない人。先入観を持っていたら、インタビューの質問にしてもきっとうまく聞けないだろうし。

候補のリストは沢山きまして、一人ジョン・バトセックという「シュガーマン 奇跡に愛された男」でアカデミー賞を獲った映画のプロデューサーがいて、とても素晴らしい映画だったので入っていただきました。彼と監督を選び、スティーヴン・キジャックがすごいセンスが良いよねという話になり、彼に決めました。

それで彼らに言ったのは、ホラー映画にはしないでくれと(笑)。X JAPANのストーリーは極端にいうと、一歩間違えればホラー映画にもなり得る。だから、自分もファンの人たちに救われたように、誰かを救える映画にして欲しいと思っていました。

でもキーワードはそれぐらいで、あとは彼らが全うしてくれました。今日は喋りたくないって言っているのに監督が質問してきたり、色んなやり取りはありましたけど(笑)。

「父親の死があったから、僕はロックミュージシャンになった」

映画「WE ARE X」(C)2016 PASSION PICTURES,LTD
― X JAPANの歴史の中で、その時々の出来事が、楽曲にも影響を与えてきたかと思いますが、それについてはどう考えてますか?

皮肉なことなんですけど、父親がああいう死に方をしなかったら、ぼくはロックをやっていたかどうかもわからない。

父親は事故死ではなくて自分で命を絶った。その時の気持ちは、怒りと悲しみ、苦しみの行き場がなくなって、どんどん自分の心が無いことに向かっちゃって、その中でロックと出会ったんです。

ロックって泣きわめいてもいいんだ、暴れてもいいんだ、ぶっ壊してもいいんだと。そういう場を見つけられたというか…。

父親の死があったから、僕はロックミュージシャンになったと思います。そういうことがあったから、深い詩を書くことができた。起こった事件というか、ドラマは全て作品に影響していますから。

「この後どんな人生が待っているんだろうと…」

映画「WE ARE X」(C)2016 PASSION PICTURES,LTD
― YOSHIKIさんが「WE ARE X」をご覧になられた率直な感想を教えてください。

途中から涙で見えなくなっちゃって。後頭部をハンマーで殴られたような気分でした。

この映画にはトリックがいっぱいありまして、それこそ面白い隠し味がいっぱいあるんですよ。個人的にはあまり好きではないシーンもいくつかあって、初めて観たときはそれ自体にも気づかなかった。

あれだけのことが起きると、頭が半分変になっていたというか、本当はHIDEは死んでないんじゃないか、ある日急に現れるんじゃないかとか、そんなことを思っちゃったりね。

あとは「ああ、本当にこのドラマが起こったんだ」という変な気持ちになりました。「何なんだこのドラマは。誰がこの人生の脚本を書いたんだ。そんな脚本は普通は書けない!」って。この後どんな人生が待っているんだろうと…。

「炎上だけはしないように、たまにはしてもいいかな(笑)」

映画「WE ARE X」(C)2016 PASSION PICTURES,LTD
― YOSHIKIさんは、TwitterやFacebookといったSNSを活用してファンとうまくコミュニケーションをされていますが、SNSについてはどんな印象をお持ちでしょうか?

そうですね、もともとX JAPANでの役割っていうのは、HIDEが自分からファンとコミュニケーションを取り次ぐから、YOSHIKIは勝手に突っ走ってくれって感じで、そういうことはHIDEの役割だったんですよね。

でもHIDEが亡くなり、X JAPANが再結成することになってからは、自分で発信をはじめました。いろんな意見が聞けてすごく嬉しい気持ちもありますが、ただ僕ら芸術家って、ある種裏切ったり、1万人がこう言っても、僕はこう思うという自我が絶対に必要だと思うんです。

こういう曲を作って欲しいとか、色々なオファーが来るじゃないですか。時には全部無視しなければいけないし、時には聞かなければいけない。

音楽に限らず、いろんな芸術家が、SNSを通してファンの意見を聞くというのはとても良いことだと思うんですが、でもそれに全てを捧げてしまったら、その人の存在価値がなくなってしまうというか、ただの媒体になってしまう。

全員から言われたことの反対のものを作ってみたいと思ったりもしますよね。それはやっぱり芸術家としてのプライドというか…だから自分でも試行錯誤しながらSNSを使っています。炎上だけはしないように、たまにはしてもいいかな(笑)。

僕は自分勝手に分けわからないツイートをしてるんで、周りのみんなはヒヤヒヤしてるわけですよ。それも含めて、このエンターテイメントの世界で一番つまらないのは、予定調和だと思っています。いったい何が起こっているんだ!みたいな方が面白い。そういう意味でSNSは、ある種危険なところが僕は好きですね。

ファンとのコミュニケーションの中で、あくまでも良い人であるべきではない。微妙なさじ加減を楽しんでいる感じではあります。

「明日死んでもいいんだって」

映画「WE ARE X」(C)2016 PASSION PICTURES,LTD
― YOSHIKIさんの夢を叶えるためのエネルギー源とは何でしょうか?

自分は一回死んでる、いや一回くらいじゃないですね、父親が死んだ時もHIDEの時も、もう生きていたくないと思っていたので、今いること自体が奇跡みたいなもので、ファンの人たちに頂いた第二の人生、第三の人生をいま歩んでいると思っていることです。

逆に言うと、怖いものが何もない。明日死んでもいいんだってぐらいに思っている。だけど、頂いた人生をちゃんと全うして、ファンの人たちにお返ししたいですし、HIDE、TAIJIの夢でもあった海外という意思を継ぐしかない。

X JAPANを解散する前、Toshlがああいう風になる前、HIDEがこの世を立ち去る前、僕らはどっかでうぬぼれていたと思うんです。当たり前のようにバンドメンバーがいて、当たり前のように何万人のお客さんいて、それがいかに有難いことだったのかということを、この空白の10年間で学びました。

普通であれば再結成なんてありえないと思っていたんですけど、メンバーも亡くなってますし、もう一回チャンスをもらったのであれば、何でもやってやろうって。ある種使命感みたいな。

「X JAPANファンだけの為の映画ではない」

映画「WE ARE X」(C)2016 PASSION PICTURES,LTD
― では最後に、ファンの方々へメッセージをお願いします。

YOSHIKI:先ほども言ったように、「X JAPANを知らない人」という条件で監督を選んだんですけど、要するに決してX JAPANファンだけの為の映画ではないっていうか、心に行き詰まった人に希望を与える映画でもあると思うんで、X JAPANのことを好きじゃない人も、興味がないって人でも、そういう人たちにも是非観ていただきたいです。

ある種使命感で作った映画です。こういうストーリーがこのバンドに実際に起こったんだって教訓にしていただいて、生きる意味、自分が存在する意味を問いかけられるような、そんな映画になっていると思います。

あとはこの映画は、ファンの皆さんの気持ちが込められているというか、決して僕たちだけのストーリーではないんです。「WE ARE X」はみんながいたから出来たストーリーだと思っているんで、皆さんが一緒に作り上げたという意識で、観てもらえたら嬉しいですね。(modelpress編集部)

YOSHIKI プロフィール

X JAPAN・YOSHIKIインタビュー(提供写真)
作曲家、ドラマー、クラシックのピアニスト。YOSHIKI率いるX JAPANは、今までにアルバム・シングルを合わせ3000万枚を超える売上げを誇り、東京ドームを18回にわたりソールドアウトにした記録を持つ。バンドの人気は今、世界へと広がっており、近年行われた北米、ヨーロッパ、南米、アジアツアーは全てソールドアウト。

2014年、米・ロックの殿堂マディソン・スクエア・ガーデン公演、2017年1月、米クラシックの殿堂カーネギーホールでのYOSHIKI単独公演、そして先日行われた英ロックの殿堂ウェンブリー・アリーナ(現SSEアリーナ・ウェンブリー)公演で、音楽の3大殿堂を制覇したアーティストとなった。

「天皇陛下御即位十年をお祝いする国民式典」で披露された奉祝曲「Anniversary」や、米・ゴールデングローブ賞のオフィシャルテーマ曲「Golden Globe Theme」の作曲など、国内外問わずグローバルに活動。

また音楽活動以外にも、米国“501(C)(3)” 非営利公益法人 Yoshiki Foundation Americaの設立や、外務省が開設した日本文化の発信施設「ジャパンハウス」のアドバイザー就任、自民党本部にて行われた「クールジャパン戦略推進特命委員会」への出席など、活動は多岐に渡る。

リリース情報

映画「WE ARE X」(C)2016 PASSION PICTURES,LTD
X JAPAN「WE ARE X」オリジナル・サウンドトラック
2017年3月3日発売(世界同時発売)
【CD1】
1.La Venus(Acoustic Version)
2.Kurenai(From The Last Live)
3.Forever Love
4.A Piano String in Es Dur
5.Dahlia
6.Crucify My Love
7.Xclamation
8.Standing Sex(From X Japan Returns)
9.Tears
10.Longing ~Setsubou no Yoru~
11.Art of Life -3rd Movement-
12.Endless Rain(From The Last Live)
13.X(From The Last Live)
14.Without You(Unplugged)

【CD2】-Japan Bonus Tracks-
1.Rusty Nail(From DAHLIA TOUR FINAL ~Mubou na Yoru~)
2.Forever Love(From The Last Live)
【Not Sponsored 記事】

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