モデルプレスのインタビューに応じた吉岡里帆(C)モデルプレス

吉岡里帆が語る“忘れたくない記憶”――役者続けるうえでの難しさ「経験値が増えていくごとに鮮度が落ちていってしまう」【「九龍ジェネリックロマンス」インタビュー】

2025.09.02 17:00

モデルプレスの独自企画「今月のカバーモデル」で2025年9月のカバーモデルを務めたのは、映画「九龍ジェネリックロマンス」で水上恒司とともにW主演を務める女優の吉岡里帆(よしおか・りほ/32)。初共演となった水上の印象や台湾ロケでの撮影秘話、そして“忘れたくない記憶”とは――。

吉岡里帆&水上恒司W主演「九龍ジェネリックロマンス」

水上恒司、吉岡里帆(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
水上恒司、吉岡里帆(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
「恋は雨上がりのように」の眉月じゅん氏最新作にして人気漫画「九龍ジェネリックロマンス」(集英社/週刊ヤングジャンプ連載)がTVアニメ化に続き、実写映画化。ノスタルジー溢れる街・九龍を舞台に、過去の記憶がない鯨井令子(吉岡)と誰にも明かせない過去を持つ工藤発(水上)が恋をし、過去・現在・未来が交錯する中で秘密を解き明かしていくミステリー・ラブロマンス。吉岡が演じる令子は、自分とそっくりの容姿をした鯨井Bの正体に迫っていく。

吉岡里帆、令子・鯨井Bの演じ分けは「難しかった」

吉岡里帆(C)モデルプレス
吉岡里帆(C)モデルプレス
― 今作のお話を聞いた際の心境をお聞かせください。

吉岡:ミステリー要素と大人の恋愛が絡み合っている物語が面白く、令子も今までにないような不思議な役柄で、挑戦しがいのある作品だなと思いました。

― 原作は読みましたか?

吉岡:読みました。今は存在しない九龍城砦という世界で、しかもジェネリックとして作られた実在しない場所という設定がすごく秀逸で。撮影も香港にあった当時の “九龍城砦”の風景を再現するため、狭く雑多な路地裏の商店など、懐かしさを感じるような古い街並みを残す台湾で行うと伺い、これまでの映画とはまた違う質感の、美しい作品が生まれそうだと期待が高まりました。

令子・鯨井Bという二面性を持ち、自分は何者なのかと葛藤する女性が「本当の自分って何?」と探していくミステリーなストーリーは、読者に訴えかけるメッセージ性があると感じました。また、登場人物全員のキャラクターが立っていて、絵も可愛らしくて、眉月先生のキャラクター愛を感じます。原作はまだ続いているので、「これからどうなっていくんだろう」とワクワクしました。

吉岡里帆(C)モデルプレス
吉岡里帆(C)モデルプレス
― 今回、アニメ化と実写化のWメディア化も話題ですが、どのように受け止めていますか?

吉岡:アニメは、漫画を読んだときの面白さやキャラクターの魅力が忠実に表れていて、原作へのリスペクトを感じ、声優さん、アニメーターのみなさんが素晴らしいなと感動しました。“映画は映画、アニメはアニメ”と棲み分けをしているので、映画ではやっていないことをアニメでやっているし、アニメではやっていないことを映画でできているので、一度に三度美味しい感じです。アニメ化と連動して実写化するというのも私にとって新鮮でした。

― 原作、アニメ、実写映画とそれぞれの良さがありつつ、一貫して多くの人の心を惹きつける魅力があります。その中で、撮影時に意識していたことがあれば教えてください。

吉岡:ものづくりをする上で細かいディテールにはこだわっていて、映画では特に、ビジュアル面や脚本など、それぞれの部署がアイディアに溢れていました。眉月先生の物語もオリジナリティがあり、人を惹きつける魅力があって。私も原作を読んだり台本を読んだりしながら、映画では何ができるのだろうと悩みながら撮影をしていました。シンプルですが、とことん突き詰めてキャラクターのことを考えて撮影に臨むことで、その思いの強さを観客の方にも受け取っていただけると思います。だから、突き詰めることを大切に、撮影を頑張りました。

吉岡里帆(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
吉岡里帆(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
― 令子と鯨井Bの演じ分けで気をつけたことをお聞かせください。

吉岡:見た目は一緒ですが全く違う人に見えなければいけないので、すごく難しかったです。鯨井Bは等身大の大人の自分で演じられるのですが、令子の方は、監督から、「記憶がない分、赤ちゃんみたいに新鮮に物事受け止められる人にしたい」とお話があり、かなり精神年齢を下げて、見た目は大人だけど幼さを感じるキャラクターを表現しました。特に前半は「何も分かっていない」雰囲気を出して、過去の記憶がないことを見せられるように意識しました。

吉岡里帆、水上恒司に感じた逞しさ

吉岡里帆(C)モデルプレス
吉岡里帆(C)モデルプレス
― 水上さんとは今作で初共演ですが、お会いする前と共演した後で印象に変化はありましたか?

吉岡:水上くんは「中学聖日記」(TBS系/2018)の印象が強くて、繊細で線の細い美少年というイメージだったのですが、実際にお会いした水上さんは逞しくて熱くて、ギャップがありました。工藤の役作りで、鍛えて体を大きくして現場に来てくれていたり、実際には年齢差があるけれど劇中の年相応の2人に見えるような努力をたくさんしてくださっているのを感じて、素晴らしい方だなと思いました。

水上恒司、吉岡里帆(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
水上恒司、吉岡里帆(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
― 水上さんに、工藤のような逞しさや頼もしさを感じた瞬間はありましたか?

吉岡:腕が太いのでハグをするシーンは特に逞しさを感じました。また、年齢の少し離れた私の考えなどを分かろうと努力してくれていたところも、ある種逞しさや頼もしさなのかと思います。

吉岡里帆(C)モデルプレス
吉岡里帆(C)モデルプレス
吉岡里帆、水上恒司(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
吉岡里帆、水上恒司(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
― “九龍城砦”を再現するため全編台湾ロケを行ったとのことで、現地の空気やセットの作り込みが演じるうえでの助けになった部分もありましたか?

吉岡:現地のスタッフさんが協力してくださっているので、舞台美術にもローカルな魅力や日常で使い古しているような質感が出ていて感動しました。現地の美術チームの方は若い女性の方ばかりで、「上手ですね」というお話をしたらみんなでキャッキャしながら「嬉しいです」と言ってくださって、明るくて可愛くて魅力的でした。制作の方も、私たちが疲れないように、撮影が楽しく進めるように心遣いをたくさんしてくださり、素敵なチームでした。

― よく海外のロケだと温かいものが出ると言いますよね。

吉岡:そうですね、温かい食事が出てました(笑)!しかも、夏だったので冷たいものも出る。痒いところに手が届くような、サービス満点で本当にありがたかったです。劇中のレモンチキンはテイクを重ねて何回も何回も食べたのですが、ずっと食べられるぐらい美味しかったです。日本でも流行る味だと思います。

吉岡里帆の“忘れたくない記憶”

吉岡里帆(C)モデルプレス
吉岡里帆(C)モデルプレス
― 今作に限らず、役作りの過程として吉岡さんが必ず行うことがあれば教えてください。

吉岡:歌や楽器など、特殊な技能が必要な役はそれを身につけるようにしたり、ハンディキャップを抱えている方の役だと、その方の生活を取材したりしています。また、具体的にどうしたらそのキャラクターになれるかを細かくリストアップして、その項目をクリアしていくことをしてから現場に入っています。

今回は漫画が原作なので漫画にヒントがたくさん詰まっていて、重要なシーンの令子の表情や眉月先生が描く女性の顔を何回も何回も見て、表情の研究をしました。また、「過去の記憶がないってどういうことなんだろう」というのを深掘りして考えて撮影に臨みました。

吉岡里帆(C)モデルプレス/ヘアメイク:池上豪(NICOLASHKA)、スタイリスト:ちばひろみ/ドレス ¥1,150,000、イヤリング ¥66,000、リング ¥95,000、シューズ¥270,000/すべてディオール(クリスチャン ディオール)(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
吉岡里帆(C)モデルプレス/ヘアメイク:池上豪(NICOLASHKA)、スタイリスト:ちばひろみ/ドレス ¥1,150,000、イヤリング ¥66,000、リング ¥95,000、シューズ¥270,000/すべてディオール(クリスチャン ディオール)(C)眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
― 今作は“過去の記憶”が1つのキーワードになっていますが、吉岡さんご自身が忘れたくない思い出があればお聞かせください。

吉岡:忘れたくない思い出はたくさんありますが、原点回帰できる場所があるということが、この世界で長く続けていく上で大事だなと思っていて。経験値がどんどん増えていくごとに鮮度が落ちていってしまうような難しさがあるので、初めてお芝居を観て感動した瞬間のことは忘れたくありません。当時、地元の小劇場で演劇を見て心が動いたときに、何に心が動いたのかをブレずに持ち続けることがすごく大事だなと感じています。

― 貴重なお話をありがとうございました!

(modelpress編集部)

PHOTO:赤英路

吉岡里帆(よしおか・りほ/32)プロフィール

吉岡里帆(C)モデルプレス
吉岡里帆(C)モデルプレス
1993年1月15日生まれ、京都府出身。NHK連続テレビ小説「あさが来た」(2015)に出演し注目を集める。映画「正体」(2024)で第49回報知映画賞助演女優賞、第48回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。近年の主な出演作はフジテレビ系「レンアイ漫画家」(2021)、NHK BSプレミアム「しずかちゃんとパパ」(2022)、カンテレ・フジテレビ系「時をかけるな、恋人たち」(2024)、TBS系「御上先生」(2025)、ディズニープラス スター「ガンニバル」シリーズ(2022、2025)、映画「ハケンアニメ!」(2022)、「Gメン」(2023)、「怪物の木こり」(2023)など。2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」への出演も決定している。
【Not Sponsored 記事】

関連リンク

関連記事

  1. 9月の表紙は吉岡里帆 モデルプレス独自企画「今月のカバーモデル」
    9月の表紙は吉岡里帆 モデルプレス独自企画「今月のカバーモデル」
    モデルプレス
  2. 吉岡里帆、華やか浴衣姿で登場 “キュンとする”共演者を絶賛「漫画から飛び出てきた感じ」 【九龍ジェネリックロマンス】
    吉岡里帆、華やか浴衣姿で登場 “キュンとする”共演者を絶賛「漫画から飛び出てきた感じ」 【九龍ジェネリックロマンス】
    モデルプレス
  3. 吉岡里帆、空港の荷物検査で止められた理由 CAが協力も
    吉岡里帆、空港の荷物検査で止められた理由 CAが協力も
    モデルプレス
  4. 吉岡里帆、美ウエストのぞくデニムコーデ「抜群スタイル」「引き締まってる」の声
    吉岡里帆、美ウエストのぞくデニムコーデ「抜群スタイル」「引き締まってる」の声
    モデルプレス
  5. 吉岡里帆「凛としている繊細な感じがすごく印象的」年下俳優を称賛【九龍ジェネリックロマンス】
    吉岡里帆「凛としている繊細な感じがすごく印象的」年下俳優を称賛【九龍ジェネリックロマンス】
    モデルプレス
  6. 吉岡里帆&水上恒司がゼロ距離に「九龍ジェネリックロマンス」“恋が動き出す”本編映像初解禁
    吉岡里帆&水上恒司がゼロ距離に「九龍ジェネリックロマンス」“恋が動き出す”本編映像初解禁
    モデルプレス

「インタビュー」カテゴリーの最新記事

  1. JO1豆原一成、俳優としての転機に気づいたことと変わらぬ闘争心「芝居には“かっこつけ”はいらない」【「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」インタビュー】
    JO1豆原一成、俳優としての転機に気づいたことと変わらぬ闘争心「芝居には“かっこつけ”はいらない」【「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」インタビュー】
    モデルプレス
  2. なにわ男子・長尾謙杜&山田杏奈、再共演で挑んだ“危うい恋”「出会いが正解だったのか、間違いだったのか」【「恋に至る病」インタビュー】
    なにわ男子・長尾謙杜&山田杏奈、再共演で挑んだ“危うい恋”「出会いが正解だったのか、間違いだったのか」【「恋に至る病」インタビュー】
    モデルプレス
  3. 「ばけばけ」板垣李光人、初出演で感じた朝ドラの魅力 ヒロイン高石あかりの佇まいから得たもの【インタビュー】
    「ばけばけ」板垣李光人、初出演で感じた朝ドラの魅力 ヒロイン高石あかりの佇まいから得たもの【インタビュー】
    モデルプレス
  4. 「仮面ライダーガヴ」主演・知念英和、共演した“特撮出身”庄司浩平に幾度の相談「とても心強かった」EBiDANから俳優の道へ進んだきっかけ【「ひでのよんな~らいふ。」インタビュー】
    「仮面ライダーガヴ」主演・知念英和、共演した“特撮出身”庄司浩平に幾度の相談「とても心強かった」EBiDANから俳優の道へ進んだきっかけ【「ひでのよんな~らいふ。」インタビュー】
    モデルプレス
  5. 新木優子「今はすごくクリア」積み重ねの中で変化した心の余裕【「良いこと悪いこと」インタビュー】
    新木優子「今はすごくクリア」積み重ねの中で変化した心の余裕【「良いこと悪いこと」インタビュー】
    モデルプレス
  6. 高梨瑞樹、さらば森田と「ゴッドタン」収録後の微妙な進展 本気で向き合った舞台裏を語る【インタビュー】
    高梨瑞樹、さらば森田と「ゴッドタン」収録後の微妙な進展 本気で向き合った舞台裏を語る【インタビュー】
    モデルプレス
  7. Aぇ! group正門良規、“ルーティーンを捨てた理由”と自由な芝居への覚醒「三角関係は嫌」恋愛観も明かす【『十二夜』インタビュー後編】
    Aぇ! group正門良規、“ルーティーンを捨てた理由”と自由な芝居への覚醒「三角関係は嫌」恋愛観も明かす【『十二夜』インタビュー後編】
    モデルプレス
  8. Aぇ! group正門良規、男装のお姫様役で挑む初シェイクスピア「良い意味でカオス」【『十二夜』インタビュー前編】
    Aぇ! group正門良規、男装のお姫様役で挑む初シェイクスピア「良い意味でカオス」【『十二夜』インタビュー前編】
    モデルプレス
  9. Girls2山口綺羅の夢を叶える秘訣【ガルアワ出演者インタビュー】
    Girls2山口綺羅の夢を叶える秘訣【ガルアワ出演者インタビュー】
    モデルプレス

あなたにおすすめの記事