「今、君の家の近く」と元カノに送った俺→郵送で済む合鍵を、あの女性と2人で届けに行ったわけ
荷造りで見つかった合鍵
元カノとは学生時代から3年付き合い、1年前に別れました。最後は駅の改札で手を振って、それきりです。鍵のことは、荷造りで見つけるまで頭から抜け落ちていました。
郵送で済ませようとした俺に、彼女は首を横に振りました。
「ちゃんと返さないとね。私もついていくから」
1人で元カノに会いに行くより、そのほうがお互い気が楽だろうと言うのです。そして、こう付け加えました。
「急に行ったら驚かせるよ。先に連絡しておきなよ」
説明できないまま送った一行
電車の中で、何度もメッセージを打ちました。鍵を返したいこと、長いあいだ持ったままにしていたことへのお詫び。打っては消しているうちに、最寄り駅に着いてしまいました。
元カノの住む建物へ向かう角を曲がったところで、慌てて送ったのは最初の一行だけでした。
「今、君の家の近く」
既読はすぐについたものの、返事はありません。建物の入り口の前で足を止めたとき、ようやく画面が光りました。
「え、どういうこと?」
その文面を見て、やっと気づきました。1年も連絡のなかった元カレから居場所だけを告げられたら、気味が悪いに決まっています。説明を打ち直そうとしても、うまくまとまりません。結局送ったのは、別の一言でした。
「少しだけ、下に来られる?」
手渡しのつもりだった封筒
ジャケットの内ポケットには、鍵を入れた封筒があります。顔を見て謝り、手渡しで返す。それが筋だと思っていました。
「ごめん、今は無理」
元カノからの、当然の返事でした。用件も分からないまま、別れた相手に呼び出されて出てこられるはずがありません。隣の彼女が、俺の腕を軽くたたきました。
「無理って言われたら、それでいいんだよ」
俺は小さくうなずいて、「わかった」とだけ返しました。入り口の集合ポストに、封筒を入れます。中身は鍵と、長く借りたままにしたことを詫びる短い手紙だけ。彼女と暮らし始めることは、書きませんでした。
そして...
駅へ戻る途中で、もう1通だけ送りました。
「ポスト、見ておいて」
既読はつきましたが、返事は今も届いていません。最初の一行を、元カノがどんな気持ちで読んだのか。考えるたびに、送信済みの画面をさかのぼってしまいます。
「返せたんだから、それでいいじゃん」と笑った彼女が、新しい部屋の合鍵を1本、俺の手のひらにのせました。今度の鍵は、返す日のことを考えずに持っていられそうです。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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