娘に「今年も頼む」と送らなかった俺が、孫とのチャットで選んだ妻への贈り物
娘に任せきりだった贈り物
妻の誕生日の贈り物は、娘が高校生のころからずっと任せきりでした。毎年この時期に「今年も頼む」と送り、娘が決めたものの代金を払う。それで務めを果たした気でいたのです。
単身赴任で1人暮らしを始めて、2年。電話で妻が「最近、首元が寒くてね」とこぼしたとき、妻の好きな色さえ知らない自分に気づきました。
今年は自分で選ぼう。ただ、娘に相談すれば、きっと代わりに選ぶと言ってくれるだろう。そうなれば、俺はまた甘えてしまいます。
だから相談相手には、部活帰りによく妻の顔を見に寄ってくれる、娘の息子で中学1年の孫を選びました。
孫が教えてくれたこと
最初に送ったのは「母さんの誕生日、何がいい?」の1行です。家では妻を「母さん」と呼んでいます。
孫からはすぐに「ばあばって何色が好き?」「予算いくら?」と返ってきました。どちらにも答えられず、妻がふだん何を着ているのか思い出そうとしても、浮かんでくるのはエプロン姿ばかり。
孫は部活帰りに妻と商店街を歩き、妻が店先で紺のストールに2度触れていたと知らせてくれました。写真の送り方も、お辞儀をするクマのスタンプも、孫に教わったものです。
途中で、孫から「ママにも聞けば?」と届いたこともありました。ママとは、俺の娘のことです。俺は「今年はじいじが選ぶ。ママには内緒な」と返しました。
紺にするか、黒にするか。その2色の間を行き来するうちに、やりとりは100件近くになっていました。
宛先を間違えた1通
孫に最後の意見を聞くつもりで、トーク画面を開きました。送ってから見直すと、そこにあったのは娘の名前です。
「ストール、紺と黒どっちがいいと思う?」
慌てて「すまん、間違えた。今のは忘れてくれ」と送りました。
すぐに娘から「何の話?」と届きました。事情を説明しようと、長い文を打っては消しました。「今年も頼む」を送らなかった理由を、どう書けばいいのか分からない。既読だけをつけたまま、時間が過ぎていきました。
しばらくして、孫から「ママにばれた。100件くらいって言っちゃった。ごめん」と届きました。
そして...
次に届いたのは、娘からの1行でした。
「紺がいいと思うよ」
俺は「ありがとう。母さんには内緒な」と返し、孫に教わったクマのスタンプを添えました。練習以外で押したのは、それが初めてでした。
紺のストールは、妻の誕生日に届くよう手配しました。
娘には、高校生のころからの「今年も頼む」への礼を、まだ伝えていませんでした。トーク画面の一番下では、あのクマが礼の代わりに、娘へお辞儀をしたままです。
(50代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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