新人の後輩にきつく当たっていた私が、店長の言葉のあとで書いたメモ
覚えきれない新しい手順
この店でパートを続けて15年以上。ここ数年でセルフレジが入り、値引きのやり方も変わりました。掲示を見ても頭に入らず、かといって今さら若い人に聞くこともできない。値引きの作業は、なるべくほかの人に回していました。セルフレジの使い方をお客さんに聞かれたときも、別の人を呼んで済ませてきたのです。
半年前に入ってきた後輩は、何でも人に聞く子でした。レジの応援でほかのパートさんからお礼を言われている姿を見て、値札の束をそろえながら口にしていたのがこの言葉です。
「若い子は楽でいいね」
後輩のほうへ顔を上げることはしませんでした。
笑い声の輪の外で
休憩室でパートさんたちに囲まれて笑う後輩を、向かいの席から見ていた日もあります。輪が解けたあと、出てきたのはもっときつい言葉でした。「適当に働いてるだけでちやほやされるんだもんね」
後輩はメモ帳を閉じて、お茶を一口飲みました。言い返してこない後輩を見ながら、私は自分の湯のみを持ったまま、しばらく口をつけずにいました。周りが私の機嫌をうかがっていることには、気づいていました。気づいていたから、余計に言い方がとがっていったのだと思います。少し前に店長から新人の様子を聞かれたときも、返したのはこれだけでした。
「まあ、若いからね」
名前が出てくると言われた後輩
バックヤードで値札を整理していると、店長が入ってきて、隣で段ボールを開けていた後輩の前で足を止めました。「仕事を覚えるの、今までで一番早かったよ。いろんな人に話を聞いても、あなたの名前が出てくる。良い人だって。これからも頼りにしてるから」
「ありがとうございます」15年いて私が作れなかった関係性を、後輩は半年で作っていました。値札の束を台に置き、足元の段ボールを音を立てて畳みました。カートに積んで、そのまま売り場へ出ました。
そして...
その足で売り場の掲示の前に立ち、値引きの手順をレシートの裏に書き写しました。後輩に見せて確かめれば、すぐに済む話です。けれど、まだ声をかけられずにいます。
あの言葉は、あれから口にしていません。
(50代女性・スーパーのパート)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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