夫にもらったカバンを勢いで売った私が、ママ友にわざと図々しくねだった理由
夫がくれた最初の贈り物
あのカバンは、付き合って最初の誕生日に夫がくれたものです。ほつれた持ち手を近所の修理店で直してもらい、そこだけ糸の色が変わりました。
半年前の引っ越しの荷造り中、段ボールの数をめぐって夫と言い合いになりました。
「使ってないなら売れば」
その勢いのまま、フリマアプリに出品。1時間もたたずに買い手がつき、いつもの癖で葉を4枚つけたクローバーを描いたカードを添えて送りました。
翌日には後悔していましたが、もう取り消せません。しばらくして夫に「あのカバン、最近使わないね」と聞かれ、実家に置いてあると答えてしまいました。
口から出たのは別の言葉だった
門の前でそのカバンを見つけてから、何度も声をかけようとしました。けれど、自分で売ったとはどうしても言えません。夫に言えずにいることまで、そこからほどけていく気がしたのです。
公園のベンチで入手先を聞いたとき、返ってきたのは予想どおりの答えでした。自分のものだったと気づかれたくなくて、むしろ興味がないように振る舞おうとしました。口から出たのが、「中古なんだ。誰が使ってたか分からないのに、よく平気だね」でした。前の持ち主なら、ここに座っていたのに。
欲しいものを「それ頂戴」と冗談めかして言うのは、昔からの癖です。本気に聞こえなければ、断られても笑って済む。そう考えて、数日後に同じベンチで切り出しました。
「そのカバン、私の方が似合うから頂戴」
内ポケットのカード
彼女はあっさりうなずきました。
「いいよ。内ポケットに前の持ち主さんのカードが入ってるから、一緒に大事にしてあげてね」
指先に触れたのは、見慣れた厚紙の手ざわりでした。引き出すと、自分の字と自分の描いたクローバーがそこにあります。
「そのクローバー、どこかで見た気がするんだよね」
彼女の声は責めるでもなく、明るいままでした。全部知られていたのだと分かり、カードを裏返して戻します。親指は、あの明るい縫い目を探していました。
返そうと差し出したカバンは、一度あげたものだからと受け取ってもらえませんでした。息子が砂だらけの手で駆け寄ってくるまで、膝の上のカバンから顔を上げられずにいました。
そして...
その日、玄関のフックにカバンを掛けると、帰ってきた夫が「実家から持ってきたんだ」と言いました。うなずいただけで、台所へ向かいました。
カードは今、台所の引き出しの奥に入っています。彼女に本当のことを伝えるメッセージは、下書きのまま3回書き直しました。送信ボタンには、まだ触れていません。
(30代女性・パート)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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