「お母さんが作ってよ」と言われた私。それでも料理ノートに日付を残していました
一緒に台所へ立ったことがほとんどありませんでした
娘が小さいころ、私は仕事で帰りが遅く、夕食は朝や休みの日に作り置きをして、温めて先に食べてもらっていました。肉じゃがも煮魚もだし巻き卵も何度も作りましたが、一緒に台所へ立ったことはほとんどありません。それでも毎日の食事は用意できているのだから足りていると思っていました。1人暮らしをすると聞いた日に料理ノートを開き、この中の料理を娘は食べてきたのに、作り方は知らないままなのだと気づきました。
娘が決めた味に、私は調味料を足していました
娘は月に1度ほど帰ってきて、夕食は自分が作ると言います。今からでも一緒に作れると思い、私はノートを持って横に立ちました。肉じゃがの日は人参を切る手元を見て「その切り方だと、火が通りにくいよ」と言い、煮汁には家の分量を教えます。娘が味見をして決めたあとも、ノートの分量に近づくまで調味料を足しました。食卓に並ぶころには、娘が作り始めたものが私の味になっていたはずです。それでも私は、その料理のページに一緒に作った日付を書いて、次は何を作れるだろうと考えていました。
「私が作ったら、あなたが覚えられないでしょう」
3回目の日、包丁を置いた娘に「そんなにお母さんの味にしたいなら、お母さんが作ってよ」と言われました。全部を自分と同じ味にしたいわけではなく、一度くらいは家の作り方を一緒にやっておきたかっただけです。けれど、そう説明する代わりに「私が作ったら、あなたが覚えられないでしょう」と答えました。今さら一緒に作りたかったと言って、娘に嫌がられるのが怖くて、その理由までは言えませんでした。娘はそれ以上その話をしませんでした。次に帰ってきた日、娘は作るとは言いません。私は煮物の手が離せず、分量を読んでほしいと頼みました。日付が書いてあることは分かっていて、それでもノートを取ってもらいました。娘に日付のことを聞かれて、家を出ると聞いたときのことを初めて話しました。
そして...
日付を残した日はどれも、私が横から直していただけです。一緒に作ったと数えていたのは私のほうだけでした。次に帰ってきた日、娘は自分からノートを開き、まだ日付のない鶏の照り焼きのページを選びます。切った鶏肉に口を出しかけて、私は先に「前より包丁の使い方、慣れたね」と言いました。それから「大きさはそろえてね」と続けます。娘は何も言わず、次の1切れを少しだけ小さく切りました。照り焼きのページにも、新しい日付を書きました。
(50代女性・パート勤務)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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