「忘れ物です」とSNSに載せたらバズった→店員の僕が投稿を消した理由
袋から出てきた、小さな花籠
席が10ほどの小さなカフェで働いています。その席を週に1度ほど使う女性が、いつも編み物をしていました。椅子の横に残っていた袋には、小さな花籠が入っており、小さな花が何十個も編み込まれていました。写真を見れば本人が気づくかもしれない。そう考えて、店の公式SNSへ載せました。
「店内でお預かりした忘れ物です。お心当たりのある方はスタッフまでお声がけください」
持ち主を探すためだけの投稿のつもりでした。ところが翌日、反応の数が普段とはまるで違いました。
忘れ物を見に来るお客さまも
注文の前に花籠のことを聞かれるようになり、受け取りやすいだろうと考えて、僕はレジの横へ移しました。
「SNSで見たやつ、これですよね?」
「そうです。まだ持ち主の方がいらしていなくて」
携帯を向けるお客さまの後ろに、いつもの常連さんが並んでいました。その日は角の席で編み針を出しません。しばらくすると、花籠の前を通らずに帰っていきました。それでも僕は気づきませんでした。
目的が変わっていました
持ち主が現れないまま、僕はもう一度、花籠を近くから撮って載せました。まだ待っていると書き添えると、反応はさらに増えました。その時点で目的が変わっていたのだと思います。持ち主を探すためではなく、人に見てもらえる店の話題として扱いはじめていました。本人が見れば取りに来るはずだと考え、なぜ来ないのかを考えようとはしません。
そして...
開店してすぐ、あの常連さんが携帯の画面を差し出しました。半分ほどしか花のついていない籠が写っています。
「これ、私が忘れたものです」
角の席で編み物をされていたこと。あの日、いつものように編み針を出していなかったこと。そこで全部つながりました。僕は花籠を袋へ戻してお渡ししました。
「お待ちしていました」
そのまま終わらせることもできました。けれど、反応の数が心地よくなっていたのは僕のほうです。
「落とし物を探すつもりで載せました。でも、反応が増えてから、店の投稿として見てしまっていました。申し訳ありません」
「探してくれたことは、ありがたかったです。でも、作った人まで見世物みたいになるのは、ちょっと怖かったです」
後から載せた写真は、その日のうちに消しました。今は忘れ物が写った写真を投稿に使わず、お預かりした物は奥の棚に置いています。
(30代男性・飲食店勤務)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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