「その日程で承ります」だけ。6年、私はそれを扱いの軽さだと思っていました
6年、返ってくるのは同じ長さです
勤め先で外の会社へ仕事を頼むのが私の役目で、その方はそのうちの1社の担当です。顔を合わせたのは6年前に一度、話をしに出向いたときだけで、あとのやりとりは画面の中で完結しています。日程を相談すれば「その日程で承ります」。書き出しの挨拶がなく、用件から始まって用件で終わります。ほかの会社の担当の方からは、宛名や挨拶の入った丁寧な文が届きます。返事が早いのも、片づけが早いだけなのだと受け取っていました。そのうち私も、自分の文から余計な挨拶を削るようになりました。
同僚の画面に、同じ名前がありました
社内のチャットに、別の案件を持っている同僚が届いた文を貼りました。「平素より格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。」から始まる、宛名も結びもそろった文です。同僚は「こんなに丁寧な文、久しぶりに見た」と書き添えていました。貼られた画面の上のほうに出ている差出人の名前は、私が6年見てきたのと同じ方のものでした。私は自分の画面を開き、いちばん新しい1通をもう一度読みました。日付は同じ週で、やはり要件だけでした。書ける方なのだと分かったことのほうが、こたえました。
挨拶が消えた回を探しました
その日、私は6年ぶんを上へたどりました。やりとりをさかのぼるほど文は長くなり、始まりの数か月は、同僚に届いたのと同じ型の挨拶が毎回ついています。手が止まったのは、注文した数より箱が1つ足りずに届いた回に、私が送った文でした。「こちらで回せましたので、次の分に足していただければ大丈夫です」。不足分は、うちの在庫から回しました。急いでいたので、いちばん短く済む形を選んだだけです。この文より前に届いた分には、毎回あの型の挨拶がついています。責めずに済ませたことは覚えていましたが、その済ませ方を読まれているとは考えていませんでした。
そして...
私は「見返して気づいたのですが、6年前から私への返信だけずいぶん短くなっていますよね」と送りました。返ってきたのは、やはり短い返事です。「はい。あの回から、そちらは形式より用件を先にされる方だと思ってまいりました」。私は次の依頼の頭に、「いつもお世話になっております」を戻しました。届いた返事には、6年ぶりに書き出しの挨拶がついていました。私たちは6年、互いの短さに合わせて、同じ方向へ削り合っていたようです。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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