「自転車の件も、ごみ出しの件も、心当たりがありません」入居者にそう言われた、大家の私の事情
貼り紙をやめた日から
このアパートを1人で管理しています。以前は注意ごとを玄関の掲示板に貼っていましたが、駐輪の注意を貼った時に住人どうしが探り合いになり、名指しされたわけでもない1人が出ていってしまったのです。それからは掲示をやめ、気づいたことは管理アプリで個別に送ると決めました。責める文面にならないよう、事務的に、短く。そう決めて打った1通が、自転車の件でした。「自転車置き場に停められている自転車について、ご確認をお願いいたします」。
打ちかけて消した訂正
返信は、その日のうちに届きました。「確認しました。以後気をつけます」。短い文面にほっとして、それきりにしました。間違いに気づいたのは後日、置き場の自転車に別の部屋の名前の札を見つけた時です。白線に車輪を重ねていたのは、あの方の自転車ではありませんでした。訂正を打ちかけて、消しました。間違いでしたと送れば、この先の連絡を信じてもらえなくなる気がしたのです。そのくせ私は、また送っていました。「ごみ出しの日について、案内の通りにお願いいたします」。収集の後に残っていた袋を、前の日に袋を提げて階段を下りるあの方とすれ違った、それだけのことで、あの方のものだと決めてしまいました。数日後、集積所の前で顔を合わせても、会釈だけして網を直す手に戻りました。
1日遅れの返信
間もなく、その返信が届きました。「自転車の件も、ごみ出しの件も、心当たりがありません」。既読にしたまま、書き出しては消すだけで、送信まで進めませんでした。翌朝、同じ階の方に袋のことを聞くと、出し忘れて後から出した自分のものだと名乗り出ました。ようやく送りました。「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」。続けて書きました。「2通とも、私の思い違いでした」。気づいていながら言えなかったことも、確かめずに送ったことも、そのまま書きました。
そして...
掲示に戻すつもりは、今もありません。ただ、送る前には集積所や置き場まで下りて、この目で確かめてから打つことにしました。人を追いつめないために貼り紙をやめたはずが、確かめずに送った2通で、同じことをしていたのです。引き出しの1枚は、それを忘れないために残してあります。
(60代女性・アパート経営)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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