「母さんへ」の1語で読むのをやめた私、息子の手紙を古い菓子箱へしまった理由
手紙を頼み続けてきた
息子が家を出てから、私は帰省が近づくたびに「今年も手紙、書いてね」と頼んできました。電話でもチャットでも話せます。それでも、手紙だけは続けてもらっていました。
棚に置いてある古い菓子箱には、小学生のころから息子が書いてくれた手紙が入っています。私が読み返すのは、きれいに書けた文章だけではありません。消して書き直した跡や、途中から文字が小さくなったところ。何を書こうか迷ったことが分かる部分を見つけると、そのときの息子の姿まで思い出せました。
だから、毎年頼んでしまっていたのだと思います。
最初の言葉で感じた違和感
今年の封筒も、居間で受け取りました。
「読み上げてもいい?」
そう聞くと、息子はうなずきました。便箋を開き、最初の言葉を読みました。
「母さんへ」
そこで、いつもの手紙とは違うと感じました。息子は昔から、私を「かあちゃん」と呼びます。小学生のころの手紙も、去年も同じでした。
文章もきれいにまとまっていました。でも、誰かに書いてもらったものなのか、何かを参考にしたのかまでは分かりません。分かったのは、いつも息子が書く手紙とは少し違うということだけでした。
聞かなかった理由
その場で、「これ、本当に自分で書いたの?」と聞くこともできました。でも私は、便箋をたたみました。
「ありがとう。大事にするね」
息子は「うん」と返しました。その顔を見ていると、それ以上聞くことができませんでした。私は手紙を封筒へ戻し、棚の菓子箱に入れました。
指摘しなかったのは、息子に気まずい思いをさせたくなかったからだけではありません。毎年「書いてね」と頼み続けたことで、息子にとって手紙が楽しみではなく、やらなければならないことになっていたのかもしれない。
そう考えると、自分にも原因があったように思えました。
そして...
息子が帰ったあと、私は菓子箱を開きました。昔の手紙を1枚取り出すと、途中に何度も書き直した跡が残っています。しばらく読んだあと、今度は自分の便箋を出しました。
書き出しは「かあちゃんより」
返事を求めるためではなく、今度はこちらから近況を書いて送ってみようと思っています。来年の帰省が近づいても、「今年も書いてね」と言うかどうかは、まだ決めていません。
(50代女性・パート)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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