妻より先に起きて朝食を作り続けた俺が、手つかずの皿の前で気付いたこと
良かれと思って続けた食卓
結婚してから、俺は妻より先に起きて台所に立つようになりました。共働きで帰りの遅い妻に、出勤前くらいはゆっくりしてほしかったからです。味噌汁に焼き魚、それに小鉢。品数を増やすたびに「ありがとう」と言ってもらえるのがうれしくて、献立は少しずつ豪華になっていきました。妻の箸が進まない日があっても、疲れているのだろうとしか考えていませんでした。
箸を持たない妻
その日、席に着いた妻は、湯気の立つ皿を前にしたまま箸に手を伸ばしませんでした。
「ごめん。今日は食べられない」
「口に合わなかった?」
「そうじゃないの。作ってくれるのは、うれしいの」
妻はそれだけ言うと、コーヒーも飲まずに家を出ていきました。片付けをしながら、俺はどこで間違えたのかを考え続けました。手間を惜しんだ覚えも、味を落とした覚えもありません。むしろ、前より頑張っていたはずでした。
帰宅後に聞いた本音
その日の帰宅後、俺はリビングで妻に向き合いました。責めるつもりはなく、ただ理由が知りたかったのです。妻はマグカップに視線を落としたまま、ゆっくり話し始めました。
「起きたときから、食べることが決まっているのが苦しかったの」
「断ったら、あなたをがっかりさせると思って言えなかった」
妻にとって出勤前は、自分のペースで支度を整えたい時間だったそうです。それでも俺の気持ちはうれしくて、受け取るだけの毎日にも、もらってばかりの自分にも、落ち着かなさが積もっていたのだと言いました。
「気付かなくて、ごめん」
頭を下げた俺に、妻は首を振って「明日は、私に作らせて」と言いました。
「私も、あなたに用意したいの」
そして...
翌朝、台所に立ったのは妻でした。俺の前に置かれたのは、トーストとコーヒーだけの盆です。自分の分を好きな順番で口に運ぶ妻は、久しぶりに気持ちよさそうに見えました。あの日から、台所に立つ日は交代制です。妻の作る日は俺が受け取り、俺の作る日は妻がゆっくり味わってくれる。毎日でなくなっただけで、同じ食卓がこんなに軽くなるのかと思っています。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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