カスハラから人生を守る方法|第14回 知っておきたい法改正

社会保険や税金は、情報があふれている一方、実際に自分では何をどうすればいいのか、なかなか分からないものです。特にフリーランスや副業をしている人にとっては、制度が複雑で、どこから手をつければいいのか悩むことも多いはず。だからこそ、ポイントを絞って「これだけは確認しておこう」という手引があれば、とても心強いですよね。
そこで本連載では、社会保険労務士として多くの事例を見てきたAさんが、押さえておきたい基礎知識をやさしく解説。第14回はカスタマーハラスメント対策です。知らずに損をしないためにも、ぜひ一度確認してみてください。
10月義務化の「カスタマーハラスメント対策」と境界線

ここ数年で「カスハラ」という言葉を見聞きする機会が増えたな、と感じていませんか? 「接客業だけの話かな?」「自分の職場にも関係あるのだろうか」と気になっている方もいるかもしれません。
実は、この秋(2026年10月)から、働く人を理不尽な顧客トラブルから守るための「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策」が企業に義務付けられます。
「正当なクレーム」との違いはどこにある?

一番大切なのは、「正当なクレーム」と「カスハラ」を混同しないことです。商品やサービスに不備があり、改善を求める指摘は「正当なクレーム」です。これらは業務改善のヒントにつながる貴重な声でもあります。
一方で、以下のような「行き過ぎた要求や態度」が「カスハラ」に該当します。
•言葉の暴力: 人格を否定するような暴言や大声、SNSへの投稿をチラつかせる脅し
•過剰な要求: 土下座の強要や、お給料数ヶ月分といった法外な金銭要求
•時間の拘束: 居座りや、何時間にも及ぶ電話などで業務を妨害する行為
つまり、「内容に正当な理由があるか」だけでなく、それを伝える「手段や態度が社会通念上、適切かどうか」が境界線になります。

ただ、この境界線は「世代や地域による意識の差」によって曖昧になりがちです。「お客様第一」が美徳とされた時代を過ごした世代と、ハラスメント防止が当然とされる今の世代では、「これくらい普通だろう」という感覚がズレてしまうことも少なくありません。だからこそ、主観ではなく社会的な共通のルールが必要とされています。
取引先(BtoB)からの理不尽な要求も対象です

カスハラというと「お店と一般のお客様(BtoC)」の関係をイメージしがちですが、実は「企業同士(BtoB)」の関係も対象になります。例えば、発注元という強い立場を利用して、無理な納期を押し付けたり、担当者に理不尽な怒声を浴びせたりする行為も立派なカスハラです。
10月からの法改正にともない、会社には「従業員をカスハラから守るための体制づくり(相談窓口の設置やマニュアル作成など)」が義務付けられます。万が一トラブルが起きたとき、会社は「従業員の味方」として組織で対応することが求められているのです。
私たち自身も「無自覚な加害者」にならないために

このルールは、働く私達を守ってくれる強力な盾ですが、同時に私達自身が買い物をする時や、他社への発注者側になった時には、注意する意識も必要となります。
お店や取引先のミスに対して、つい強い口調になってしまうことは誰にでも起こり得ますが、「自分も無自覚に相手を追い詰めていないか」と、少しだけ客観的になる冷静な視点を持ちたいですね。
「お客様は神様」の時代から、「働く人もお客様も、お互いを尊重し合う」時代へ。今回の法改正は、誰もが安心して働ける職場環境を作るための大切な一歩です。
教えてくれた人社労士AWAWA
大阪市内の企業で働く経験豊富な社会保険労務士
※規則により掲載内容のお問合せには個別対応出来ません。
※この記事は2026年7月31日現在の法令に基づく内容となっております。
写真/ピクスタ 文/社労士AWAWA
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