「気になるなら消せばいいでしょ」貸した本を書き込みだらけにした友人に、私が送った最後の1通
楽しみにしていた貸し出し
学生時代からの友人とは、月に1度ほど食事に行く仲でした。「話題になってたあの小説、私も読んでみたいな」。チャットでそう言われたのは、私がその本の感想をSNSに載せた直後のことです。発売日に買って、大切に読んできた1冊。次に会った日、私はカバーをかけたまま手渡しました。「貸してくれてありがとう。じっくり読ませてもらったよ。郵便受けに入れておいたからね」。そのメッセージが届いたのは、貸してから2週間ほど経ったあとです。
ページをめくるたびに
郵便受けから取り出した本は、表紙だけ見れば元のままでした。けれどページをめくるたび、漢字の上のフリガナ、段落の横の線、余白の小さなメモが目に入ってきます。特に気に入っていた箇所にも、濃い線が2本引かれていました。私は写真を撮って送りました。「本に書き込みした?」。返ってきたのは「読みながら線を引くのが癖なんだよね」という返信でした。続けて「気になるなら消せばいいでしょ」と届きました。画面の向こうで彼女がどんな顔をしているのか、想像もつきませんでした。
たかが本、と言われて
「借りたものに書き込むのは違うと思う。同じ本を新しく買って返してほしい」。迷いながらも、そう送りました。返ってきたのは「たかが本でそこまで言う?」という言葉でした。それきり、既読はつくのに返信は止まりました。数日待って、私は書店のサイトで同じ本の値段を調べ、リンクを添えてメッセージを送りました。「本の代金を送ってください。これで最後にします」。長い付き合いを終わらせる文面にしては、あっけないほど短いものでした。
そして...
数日後、送金アプリに彼女の名前が表示されました。メッセージ欄には「送った」とだけあります。私は同じ本を新しく買い直し、書き込みのある1冊は箱にしまいました。連絡先は残していません。それでも、特に大切にしていた場面へ引かれた線だけは、今も時々思い出します。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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