後輩のお礼メールに「一緒に作った肉じゃが」、知らない思い出を訂正した私が最終出社日に渡した1枚
同じ調子のメールたち
営業事務として10年働いた会社を、私は今月で退職します。引き継ぎ相手は、入社時に私がメールの書き方を教えた後輩でした。半年ほど前から、彼女のメールはどれも同じ調子になっていました。丁寧で、整っていて、誰宛でも使い回せる文面。生成AIだろうと察しはついていましたが、私は指摘しませんでした。辞める人間が口を出すことでもないと、波風を立てない理由を自分に用意していたのです。
知らない思い出への返信
退職の挨拶メールを送った日、彼女からお礼メールが届きました。文中に「先輩と一緒に作った肉じゃがの味を、今でも思い出します」とあります。そんな思い出はありません。私が教えたのはメールの書き方です。放っておくこともできましたが、作られた思い出にお礼を返すのは彼女にも失礼だと思い、返信しました。「気持ちはうれしいです。でも私、あなたと肉じゃがを作ったことは一度もないですよ」。送ってから、言い方がきつくなかったかと、自分の文面を読み返していました。
届いた4行
翌日、彼女から4行の返信が届いていました。「今まで本当にありがとうございました。メールの書き方を教えてくれたのは先輩でした。今度は全部自分で書きました。4行だけですが、本心です」。彼女が入社して初めて私に送ってきたメールは誤字だらけで、それでも用件と気持ちは伝わる文面でした。もっと早く伝えるべきだったのはこちらの方だと認めながら、私は返信しました。「その4行が一番うれしいです」
そして...
最終出社日、私は誤りだらけの、彼女が入社して初めて私に送ったメールを印刷した紙を持って、彼女の席へ持って行きました。「これ、あなたの1通目」。渡した理由は言いませんでした。言わなくても、あの4行を書けた彼女なら分かると思ったからです。今も時々、あのメールの画面を開いています。開くたび、教わっていたのは自分の方でもあったと思い直しています。
(30代女性・営業事務)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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