「あなたと肉じゃがを作ったことは1度もないですよ」お礼メールをAIに任せた私に届いた、先輩の返信
教わったはずの書き方
入社したての頃、私のメールは誤りだらけで、先輩に赤を入れてもらいながら書き方を覚えました。それなのに、いつからか社内のお礼メールは生成AIに任せるようになっていました。要点を打ち込めば丁寧な文面が仕上がり、浮いた時間で別の仕事が進む。疑問を持ったことは一度もありませんでした。先輩から退職の挨拶メールが届いた日も、私は「感謝が伝わるエピソードを入れて」と打ち込み、出てきた文面をろくに読まないまま先輩へ送りました。
身に覚えのない思い出
数分後、先輩から返信が届きました。「気持ちはうれしいです。でも私、あなたと肉じゃがを作ったことは一度もないですよ」。慌てて送信済みのメールを開くと、そこには「先輩と一緒に作った肉じゃがの味を、今でも思い出します」と書かれていました。AIが作った、存在しない思い出でした。私は先輩への感謝を、機械が想像した嘘で語っていたのです。先輩の姿が見えるのに、席を立つ勇気が出ませんでした。
書き直し
その日の終業後、私は誰もいない事務所でメールを打ち直しました。書いては消してを繰り返し、残ったのは4行でした。「今まで本当にありがとうございました。メールの書き方を教えてくれたのは先輩でした。今度は全部自分で書きました。4行だけですが、本心です」。送ってから、最初の下書きより何倍も時間がかかったことに気づきました。翌日出社すると、先輩から短い返信が届いていました。「その4行が一番うれしいです」
そして...
先輩の最終出社日、荷物をまとめた先輩が私の席に来て、黄ばんだ紙を1枚差し出しました。「これ、あなたの1通目」印刷されていたのは、誤りだらけの、私が入社して初めて先輩に送ったメールでした。捨てずに持っていてくれた人に、私は機械の文章を返したのだと思うと、顔を上げられませんでした。あの紙は今、デスクの引き出しに入っています。効率より先に確かめるものがあると、忘れないためです。
(20代女性・営業事務)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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