「今さら大学なんて」と笑った夫が、私の卒業式の日に用意していたもの
食卓に広げた募集要項
私は40代の事務パートで、子どもが手を離れたのを機に、通信制大学で学び直すと決めました。4年前、食卓に募集要項を広げて夫に伝えると、返ってきたのは「今さら大学なんて」という笑いまじりの一言でした。学費は自分のパート代から出すこと、家のことは今までどおりにすること。それだけを言い切って、私は募集要項を引き出しにしまいました。夫はそれ以上なにも聞かず、テレビに目を戻しました。
台所のテーブルが教室になった
反対を押し切ったといえば聞こえはいいのですが、実際はただの平行線でした。パートから帰って夕食を片付けたあと、台所のテーブルが私の教室になりました。レポートの締切前は、湯船より先にテキストを開く日もありました。試験のたびの有休と、乗り継ぎの電車。それが私の通学でした。あるとき、勉強中の私の背後に夫が立ち、テキストを覗き込む気配がしました。私は振り向かないまま「あなたには、どうせわからない」と返しました。足音が遠ざかり、それきり、この家で学びの話は出なくなりました。試験の日程も、提出の結果も、私は1人で抱えると決めたのです。
冷蔵庫に貼った知らせ
最後のレポートの評価が届いた日、卒業確定の通知を冷蔵庫の扉に貼りました。言葉で報告する代わりの、私なりの意地でした。夫は貼り紙の前で麦茶を注ぎ、なにも言わずに部屋へ戻っていきました。式の案内には同伴者の欄がありましたが、私は空欄のまま返送していました。
そして...
卒業式の朝、食卓に見慣れない茶封筒が置かれていました。中に入っていたのは、折り目のついた大学の願書でした。氏名の欄は、見慣れた夫の字で埋まっていました。付箋が2枚、貼ってありました。「あのときは笑って悪かった」「俺も今さら、始めてみる」。読み終えて最初に出たのは笑い声で、そのせいで、仕上げたばかりの目元をもう一度直すことになりました。私は付箋を手帳に挟み、願書を卒業式へ持っていく鞄に入れて、メッセージを1つ送りました。「帰りに、願書を一緒に出しに行こう」。返事は待たずに、玄関の鍵を閉めました。
(40代女性・事務パート)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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