「お忙しい中、ご返信ありがとうございます」敬語を崩さないSNSの彼、挨拶抜きで送った質問への長い沈黙
崩れない敬語
写真好きが集まるSNSで彼と知り合ったのは、数カ月前のことでした。私の投稿に寄せてくれる感想が丁寧で、やりとりはそのままメッセージ機能に移りました。ただ、彼の文面はいつも「お忙しい中、ご返信ありがとうございます」で始まりました。誤字はなく、絵文字もありません。共通の趣味の話題は尽きないのに、敬語だけは何往復しても崩れませんでした。年齢も趣味も近いはずなのに、文面の上ではずっと初対面のままでした。
増えていくお礼の言葉
距離を縮めたくて、私はわざと軽い言い回しで返してみました。絵文字を足して、文末をゆるめて。それでも返ってくる文面は変わりませんでした。むしろ行数が増えて、お礼の言葉が1つ多くなっていました。壁を作ろうとしているのかもしれない。そう思い始めてから、返信の下書きを送らないまま閉じる日が増えました。共通の知人がいるわけでもなく、彼の丁寧さの理由を確かめる方法は、本人に聞くことだけでした。
短い質問を1つだけ
迷った末、私は挨拶も前置きも抜きにして、短い質問だけを送りました。「もしかして、私に気を使っていますか?」。既読の印はすぐにつきました。それなのに、返信は届きませんでした。食事を終えても、お風呂から上がっても、通知は鳴らないままでした。諦めて画面を伏せたころ、ようやく彼からのメッセージが届きました。「送る前に、いつも文章を書き直しています。失礼なことを書いてしまったら、このやりとりが終わってしまう気がして」。長い敬語の代わりに、飾りのない言葉がそこに並んでいました。その文章を、私は画面が暗くなるまで眺めていました。
そして...
私は少し考えてから、返事を送りました。「敬語、なしにしませんか?」。次に届いたのは、短いメッセージでした。「今度の写真展、一緒に行かない?」。今、私のスマホには、句点で終わらない彼の文章が増えています。壁だと思っていたものは、彼なりの緊張だったのだと、待ち合わせの日付を見返すたびに思います。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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