「気づかなかった」と嘘をついた俺が、彼女の曲だけ消さなかった本当の理由
思い出ごと、消すしかなかった
別れたあと、あのプレイリストを開くのが怖くなりました。再生すると、彼女と過ごした場面がそのまま戻ってくるからです。旅先の車で笑っていたこと、俺が選んだ曲に文句をつけられたこと。1曲ごとに、その記憶が引きずり出されました。
だから俺は、自分が足した曲も、2人で見つけた曲も、順番に消していきました。聞くのがつらいものを、手元から減らしていくしかなかったのです。
その曲だけは、残してしまった
ところが、彼女が好きだった曲だけは、どうしても消せませんでした。あの曲たちは、2人の思い出というより、彼女そのものでした。家で口ずさんでいた横顔や、片耳のイヤホンを差し出してきた仕草が、メロディと一緒に残っているのです。これを消したら、彼女のことまで終わってしまう気がしました。
だから俺は、その何曲かには触れず、そのまま残しました。要らなかったからではありません。むしろ、最後まで手放せなかったのが、その曲たちでした。
本当のことは、書けなかった
そんなとき、彼女からのメッセージが届きました。
「私の好きな曲だけ、残ってたよ」
その一文を、何度も読み返しました。気づいていないわけがありません。1曲ずつ選んで、彼女の曲だけをよけて残したのは、俺自身なのですから。
返信の入力欄に、正直な理由を打っては消し、また打っては消しました。けれど結局、送れたのは「気づかなかった」のひとことでした。素直に書けない自分の弱さを、送信したあとで思い知りました。
そして...
今でも、あのプレイリストは俺のところにも残っています。彼女の好きだった曲が並んだまま、順番1つ変えていません。たまに再生しては、消さなくてよかったと、1人で思っています。あのとき言えなかった理由を、今も伝えられずにいるのは、たぶん、まだ諦めきれていないからです。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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