結婚5年目の記念日、「今日は出前でいい?」と言った夫の机で見つけた1冊のノート
「そのうち言い出すはず」の朝食
先月あたりから、夫は書斎のパソコンを私が入るとすぐ閉じたり、電話をキッチンから廊下へ移して話したりする素振りが増えていました。てっきり記念日の何かを企てているのだと信じていた私は、丸5年目の当日を少し浮ついた気持ちで迎えました。
ところがトーストを口に運ぶ夫は、いつもと変わらない相づちしか返してくれません。「今日、いい天気だね」と話しかけても、「そうだね」と短く返ってくるだけでした。そのうちきっと何か言い出すはずだ。私は自分にそう言い聞かせていました。
「今日は出前でいい?」で終わった1日
2人で出かけた買い物の帰り、「どこか外に食べに行こうか」と切り出しても、夫は「疲れてるからいいかな」と首を振りました。家に着いてから、夫は台所に立ちながら「今日は出前でいい?」と聞いてきました。私は「うん、いいよ」とだけ答えました。
届いたカレーを2人で食べている間、夫はテレビの野球中継をぼんやり眺めています。あの気配は勘違いだったのかもしれない。そう思うと、カレーの味が急に薄く感じました。
メッセージプレートに書けなかった一言
食後に充電ケーブルを取ろうと寝室へ入り、夫の机の引き出しを開けた時でした。中に、私の見覚えのない1冊のノートが入っています。開いてみると、店の名前がぎっしり並び、そのほとんどに横線が引かれていました。
ページをめくると、「レストランのメッセージプレートに書いてもらう一言」という走り書きがありました。その下には、「妻へ、5年間ありがとう」と書いては消した跡がいくつも並んでいます。
書きすぎで色の変わったページに、私は少しの間、指先を置いていました。責めたかった気持ちが、そのページの前で少しずつほどけていきました。ノートを元に戻して、私はリビングの夫に「先に寝るね」とだけ声をかけました。
そして...
翌日、コーヒーを淹れながら、私は自分から「昨日、記念日だったね」と切り出しました。夫は「予約が取れなくて、言い出せなかった」と、机の1点を見つめたまま答えました。
書き終わらなかった一言に何度も上書きしていた夫のことを、私はもう責められませんでした。それでも私たちは、記念日には店を決めずにとりあえず出かける、という決まりを作りました。書き終わらなかったあの一言は、次の記念日に、きちんと聞かせてほしいと思っています。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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