「私ドリンクだけでいいから、一口もらうね」毎回そう言う友人が、店員の前で初めて黙った
いつもの一言
友人とは月に1度、気になるカフェを巡るのが続いています。予約を入れるのはいつも私で、友人はメニューの写真だけ確認して「私ドリンクだけでいいから、一口もらうね」と送ってきます。最初は気にしていませんでした。でもいつからか、自分の注文をフォークで切り分けやすいものから選ぶようになっていたのです。タルト、プリン、フルーツサンド。おいしそうかどうかより、半分に取り分けやすいかどうかが、私の注文基準になっていました。
注文カウンター
その日のカフェは、予約の取りにくい人気店でした。席に通される前に、カウンターで1人ずつ注文を済ませる形式です。私がフルーツタルトとコーヒーを頼んだあと、友人はメニューを開いて「カフェラテを1つ」とだけ告げました。「フードは頼まないの?」と聞くと、友人はカウンター越しに「いいよ、一口もらうから」と笑いました。
その声は私に向けたものでしたが、隣にいた店員にも届いていました。「恐れ入りますが、お1人様1品フードメニューをお選びいただいております」。店員の声は穏やかなまま、けれど揺らぎませんでした。「あ、そうなんですか」。友人はメニューを開き直し、「じゃあ1番小さいのでいいです」と、いちばん下の段にある焼き菓子を指差しました。席につくまで、友人は一言も口を開きませんでした。
友人からのメッセージ
帰宅後、友人からメッセージが届きました。「あの店員、感じ悪くなかった?」何度か文章を打っては消して、結局こう送りました。「私もいつも、ああいう気持ちだったよ」
既読がついたまましばらく返信はなく、数分後に「え、どういうこと?」というメッセージが届きました。続けて「言ってくれればよかったのに」読み返しても、友人の視線は「自分がしてきたこと」ではなく「言わなかった私」に向いていました。
そして...
翌週、友人からカフェの誘いが届きました。メニューの写真と一緒に「今回は私もフード頼むね」と添えてあります。変わったのかどうかは、まだ分かりません。ただ返信を打つとき、切り分けやすさを考えなくなっている自分には気づいていました。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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