勧めたお店を「たいしたことないね」と笑う友人→私が気づいたこと
見つけたお店
友人とは学生時代からの付き合いです。おいしいお店はいつも友人が見つけてきて、私は連れていってもらう側でした。友人のおすすめに外れはなくて、私はいつも「さすがだね」と言っていました。
ある日、会社近くの路地で小さなイタリアンを見つけました。白い壁に手書きのメニューが貼ってあるだけの、目立たないお店です。1人で頼んだカルボナーラがおいしくて、帰り道にメッセージを送りました。「すごくおいしいお店見つけたの。今度ランチ行かない?」。「いいよ、行こう」とすぐ返事が届いて、窓際の席を予約しました。自分で見つけた店を誰かに伝えるのは、これが初めてでした。
あの一言
当日、私が先にお店に着いて待っていました。友人が来てメニューを開こうとしたところで「ここのカルボナーラ、おすすめなの」と伝えると、友人はうなずいて同じものを注文しました。
料理が届きました。友人がフォークでパスタを巻き、口に運ぶのを、私はグラスの水を飲むふりをしながら見ていました。一口食べた友人が顔を上げました。笑いながら言ったのは「たいしたことないね」でした。
「そう、かな」。それだけ答えて、私は自分のお皿に目を落としました。友人はもう別の話を始めていましたが、さっきまでおいしかったカルボナーラの味が、急に遠くなっていました。残りの食事の間、私はフォークを動かしながら、友人の話にあいづちだけを返していました。
帰り道
食事を終えて店を出ました。駅まで並んで歩きながら、友人は最近観たドラマの話をしていました。私はうなずきを返しながら、頭の中ではあの一言がずっと繰り返されていました。
改札の前で「ごちそうさま」と手を振って友人と別れました。ホームに立って、ようやく引っかかっていたものの正体がわかりました。おいしいと思ったから誘った、それだけのことなのに、友人に「おいしいね」と言ってもらえなかったことがこんなに苦しい。
服を選ぶときも、旅行先を決めるときも、私はいつも友人の返事を待ってから安心していたのだと気づきました。友人の「いいね」がなければ、自分の選択に自信が持てなかった。
そして...
数日後、1人であのイタリアンに入りました。同じカルボナーラを注文して、一口食べました。おいしい。やっぱりおいしいと思いました。
友人に認めてもらいたかっただけでした。でも「おいしい」は私が感じたもので、誰かにうなずいてもらわなくても消えたりしないものでした。お店の人に「おいしかったです」と伝えて、席を立ちました。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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