「鍵はまだ渡せないんだ」彼にそう言われた私が、そのまま引っ越しの日を迎えた話
鍵を持っているのは、彼だけ
付き合って3年になる彼と、同棲する部屋を借りました。家具の配置を考えたり、カーテンの色を相談したりして、2人の暮らしが始まることを楽しみにしていました。
けれど、契約のときに受け取った鍵は、いつのまにか彼がまとめて持っていました。採寸のために新居へ行ったときも、玄関を開けるのは彼です。
私も住む部屋なのに、自分の鍵が手元にありません。メジャーで窓の幅を測りながらも、そのことばかり気になっていました。
「まだ渡せない」の意味
私は「私の分の鍵は?」と聞きました。彼は採寸メモを見ながら、「鍵はまだ渡せないんだ」と答えました。
理由を聞いても、返ってきたのは「気にしないで」だけでした。これから一緒に暮らす場所なのに、私は彼の部屋に入れてもらっている人のように感じました。
家具を選ぶ話も、収納の相談も、前ほど楽しく聞けなくなりました。鍵を持てないままでは、この部屋を自分の家だと思えない気がしたのです。
引っ越しの日に差し出された鍵
引っ越しの日に差し出された鍵
その後、私は鍵のことを口にしませんでした。彼も触れないまま、引っ越しの日を迎えました。
荷物を運び込む合間に、彼が「これ」と手を出しました。そこにあったのは、革のキーホルダーがついた鍵でした。革には、付き合った日付が小さく入っていました。
彼は「やっと渡せるよ」と言いました。キーホルダーが出来上がるのを待っていたのだと、そのとき知りました。私を喜ばせるためだったことは分かりました。でも、それまで私が抱えていた不安まで消えるわけではありませんでした。
そして...
新しい部屋で、私はその鍵を何度も見ました。記念日を入れてくれたことはうれしいです。けれど、最初に理由を話してくれていたら、私は新居の玄関であんな気持ちにならずに済んだと思います。
サプライズは、受け取るまでの時間も含めて相手に渡るものです。彼の準備が優しさだったとしても、知らされない側には別の意味に見えることがあります。
今は、鍵を自分のバッグに入れています。ようやくこの部屋に入る理由を自分で持てた気がします。次に大事なことを決めるときは、演出より先に、2人で安心できる言葉を交わしたいです。
(20代女性・会社員)
本人記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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