彼の予約確認に並んでいたのは→よりによって、私がいちばん苦手な窓際の席だった
予約は取れた、と彼は言った
「予約は取れたよ。窓際の席、お願いしておいたから」
彼からのメッセージは、そんな一文で締めくくられていました。お店が取れたのは嬉しいはずなのに、私はすぐに返信を打てずにいました。窓際の席。それは、私がいちばん落ち着かない場所だったのです。
言えないまま、苦手な席だけが残った
あのお店の窓際は、入口の風がまっすぐ届く席です。以前に座ったときは、最後まで上着を脱げませんでした。人の出入りも近くて、料理の味より周りの動きにばかり気を取られてしまう。けれど私は、その苦手を彼にはっきり伝えたことがありませんでした。わざわざ言うほどでもないと、自分でのみ込んできたのです。
だからこそ、彼が選んだのが他でもないあの席だったことに、引っかかってしまいました。最近の彼は仕事が立て込んでいて、連絡も短くなりがちでした。私のことなんて、もう細かく気にかけていないのかもしれない。そんな考えがよぎって、それでも私は「ありがとう、楽しみにしてるね」とだけ返しました。
向かった先で、彼が口にした言葉
約束の日、案内されたのはやはりあの窓際の席でした。私は上着を膝にかけ、いつもより姿勢を正して座りました。向かいの彼は、メニューを開いたり閉じたりして、どこかそわそわした様子です。注文を終えてしばらくして、彼が窓の外に目をやりながら言いました。
「ここ、初めて二人で来たとき座った席だよ」
私が黙っていると、彼は続けました。
「どうしても同じ席がよくて、無理を言って頼んだんだよ」
覚えていなかったのは、私のほうでした。
そして...
「二年、付き合ってくれてありがとう」
そう言われて、私はやっと、自分が何を不安がっていたのかが恥ずかしくなりました。彼は私を気にかけていないどころか、二人の始まりの場所をわざわざ選んでくれていました。苦手だと一度も言わなかったのは私で、その沈黙を、彼は彼なりのやさしさで埋めようとしてくれていました。
次に気になることがあったら、のみ込まずに口にしよう。膝の上で小さくなっていた上着をたたみ直しながら、私はそう決めました。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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