彼女の誕生日に「作業」の予定を入れた僕が、その日の終わりに気づいたこと
自分の手で作りたかった
僕たちは付き合って二年、一緒に暮らし始めて半年になります。誕生日が近づいてきて、僕はどうしても、ありきたりではないものを贈りたいと思っていました。
以前、何気なく選んだ贈り物を渡したとき、彼女は笑ってくれたけれど、自分の中ではどこか物足りなさが残っていました。彼女には、もっと特別な気持ちを形にして伝えたい。本棚がほしいと前に話していたのを思い出し、それなら自分の手で作ろうと決めたのです。
正直に言えば、買ったものではなく、手間をかけたものでなければ、僕の気持ちは本物だと思ってもらえない気がしていました。
あえて、そっけなく返した
作業には丸一日かかりそうで、当日の予定を空けておく必要がありました。共有カレンダーは彼女の目にも触れるのに、本当の中身を知られたくなくて、僕はあえて「作業」とだけ書き込んだのです。
作業を始めてから、僕は彼女に少しよそよそしくしてしまっていました。驚かせたい気持ちが先に立って、出かける理由もはっきり言えなかったのです。
そんなとき、彼女から画像とメッセージが届きました。「この日って、なにか予定入れちゃったの?」本当は、その日が彼女の誕生日だと、僕はちゃんとわかっていました。それでも勘づかれたくない一心で、「ごめん、その日はずっと作業の予定なんだ」と、わざとそっけなく返しました。
完成したときの顔を想像すれば、今は隠し通すほうがいいと思い込んでいたのです。あの短い返信が彼女をどれだけ不安にさせていたか、当時の僕は何も考えていませんでした。
その日の終わりに
誕生日の当日、僕は早くから借りた作業場にこもりました。「今日はちょっと遅くなる」とだけ伝えて家を出ましたが、彼女の表情が少し曇ったのには気づいていました。それでも、完成すればすべて報われると、自分に言い聞かせていたのです。
仕上げに思ったより手間取り、家に帰るころにはずいぶん遅くなっていました。出来上がった本棚を抱えて、僕は彼女に見せました。「ずっと、これを作ってた」そう告げたとき、彼女はうれしそうにしてくれました。
けれど、その目には、さみしさのようなものも浮かんでいたのです。
そして...
彼女は本棚を前に、こう言いました。
「ほしかったのは、一緒に過ごす時間だったんだよ」
その言葉で、ようやく気づきました。僕は彼女を喜ばせたかったはずなのに、いつのまにか、立派なものを作れる自分を認めてほしいだけになっていたのかもしれません。彼女の誕生日を、自分の都合で埋めてしまっていたのです。
「そうだよな。ごめん」そう返すのが、精いっぱいでした。贈り物は、気持ちを伝える手段のひとつにすぎません。隣にいる時間そのものが、いちばんの贈り物だったのだと、この日にようやく学びました。
次の誕生日は、まず彼女に、どう過ごしたいかを聞くところから始めようと思います。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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