優しさのつもりが、いちばんずるい逃げでした。好きな人を振った僕が予約した店
告げられなかった事情
彼女とは、共通の友人を通じて知り合いました。二人で会う時間が増えるほど、僕の中で彼女の存在は大きくなっていきました。けれど僕には、遠くの支社へ移ることがすでに決まっていたのです。中途半端な関係で彼女を縛りたくない。そう考えた僕は、帰り道で足を止めて「好きだけど付き合えない」と告げました。
彼女が「好きなのに、どうして」と聞いても、異動のことは言えませんでした。心配をかけたくないというより、去っていく自分を情けなく思われたくなかったのだと思います。だから僕は「ごめん、うまく言えない」と繰り返すことしかできませんでした。
振ったあとの予約
彼女と別れて家に帰っても、気持ちはちっとも晴れませんでした。これで彼女は自由になれる。そう自分に言い聞かせるほど、小さな後悔ばかりが積もっていきます。
気づけば僕は予約サイトを開いて、彼女が前から行きたがっていた店を探していました。そして「この前行きたいって言ってた店、予約取れたよ」とメッセージを送ったのです。付き合えないと言ったばかりなのに、矛盾しているのは自分でもわかっていました。
それでも、去る前にもう一度だけ彼女と過ごす時間がほしかった。今思えば、それは彼女のためではなく、僕自身のための予約でした。
優しさという逃げ
彼女のために身を引いたつもりでした。けれど本当は、きちんと事情を話して、それでも待っていてほしいと頼む勇気がなかっただけなのです。振られた理由もわからないまま、彼女がどれだけ戸惑ったか。そこまで考えが及んでいませんでした。
自分で決めて、自分で線を引いて、優しい男のふりをして去る。いちばん傷つかずに済むのは、いつだって僕のほうでした。予約という優しさも、結局は自分を守るための逃げ道だったのだと、ようやく気づいたのです。
そして...
予約の確認メッセージは、今もスマホの中に残っています。彼女からの返信は、まだありません。僕がすべきだったのは、店を予約することではなく、遠くへ行くと正直に伝えることでした。彼女に選ぶ機会さえ渡さず、勝手に答えを出してしまったのです。その身勝手さを、もう一度だけやり直したいと思っています。
次に彼女と話せたら、今度はうまく言えないなんて言わずに、本当のことを伝えるつもりです。優しさではなく、正直さを。それが、振り回してしまった彼女への、せめてもの誠実さだと信じています。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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