過去の苦い経験から派遣を信頼できなかった私が、本当に頼るべき人を見誤っていた話
3年前の出来事
3年前、私のチームに来ていた派遣社員が、業務で扱った顧客リストを退職後にコピーして持ち出していたことが発覚しました。大ごとにはなりませんでしたが、社内には注意喚起が回り、私の評価にも傷がつきました。
あの時以来、私は派遣社員に個人情報を扱わせないと決めていたのです。新しい派遣の方が来てくれた時も、同じ線を引きました。
「派遣さんには個人情報は見せられないの。ごめんね」
本人には申し訳ないと思いつつ、何度も同じ言葉を繰り返しました。経歴を見ればしっかりした方なのは伝わってきましたが、私の中のブレーキが外れなかったのです。
誤送信の連絡が入った日
ある日の午後、隣の席の正社員から「やってしまった」と細い声が漏れました。顧客名簿のファイルを、社内の別部署ではなく取引先業者に送ってしまったというのです。頭の中が一気に騒がしくなり、何から手をつけるべきか順序が組み立てられなくなりました。
正社員の彼女もパニックで、私たち二人とも電話を握ったまま画面を見つめるだけ。普段なら冷静に動ける場面なのに、自分のチームで起きたという動揺が大きすぎて、判断が止まってしまったのです。
視線の先で、いつもコピー機の前にいる派遣の方が、こちらの様子をじっと見ていました。
「力を貸してくれる?」
気づけば私は、派遣の方の席の前に立っていました。
「ごめんなさい、力を貸してくれる?」
普段の自分なら絶対に派遣の人に言わないはずの一言を、私はぎこちなく口にしていました。
「もちろんです」
短い返事のあと、彼女はパソコンの前に座り、私たちが組み立てられずにいた手順を、ひとつずつ落ち着いて整えていきました。取引先への連絡、削除依頼、上長報告、再発防止案。前職で同じような事案を経験したのだと、後から知りました。
「派遣さんって、こんなことまで……」
思わずこぼれた言葉に、彼女は黙ってキーボードを叩き続けました。あの沈黙の意味を、私はずっと忘れられません。
そして...
3年前の件をきっかけに、肩書きで人を測ることをやめられなかった自分が、ずっと同じ場所に留まっていました。目の前にいた人がどんな経験を積んできた人なのか、見ようともしませんでした。
翌週から、私は少しずつ業務を渡し始めました。「これ、お願いしてもいい?」と切り出すたび、自分の3年間の頑なさが恥ずかしくなりました。彼女は「いえ、お互いさまですから」とだけ答えてくれます。
お互いさまではないと、本当はわかっています。それでも、その一言に救われている自分がいるのです。
(40代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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