「派遣さんに個人情報は見せられない」と信頼されない私→情報漏洩事件で評価が一変した
取り上げられた仕事
「派遣さんには個人情報は見せられないの。ごめんね」
リーダーから何度も告げられた言葉でした。私の業務はコピー取り、シュレッダー、来客のお茶出し、備品発注。前職では顧客対応も契約管理もこなしていたのですが、ここでは資料の中身を見ることすら許されませんでした。
引き継ぎ資料を渡されかけては、すぐにリーダーの手で取り上げられる日々。最初の数週間は「派遣だから仕方ない」と割り切ろうとしました。けれど、隣の席の正社員が片手間に処理する書類のミスを目にするたび、悔しさだけが積もっていったのです。
一通の誤送信メール
派遣で入って3カ月が経った頃、社内が一気に騒がしくなりました。リーダーの隣に座る正社員が、顧客名簿の入ったファイルを取引先業者に誤送信してしまったのです。「やってしまった」と漏らす正社員と、青ざめたまま画面を見つめるリーダー。
送信先は本来、社外の業者ではなく社内の別部署でした。電話を取るべきか、メールで取り下げを依頼するべきか、誰がどう動くべきか、判断が止まったまま時間だけが過ぎていきました。私はファイルを見せてもらえなかった人間です。口を出していい立場ではないと思いました。
「力を貸してくれる?」
青ざめた顔のリーダーが、ふいに私の席まで来ました。
「ごめんなさい、力を貸してくれる?」
それまで聞いたことのない、低い言い方でした。「もちろんです」とだけ返し、私はパソコンの前に座りました。前職で同じような誤送信事案に対応した経験があったのです。
まず取引先への連絡文面を整え、削除依頼と受領確認の手順を組み立てました。社内向けの第一報、上長への報告、再発防止案のたたき台までを、その日のうちにまとめ上げました。
リーダーは「派遣さんって、こんなことまで……」と呟いて、それから口を閉ざしました。
そして...
翌週から、リーダーの態度が変わりました。「これ、お願いしてもいい?」と、それまで取り上げていた業務を少しずつ渡してくれるようになったのです。気まずさを抱えながら頭を下げてくる姿に、私は「いえ、お互いさまですから」とだけ答えました。
派遣という肩書きで、人は人を測ろうとします。けれど、本当に頼られるのは肩書きではなく、いざという時の振る舞いなのだと思いました。あの誤送信事件は誰の得にもなりませんでしたが、私にとっては、ようやく「人として」見てもらえた瞬間でもあったのです。
(30代女性・派遣社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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