「ごはん作らないの?共働きだから?」嫌味な親戚を黙らせた、夫の『自作レシピノート』
お茶が運ばれてきた席で、伯母が口を開いた
夫の親戚には年配の方が多くいらっしゃいます。中でも夫の伯母は、昔から少し言葉のきつい方だと聞いていました。会食の席で、私は伯母の真向かいに座っていたのです。お茶が配られて、誰もが湯呑みに手を伸ばしたところで、伯母が私を見て、笑みを浮かべながら口を開きました。
「あなた、夫のごはん作らないの?共働きだから?」
場の空気が止まりました。座敷に並ぶ親戚の視線が一斉にこちらに向くのを感じました。私はとっさに、伯母の顔と湯呑みのあいだで視線を泳がせるしかありませんでした。
夫が箸を置き、リュックを開けた
私が曖昧に微笑むことしかできずにいたとき、隣の夫が腰を上げました。座敷の壁際に置いてあった、自分のリュックの方へ歩いていったのです。親戚たちが何が始まるのか、戸惑った様子で夫を目で追いかけていました。夫の母も、湯呑みを手にしたままじっと夫を見ていたのを覚えています。
夫はリュックの一番奥から、手帳サイズの青いノートを取り出して、戻ってきました。そして伯母の前で、そのノートを開いて見せたのです。
付箋だらけのページに、私の知らない3年があった
「これ、俺が書いてるレシピノートなんです」
夫が穏やかな声でそう言いました。ノートには付箋が何十枚も貼られ、ページは書き込みでびっしりと埋まっていました。豚の生姜焼き、味噌汁の合わせ方、煮物の火加減。日付と一緒に、丁寧な字でレシピが並んでいたのです。
「妻が忙しい日は俺が作るんで、勝手にメモして増やしてるんですよ」
伯母は少しの間、ノートの表紙に目を落としてから、「あら……そう」とだけ言って湯呑みを口に運びました。私は、夫の手元のページから目を離すことができませんでした。
そして…
会食を終えて、帰りの電車に揺られながら、私は夫に聞きました。「あのノート、いつから書いてたの?」夫はしばらくして「結婚した時から少しずつ」と答えました。続けて、こう言ったのです。「昔から、お母さんが伯母さんに同じこと言われるのをずっと見てて、何もできなかったから」窓の外を流れる景色を見ながら、夫の言葉を心の中で何度も繰り返しました。
今日の伯母の言葉に、夫はとっさに動いたのではなく、ずっと前から準備していたのだと知りました。私が知っていたのは、3年分の結婚生活だけです。けれど夫のあのノートには、夫がうつむいていた時間まで、そっと挟まれているような気がしました。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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