「親は何してるの」と心の中でこぼした私→レジで見た母親の姿に立ち止まった話
走り回る子と、追いかける母親
その日は仕事を終え、夕飯の材料を買おうとスーパーに立ち寄った夕方のことです。野菜売り場の前で、3歳くらいに見える男の子が大声を上げながら通路を走り回っていました。お菓子のコーナーまで駆けていったかと思うと、また戻ってくる。その後ろを若い母親らしい女性が「待って」と追いかけています。
「すみません」と頭を下げる母親の姿は見えました。けれど私の頭には、「親は何してるの」と、つい厳しい言葉が浮かんできました。お母さんなら、ちゃんと手をつないでおくのが当たり前。そう思っていたのです。
「ごめんね、お母さん仕事終わったばっかりで」
しばらくして、ようやく男の子は母親の元へ駆け寄りました。母親は屈んで「走らないでって言ったでしょ」と諭しています。声を荒げるのではなく、冷静で芯のある声でした。
男の子は「ママ、お腹空いた」と母親の腰にしがみつきました。
その光景を、私はカートを押しながら遠目に眺めていました。母親が小さく息をついて、「ごめんね、お母さん仕事終わったばっかりで」と男の子の頭を撫でているのが見えました。何かが少し引っかかりました。
レジで見えたもの
会計を済ませるためにレジに並ぶと、ちょうど前の列にあの親子がいました。何気なく目をやって、私は思わず立ち止まりました。
コートの裾からのぞいていたのは、白いナースシューズと、ところどころにシワが寄った医療用の上着でした。鞄から伸びるストラップには、病院の名前が入った職員証がぶら下がっていました。
買い物カゴの中には、レンジで温めるだけの惣菜と、子どものおにぎり、それからおむつのパック。母親の目元には、隠しきれない疲労が浮かんでいました。
そして...
「親は何してるの」と心の中でこぼした自分の浅さが、じわりと自分の中に広がっていきました。
仕事を終えて、子どもをお迎えに行って、夕飯の用意のために走り回る子どもを連れて買い物。それを毎日繰り返している人を、私は「親失格」と判定していたのです。
家に帰る道すがら、自分が長年「お母さんなら〜であるべき」と思ってきたことが、誰かを追い詰める言葉でもあったことに気づきました。次にあの親子を見かけたら、いえ、見かけなくても、走り回る子どもを見かけたら、「親は何してるの」ではなく、「お母さん、お疲れさま」と心の中で言える人でいたいと思いました。
(50代女性・パート)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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