「遠くなるの?」「近くなる」と続いた一週間に振り回された僕が、最後に照れた話
彼女からの「来週引っ越すんだ」
夜の9時を過ぎた頃。仕事から帰って、ソファに座って一息ついたタイミングで、彼女からメッセージが届きました。
「来週引っ越すんだ」
彼女から事前に相談された記憶はありません。確かに今のマンションの更新時期だとは聞いていましたが、こんなに急な話だとは思っていませんでした。仕事の都合かもしれない。実家に戻ることになったのかもしれない。いろいろな可能性が頭に浮かんできました。
「近くなる」「秘密」に振り回された一週間
僕はすぐに「遠くなるの?」と送りました。気持ちが先走って、確認するような短い文になってしまいました。返ってきたのは「近くなる」のひとこと。
近くなる、とはどういう意味だろう。今でも電車で1時間の距離なのに、近くなるってどのくらい?5分?10分?それとも、もっと?
「どこ」と尋ねると、返ってきたのは「秘密」のひとことでした。普段は何でも話してくれる彼女が、なぜか今夜は教えてくれない。
「教えて」「気になるんだけど」とメッセージを重ねましたが、彼女からは笑顔の絵文字だけが返ってきました。引っ越し日は来週。それまでにきっと聞き出せる、そう思っていたのですが、結局その日まで彼女は答えてくれませんでした。
駅で渡されたメモの住所
住所は、当日になって駅で初めて教えてもらえました。
改札を出て僕を見つけた彼女が、住所の書かれたメモを差し出しました。受け取って確認してみると、僕の家から歩いて10分の場所でした。何度も見返してしまいました。これまで電車で1時間かけて会っていた相手が、これからは徒歩10分の距離にいる。何を言えばいいのか、すぐには思いつきませんでした。
何か気の利いた一言を返したかったのに、口から出たのは「近所だ」というそれだけの感想で、自分でも情けなくなりました。彼女の顔をまっすぐ見られなかったのは、たぶん、嬉しかったからだと思います。
そして...
あの夜、彼女が「秘密」とだけ返してきた一週間。仕事中も寝る前も、引っ越し先のことばかり考えていました。遠くに行くのか、近くなるとは言っても都内のどこなのか。彼女に振り回された一週間は、思い返すと、それまでで一番彼女のことを考えていた一週間でもありました。
引っ越し以来、平日の夜でも一緒に夕食をとれるようになりました。あの日、彼女がメッセージで一気に種明かしせずに焦らしてくれたこと。今思えば、あれは彼女なりの素敵な伝え方だったのだと思います。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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