彼女からの「おかえり」だけが救いだった半年。短い返事に隠していた俺の本音
返事を打つ余裕がなかった夜
プロジェクトのリーダーになってから、半年が経っていました。連日終電で帰宅し、家に着く頃にはスマホの文字を読むのも億劫な状態です。それでも玄関を開ける前、ポケットからスマホを出すと、必ず彼女からの「おかえり、今日もお疲れさま」が届いていました。
「ただいま」と打って、彼女からの返事が来て、最後に「うん」と返す。たったそれだけのやりとりが、終わらない一日のなかで唯一、自分が人間に戻れる瞬間だったのです。本当はもっと長く返したかった。「今日こんなことがあった」「明日は何時に帰れそう」。けれど打ち始めても、続きの文字が浮かばないまま、画面はそのまま暗くなっていきました。
言葉にできない焦り
会社では、ミスが続いていました。上司からは「お前のせいで全体が遅れている」と毎日のように言われ、後輩の前で頭を下げる日々。家に帰っても、その重さは消えませんでした。彼女に話したいと思ったことはあります。けれど、彼女は俺の仕事ぶりを「いつも頑張ってるね」と褒めてくれていた人です。「実は怒られてばかりです」「リーダーなのに、後輩に助けられてばかりです」とは、どうしても言えませんでした。情けない自分を見せたら、彼女のなかの俺が崩れてしまう気がしたのです。だから「うん」だけを返し続けました。
金曜の夜、届いたメッセージ
その金曜日も、終電で帰ってきました。いつものように「ただいま」と返した数分後、画面に通知が灯りました。「最近、私たちあんまり話してないね。もう私たち、終わってるのかな」。
終わってる、と彼女に思わせていたのか。会話をそっけなく切り上げてきたのは、自分だ。けれど、彼女のことが冷めたわけじゃない。むしろ逆だ。話したいことが多すぎて、何から話せばいいかわからなくて、毎晩短い言葉でやり過ごしていた。気づけば、早く彼女に会いたいと走っていました。
そして...
家について開口一番、俺は半年間ためこんだものを全部話しました。プロジェクトのこと、上司に怒られていること、後輩に頭を下げていること。「『おかえり』だけが、俺の支えだったんだ。ちゃんと返事したかったけど、頭が回らなかった」「冷めたんじゃない。むしろ逆。だから怖かった、ちゃんと言葉にできない自分が」。
彼女は、しばらく黙っていました。「言ってくれてよかった」と、ようやく聞こえた声に、俺は初めて、声をあげて泣きました。
あの夜以来、メッセージが急に長くなったわけではありません。けれど「うん」と打つたび、その下に隠している気持ちを、ちゃんと届ける努力をするようになりました。彼女の「おかえり」を、もう取りこぼしたくないのです。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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