「先生、もう辞めたいです」と泣いた新任教師→ベテラン教師が渡した一枚の紙
教師になって2ヶ月、限界だった私
4月から新任教師として高校に着任しました。担当は1年生の国語と、文芸部の顧問。授業の準備に毎晩遅くまでかかり、生徒対応や保護者からの電話で休日もつぶれていきました。
ある日、担任クラスの生徒から「先生の授業、わかりにくい」と言われ、保護者からも「うちの子が国語を嫌いになった」と苦情の電話が入りました。教室で挨拶しても返事は薄く、自分は教師に向いていないのではないかと、毎晩布団の中で考えるようになっていたのです。
それでも教材は作らないといけない。授業は明日も来る。そんな日々の終わりに、職員室で気がつくと夜の11時近くになっていました。
「もう辞めたいです」と漏らした夜
机の上に広がる赤ペン入りの答案用紙を見つめたまま、涙が落ちていました。誰もいないと思っていた職員室に、ベテランの先生がコーヒーを淹れに戻ってきていたのです。
「先生、まだいたの」声をかけてくれた先輩の顔を見たら、もう堪えきれませんでした。
「先生、もう辞めたいです」
自分でも驚くくらい、子どもみたいな言い方で口から出てしまいました。
先輩は驚いた様子もなく、私の隣の椅子にそっと腰を下ろしました。何かを言うわけでもなく、しばらく自分のマグカップを見つめていた先輩は、やがて机の引き出しから一枚の折りたたまれた紙を取り出したのです。
紙に書かれていた一文
「これ、お守りに」先輩はそう言って、その紙を私の机の上にそっと置きました。広げると、少し黄ばんだ紙に、丁寧な手書きの文字でこう書かれていたのです。
「今日あなたが直した一文を、その子は10年後も覚えています。だから、続けてください」
たったそれだけの言葉でした。けれど、その文字を目で追っているうちに、今日私が赤ペンで直した文章のことが頭に浮かびました。意味の通らない一文を、書き直した答案。あれはもしかしたら、届いていたのかもしれません。
先輩は何も言わずに、自分の鞄を持って職員室を出ていきました。残された私は、その紙を何度も何度も読み返したのです。
そして...
翌朝、私はその紙を胸ポケットに入れて学校へ向かいました。教室に入って「おはよう」と声をかけると、返事はいつも通りまばらで、相変わらず私の名前を覚えていない生徒もいました。
それでも、授業を始める前に深呼吸ができたのです。今日の私が直す一文は、もしかしたらこの中の誰かに残るのかもしれない。そう思えるだけで、立っていられました。
辞めたい気持ちがすぐに消えたわけではありません。けれど、あの紙はいまも私の机の引き出しに入っていて、苦しい日には、そっと開いて読み返しています。教師を続けていこうと、何度でも思える私の支えになっているのです。
(20代女性・教師)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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