

「SHOGUN 将軍」でも話題の平岳大、“レジェンド”ハリソン・フォードとの対峙で感服 「ああ、本当に存在するんだ」<キャプテン・アメリカ:BNW>

マーベル・スタジオの劇場公開最新作「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」が2月14日に日米同時公開された。初代キャプテン・アメリカのスティーブ・ロジャースから“正義の象徴”である盾を託されたサム・ウィルソンが、葛藤と苦悩を抱えながら、陰謀と壮大な戦いに巻き込まれていく物語で、ハリソン・フォードのMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品初参戦も大きな話題となっている。
そんなフォードと劇中で対峙(たいじ)するのが、「第76回エミー賞」や「第82回ゴールデングローブ賞」など賞レースを席巻するドラマ「SHOGUN 将軍」(2024年、ディズニープラス)で主人公と対立する五大老の1人・石堂和成を演じたことも記憶に新しい平岳大。MCU作品初出演で、ロス大統領(フォード)と会談する日本の尾崎首相役を務めている。予告でも「我が国は認めない」とロス大統領を拒絶するようなセリフを述べているが、撮影の裏側はどうだったのか、このほど平にインタビューを行い、撮影時のエピソードや渡米秘話などを聞いた。
監督からのオファーでMCU作品初出演
――2020年にハワイに移住し、さまざまな海外作品に出演されておりますが、今回の「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」には、どのような経緯で出演されることになったのでしょうか?
このお話はオファーで頂きまして、時期的には「SHOGUN 将軍」の撮影を終えた後くらいでした。
――オーディションではなく、オファーだったんですね。
そうですね。ジュリアス・オナー監督が、イギリスBBCのドラマ「Giri / Haji」(2019年)という作品を見てくださっていたんです。それでキャスティングディレクターの方からご連絡を頂きました。
――オファーを受けたときはどんな気持ちでしたか?
一つコマが進んだと感じました。マーベルのキャスティングを担当されている方が自分のことを知ってくれていたというだけで感慨深いものがありましたし、アメリカでの俳優修行が前進していることを感じました。
――移住されてわずか5年の間に出演した「SHOGUN将軍」が「エミー賞」や「ゴールデングローブ賞」の作品賞を受賞し、世界的人気のマーベル作品に出演するというのは快挙だと思います。
僕、運だけはいいんですよ(笑)。本当に。
――今作の主人公である「キャプテン・アメリカ」については、どのような印象を持たれていましたか?
初代キャプテン・アメリカやスパイダーマンは、血清を打ったり、特殊なクモにかまれたりしましたが、新たな「キャプテン・アメリカ」は特殊能力は持っていないので、そこが面白いなと思っていました。
現場でのハリソン・フォードは「ジェントルマンでした」
――尾崎首相を演じる際には、どのようなことを意識されましたか?
政治家ですから、顔は笑っていても、言うことは厳しいという人物で、感情的にケンカをするわけではなく、ディプロマティック(外交的な駆け引きがうまい)であることを意識していました。
僕が登場するシーンはほとんどハリソン・フォードさんと一緒で、いざこざの始まりのようなシーンなんです。皮肉を言ったり、ロス大統領を批判したりするバチバチ状態だったのですが、撮影前は「よろしくお願いします」という感じでした。
――実際のフォードさんは、どんな方でしたか?
ものすごくジェントルマンでした。僕の撮影初日は出演者含めて、とても人が多かったのですが、彼が現れると自然と拍手が起きて。でも、拍手をしたくなる気持ちは分かりました。僕も「ああ、本当に存在するんだ。実在の人物なんですねって」と思いましたから(笑)。
――では、お芝居をご一緒されていかがでしたか?
彼はカメラワークを誰よりも熟知されている方なので、カメラと自分の芝居だけでなく、他の出演者の動きやセリフも全て計算した上で動くんです。尺が長めでちょっと難しいシーンを撮影した時は、最初は探っているようでしたが、最終的には全てがきれいにバシンとハマって! 彼のすさまじい集中力を目の当たりにして、思わず素に戻り、彼の「逃亡者」(1993年)を思い出してしまいました(笑)。
アンソニー・マッキーに日本語のセリフをレクチャー
――キャプテン・アメリカ(サム)を演じるアンソニー・マッキーとも共演されましたよね? 彼は日本語を話すシーンがあると聞きました。
その日本語の言い方は、僕が教えたんです(笑)。彼は耳がいいのか、すぐに話せるようになったのですが、納得がいかなかったのか、人のいない静かな所に行って練習していました。見た目は筋肉隆々ですが、芝居はとても繊細な方でした。
――海外の現場はいろいろ経験されていると思いますが、今回の現場で特出しているなと感じたことは?
とても繊細に、そして丁寧に作られているなという印象を受けました。それから、サイズ感ですね。スタジオに本物並みのホワイトハウスが建っていて、そこでアクションなどが行われるのですが、VFXチームが何度もリハを繰り返して万全を期しているんです。
でも、一番すごいなと思ったのは、82歳のハリソン・フォードさんが台から飛び降りて、走っていったことです。健康維持どころではなく、背筋もピーンとしていて、こういう人たちが引っ張っているからこそ、すごい作品ができるのだろうなと思いました。
――今作は、キャプテン・アメリカの葛藤なども大きく描かれる作品ですが、平さんご自身もご両親が俳優で、同じように葛藤や苦悩はございましたか?
それが全然ないんですよね。だから、ダメだったんだと思うんですけど(笑)。若い頃は、父が自分と同じ歳のときに何をやっていたのかな?と思ったこともありましたが、考えたところで何の意味もないかな?と思ったのでやめました。
――では、海外作品に挑戦されたきっかけは何だったんですか?
いつか海外の作品に挑戦したいとは、ずっと思っていました。僕は高校生で渡米して、高校・大学と英語を学んだので、おこがましいですが自分を生かせる場所だと思ったので。ただ、僕は27歳から俳優を始めたので、日本でも仕事をしながら演技を学んでいる状態。そのまま、アメリカに行っても何もできないと思ったので、調子のいい話ですが、何かの作品をきっかけに行きたいと思っていました。
そんな中で「Giri / Haji」の話が来て、今だと思ったんです。セリフは半分英語、半分日本語でしたが、名刺代わりの作品ができたと思いました。
海外進出もいきなりコロナ禍に
――その後2020年の初旬に渡米されましたが、新型コロナウイルス禍だったかと思います。やはり影響はありましたか?
大ありでした。向こうに行ってからわずか2週間でロックダウンになり、そこから1年ほど仕事がなかったんです。ただ、ハリウッドは8月ぐらいから仕事を再開していたのですが、なかなかオーディションに受からなかったんです。駄目なのかな?と思いながら、もう少し、もう少しと粘っていたら、「THE SWARM/ザ・スウォーム」(2023年)という作品が決まり、そこから一つずつ仕事が決まるようになっていきました。
――「SHOGUN 将軍」も大ヒットして続編も決まっていますし、「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」にも出演。さらに注目が集まると思います。この先、目指す道は?
僕は英語での芝居がしたくて海外に挑戦しているので、日本人役にこだわらず、英語を話すアジア人の役を演じたい。英語圏で生まれた人はやはりアクセントなどが違うので。演じるのは難しいですが、そこに近づくために今も英語の勉強を続けています。
でも、今回、自分が出演したシーンを見せていただいて、目指しているところのスタート地点に立てた気はしますね。
◆文=及川静
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