

新垣結衣「何も成し遂げなくても生きていていい」 撮影を経て感じ得た本音と、独自の気分転換方法を明かす<正欲>

新垣結衣が出演する映画「正欲」が、11月10日(金)から全国公開を迎える。メインキャラクターを演じる新垣に役柄や作品、共演する稲垣吾郎や磯村勇斗についてはもちろん、今回の題材や新垣自身についてなどを問うと、誠実に役に向き合った新垣だからこその本音が聞けた。
本作は、第34回柴田錬三郎賞を受賞し、累計50万部(2023年10月現在)を突破している朝井リョウ氏の同名小説が原作。「これまでの価値観を覆す読書体験」と言わしめる本作を、「あゝ、荒野」(2017年)の岸善幸監督と脚本の港岳彦氏が再タッグを組んで映画化。家庭環境、性的指向、容姿、さまざまに異なる背景を持つ人たちを同じ地平で描写し、心を激しく揺り動かすストーリー。
桐生夏月の役についてすごく考えたからこそ、本番では感覚を大事に演じられた
――今回、映画「正欲」のオファーが来たときの気持ちと、原作を読んだ時の感想を教えてください。
オファーをいただいたときは企画書とプロットを読ませていただいたのですが、とても惹かれるものがありました。そして脚本を待つあいだに朝井さんの原作を読ませていただき、映像化するにあたって難しい部分もたくさんあるなと思いましたが、朝井さんの深い表現によって世界が広がった感覚も覚えました。
――桐生夏月という役と向き合って感じたこと、演じるときに気をつけたことなどを教えてください。
今回、映画の題材的にも“夏月”という人物の特徴的にも、すごくいろんなことを考えて想像しないといけないと思ったので、台本も原作もたくさん読みました。このときは原作ではどういう表現がされていたのかな…と確認したり、こういう時はどう感じるのかなとか、すごく考えたからなのか、ちょっと言葉では矛盾するんですけど、本番では頭で考えるのではなく感覚を大事にできたと思っています。
夏月たちの指向の部分は、参考になるものがあれば…と思いましたけど、何もなかったので、本当に想像することしかできませんでした。今回の映画でどう表現するかというのは、撮影前に監督ともすごく話し合いましたが、夏月は特別なわけでなくて、そこにただ生きている。どこにでもいるような人だと思ったので、特別に作り込むということはしませんでした。
ただこの映画で表現するものが夏月たちが持つ指向のひとつの基準みたいに捉えられてしまうのではという不安はありました。彼らの感情は私たちには想像しきれないことですし、物事は1つではないということをちゃんと心に留めながら、「今回の映画においてはこういう表現をしましょう」と、監督たちとひとつひとつ慎重に決めていきました。
磯村さんがクランクインされたときは「やっと会えた」とうれしかった
――今回、佐々木佳道を演じる磯村勇斗さんとは同じ秘密を持つ役所で、撮影も一緒のシーンが多かったと思いますが、磯村さんとの撮影中のエピソードがありましたら、教えてください。
夏生は佳道と出会って、お互いに救われていくので、2人のシーンは基本的に穏やかに進みました。磯村さんは撮影していてもすごくナチュラルな方で、自然と2人のシーンに入っていけたなという印象です。私が先にクランクインして、苦しくて体が重くなるようなシーンをたくさん撮っていたので、磯村さんのクランクインが待ち遠しくて…。磯村さんがクランクインされたときは「やっと会えた」と本当にうれしかったです。
エピソードでいえば、待機場所として古い日本家屋みたいな一軒家をお借りしていたのですが、磯村さんは「ここどうなっているの?」みたいな感じで、いろんなところを探検していました。すごく好奇心が旺盛な方で、屋根裏につながるはしごを上がってみたりもしていて…。そういうことをガンガンやっている磯村さんの姿を「元気な方だな」と思いながら見ていました(笑)。
演じることに対して自然な稲垣さんがすてきだと思った
――検事の寺井啓喜を演じる稲垣吾郎さんとのエピソードはありますか。
稲垣さんとの撮影は少ししかなくて、現場ではそんなにお話しできなかったのですが、この間のインタビューで、やっとちゃんとお話しすることができました。稲垣さん演じる寺井啓喜は、マジョリティーの人として描かれているのですが、それがだんだんどっちが正しいのか、どっちが違和感なのかわからなくなっていく。やっぱりそれは稲垣さんの絶妙なナチュラルさとちょっとした狂気が相まっているからだと感じました。
磯村さんもそうなんですけど、稲垣さんも演じることに対して自然で、自分の中の一部のように向き合っているところが、すごくすてきに感じました。私がハラハラしていたところに、稲垣さんはワクワクしていたと聞いて、もっとお話ししてみたいなって思いました。
――原作では、稲垣さん演じる寺井啓喜とは最後に会うだけですが、映画ではその前の出会いがあります。映画オリジナルのシーンが入ることでギャップがさらに表現されていると感じますが、新垣さんはどう思われましたか。
2人の出会いのシーンと最後のシーンでは、お互いの印象が大きく変わっていますよね。人って本当に一方向からだけじゃなくて、いろんな人がいろんな方向から見たり、状況や立場が違ったりすると、見え方って全然違うんだなってすごく感じましたね。
自分の想像できる範囲外のことがあるというのを、常に意識していきたい
――公式コメントで「撮影では、自分なりに夏月たちが生きる世界を必死に生きたいと思います」とありましたが、“夏月”として生きた撮影期間を得て、新垣さん自身に変化はありましたか。
何か変わるというよりは、より強く思うということは増えたような気がします。いかに自分自身が、新垣結衣が、ここまで生きてきて、環境や出会う人に恵まれてきたかっていうのを改めて感じ、周りの人たちを大事にしたいなってさらに思うようになりました。
また映画が取り上げている内容や題材などに対する考えを深めたいなとも思いました。自分の想像できる範囲外のことがあるというのを、常に意識していきたいなと思っています。
――本作は「生まれ持った自分らしさ」や「その自分でどう生きるか」について考えさせられる作品かと思います。新垣さんが思うご自身の「生まれ持った自分らしさ」は何だと思いますか。
「自分らしさ」を言葉にするのはすごく難しいですね。例えば、私が何かの作品で演じた役が、誰かが見たときに「新垣結衣らしい」と思ったりすることもあるだろうし、自分もすごく自然体で演じられたなって思ったりする瞬間もあります。
でもそれは自分の中のひとつをピックアップしているだけだと思うんです。ひとりの人にはいろんな側面があって、見る人によっても受け取る人によっても違いますし。自分の中の自分はたくさんいて、そのどれもが自分だって思えたらいい、そう思っています。
つらいときは「何も成し遂げなくても生きてていい」って言い聞かせる
――夏月や佳道のようなことでなくとも、世の中には「生きづらさ」を感じている方がたくさんいると思います。この「正欲」という作品で役を生きた新垣さんだからこそ感じる、「生きづらさ」を感じている方へのメッセージをお願いします。
「生きづらい」と感じている人たちが、どういう状況かというのは、やはりそれぞれ違うと思うし、何を「生きづらい」と感じるかによっても違うと思うので、何か言葉をかけようと思っても、すごく表面的なことしか言えないと思うんです。
そうですね…私は何か「つらい」と感じたときは、「何も成し遂げなくても生きていていいじゃん」って言い聞かせるようにしています。もちろん、生活するためにご飯を食べるために働かないといけないとか、社会で生きていくために必要なことはありますけど、そう思うことで私は楽になっています。「生きづらい」と思っても「生きていてください」と私は願います。
――新垣さんが「つらい」と感じたり悩まれたりしたときは、どんなことで気分転換されていますか。
気分転換をしたいときは動画サイトでBGMをライブ配信しているチャンネルがあって、それを流しています。ちょっとした風景とそれに合う音楽が流れてくるんですけど、それが心地いいんです。
雨が降っている駄菓子屋さんの前とか、夕日が差し込んでいる雰囲気のあるコインランドリーとか、海辺の高台に立っている古い家からの青空とか。そういうシチュエーションで、今どういう気分かなと、絵で選んで曲を流したりするのが気持ちよくって好きですね。
◆取材・文/綱島深雪
撮影/梁瀬玉実
スタイリスト/小松嘉章(nomadica)
ヘアメイク/藤尾明日香
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