高畑充希(C)2021映画『浜の朝日の嘘つきどもと』製作委員会

高畑充希主演で「浜の朝日の嘘つきどもと」映画化 震災・コロナ禍の奮闘描く

2020.10.30 20:00

『百万円と苦虫女』『ふがいない僕は空を見た』などの話題作を世に送り出し、2020年1月に公開された『ロマンスドール』でも大きな注目を集めたタナダユキ監督が、主演に女優の高畑充希を迎え、オリジナル脚本で映画『浜の朝日の嘘つきどもと』を制作。2021年に全国公開することが発表された。


高畑充希主演で「浜の朝日と嘘つきどもと」映画化決定

2021年3月、東日本大震災、福島の原発事故が起き、ちょうど10年という節目を迎える。震災・原発事故に続いて今般のコロナ禍もあり、風前の灯となった映画館を「映画へのかけがえのない思いを抱きながら守ろうとするお話」を通して、エンタメ文化へのエールともなる作品を制作した。

舞台となった映画館「朝日座」は、福島県南相馬市に実在している。1923年(大正12年)7月2日に芝居小屋・常設活動・写真小屋「旭座」として開館。開館時には坂東勝三郎、中村翫十郎の一座により「旭座舞台開き」が行われ、地方回りの芝居も上演される中、無声映画も数多く上映され、多くの地元住民が足しげく通い、大衆文化の殿堂として賑わいを見せた。

様々な災禍も免れ、戦後、映画全盛の時代となった1952年(昭和27年)には「朝日座」へ改名し、長年街の人々の暮らしに寄り添い、数多くの思い出を育んでいる。

実在する映画館を舞台に、オリジナル脚本を執筆したタナダ監督が自らメガホンを取る。2004年、フォークシンガーの高田渡を追ったドキュメンタリー映画『タカダワタル的』が東京国際映画祭に特別招待作品として上映され、さらに同年、劇映画『月とチェリー』が英国映画協会の「21世紀の称賛に値する日本映画10本」に選出、大きな話題となった。2008年脚本・監督を務めた『百万円と苦虫女』で日本映画監督協会新人賞を受賞。その後も映画『俺たちに明日はないッス』(08)、『ふがいない僕は空を見た』(12)、『四十九日のレシピ』(13)、『ロマンス』(15)、『お父さんと伊藤さん』(16)、『ロマンスドール』(20)を発表。また、テレビドラマや配信ドラマでも数多くの作品を世に送り出し、CMやミュージックビデオなどの演出も手掛けている。

主演は『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(20)で第43回日本アカデミー賞・優秀助演女優賞を受賞し、映画やテレビドラマ、舞台など幅広く活躍する国民的女優の高畑が務める。タナダ監督とは初タッグとなる。高畑演じる茂木莉子は、経営が傾いている映画館朝日座を立て直すべく、地元住民と共に東へ西へ奔走し、くじけそうになりながらも奮闘していく。

大久保佳代子らが共演

そして共演には、バラエティ番組で人気を博すほか、女優としてテレビドラマや映画など数多くの作品に出演している大久保佳代子が、莉子の高校時代の恩師・田中茉莉子を演じ、今最もチケットが取れないと言われる落語家の柳家喬太郎が朝日座の支配人・森田保造を務める。

また、ドラマ「浜の朝日の嘘つきどもと」が福島中央テレビ開局50周年記念作品として10月30日18時50分より放送された。映画と同じく、監督・脚本はタナダが務め、竹原ピストルと高畑がW主演として出演。このドラマは映画の物語の続きが描かれており、ドラマは今後、配信などで放送を予定。どちらから観ても楽しめる仕掛けになっているため、映画と合わせて注目だ。

2020年、新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るい、人々の生活は大きく一変した。人との付き合い方、物との関わり方、社会的な距離を保ちながらの生活を余儀なくされ、人生に疲れを感じる人も少なくないだろう。そんな時だからこそ、人との繋がりや絆、また、人々の生活に寄り添いながら人生を豊かにする存在として愛されてきた映画が求められている。

撮影は7月中旬から約1ヵ月行われ、現在、来年の公開に向け編集作業を進めている。(modelpress編集部)

タナダユキ監督コメント

映画には、人の人生が様々に映し出されますが、客席からその映画を観る人たちにも当然、それぞれに人生の模様があります。自分の力ではどうにもならないことが起こり、それに翻弄されても、私たちは生きなければならないのでしょう。何があっても前を向かなければいけないというのなら、せめてほんの少しだけの優しさのある映画が作れないものだろうか。そう思ってこの映画を作りました。映画の灯が消えないこと、そして自分を育ててくれた小さな映画館たちがなくならないことを願って止みません。

高畑充希コメント

大好きなタナダさんの作品に参加出来て、大変幸せな時間でした。明るくポップではありながら、タナダさんの伝えたいメッセージがぎゅっと詰まった絶妙なバランス感覚の台本の中の世界にお邪魔できて、毎日ストレスなく、心地よい時間が流れていたように思います。これがコロナ自粛明け、私にとって一つ目のお仕事だったこともあり、撮影現場の福島では本当に色々なことに思いを巡らせていました。

今となりにいる人、今近くにあるものは全て当たり前ではないんだな、という事を脳みそではなく皮膚で直接感じるような、そんな時間でした。舞台となった朝日座、という映画館もノスタルジックな空気感がそこかしこに漂っていて、現代を少し俯瞰で見ているような、カッコよさがありました。震災から10年ということや、コロナも踏まえたストーリーではありますが、どのキャラクターも愛おしく、観ていて明るく前向きな気持ちになれる作品になっていますので、ぜひ楽しんでいただけると嬉しいです。

藤原努プロデューサーコメント

映画館に行って映画を見ようという意思のある人が、今国民の何%ぐらいいるのか分かりませんが、この映画は、ただただ映画が好きで映画館でそれを見る楽しみがなくては生きられない、そんな人たちの物語です。タナダユキ監督、高畑充希、そして福島・南相馬で100年近い歴史を持つ朝日座という映画館を中心に、その世界でもがき苦しみながらも生きようとする阿呆らしくも健気なお話が展開します。映画制作の当事者である自分も泣いてしまいました。是非劇場でご覧いただけたらと思います。

ストーリー

100年近くの歴史を持つ映画館「朝日座」。シネコンと呼ばれる複数のスクリーンを持つ複合映画館が活況を見せる中、主に旧作映画を上映する名画座として、地元住民の思い出を数多く育んできた。時代の流れには逆らえず、支配人の森田保造はサイレント映画『東への道』をスクリーンに流しながら、ついに決意を固める。ほどなく、一斗缶に放り込んだ35mmフィルムに火を着けた瞬間、森田の背後からその火に水をかける若い女性が現れた。茂木莉子と名乗るその女性は、経営が傾いた「朝日座」を立て直すため、東京からやってきたという。しかし、「朝日座」はすでに閉館が決まり、森田も打つ手がないと決意を変えるつもりもない。地域に密接した映画館を守ろうとする都会の人間と、積年の思いを断ち切り閉館を決めた支配人。果たして「朝日座」の運命やいかに…。
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